労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第30号・第69号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第30号・第69号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成26年4月28日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人法人が、法人でスクールバスの運転手として勤務していた組合員X2について、①賃金の一部である通信費につき、申立人組合が団交で協議を求めていたにもかかわらず、団交を経ないまま一方的に不支給としたこと、②夏季一時金につき、組合の要求に対して回答のないまま、一方的に最高額の半額しか支給しなかったこと、③気象警報発令により休園となった日に出勤を見合わせたところ、これを無断欠勤として処理したこと、④法人が配付し、後に訂正した勤務カレンダーの新旧いずれに従うのかが明確でない中で、旧カレンダーを基準に残業手当を請求したとして減給の懲戒処分を行ったこと、⑤遠足行事に参加させず、幼稚園での待機を命じたこと、⑥理不尽な処分を繰り返した後、「注意書」など就業規則上の位置付けが不明確な文書を乱発し、組合からの不当労働行為救済申立てがある中で、組合に対する事前通告もなく普通解雇を強行したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 平成23年4月以降、通信費を不支給としたことについて
 認定した事実によれば、被申立人法人が組合員X2に対し、通信費を支給しなくなるに至った理由は、園児を送迎するスクールバスに同乗する教諭に法人が携帯電話を貸与することにしたためであるとみるのが相当である。組合は、通信費の廃止がX2の組合活動に対する嫌がらせの意思をもってなされたものであり、不利益取扱いである旨主張する。しかし、X2が個人として又は申立外組合の分会長として種々の申入れ・要求や労基署に対する申告を行った事実が認められるものの、法人がこれらの活動を理由として組合活動に対する嫌がらせの意思を持つに至ったとまで判断することはできない。したがって、法人がX2に対し、通信費を支給しなくなったことは組合活動を行ったが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
 また、組合は、法人との間にX2の通信費の廃止について団交で協議するという合意があった旨主張するが、同人の通信費を団交での協議中には廃止しないとの合意が成立していたとまでみることはできない。したがって、通信費の廃止を議題とする団交に係る法人の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるとはいえず、組合弱体化を目的とする支配介入に当たるともいえない。
2 平成23年度夏季一時金を最高額の半額しか支給しなかったことについて
 X2に対する夏季一時金の支給額は、組合加入公然化前の平成22年度、公然化後の23年度ともに、月額基本給の1.1か月分であったこと、X2のほかにも1.1か月分の支給を受けた運転士(非組合員)がいたことが認められる。その一方で、前記1記載のとおり、法人が、X2が22年10月までの間に個人として又は申立外組合の分会長として行った諸活動を理由として組合活動に対する嫌がらせの意思を持つに至ったとまで判断することはできない。以上のことからすると、法人がX2の夏季一時金を月額給与の1.1か月分としたことは、組合活動を行ったが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
 また、当該夏季一時金に係る団交に関しては、組合から団交申入れが行われた事実が存在しないとの法人の主張は首肯できるものであることに加え、法人はX2に夏季一時金を支給する前後に、組合に対して書面で回答していることからすると、法人の対応は正当な理由のない団交拒否であるとはいえず、したがって、組合を軽視した対応であるともいえない。
3 暴風波浪警報発令により休園となった日にX2が出勤を見合わせたところ、これを無断欠勤として処理したことについて
 認定した事実によれば、①平成23年7月19日午後、法人のA幼稚園が保護者及びX2を含む教職員に発した電子メールに、明日7時の時点で警報が発令されている場合は休園となる旨が記載されていたこと、②X2が同日、法人の主任Y5に電話で翌日の対応について尋ねたところ、同人は「学園の判断で明日の園児送迎は中止となるだろう」と答えたこと、③7月20日7時時点で大阪市・堺市に暴風波浪警報が発令されていたこと、④同日、X2は事前・事後の連絡なく同幼稚園に出勤せず、法人は同人が欠勤したものとして処理したことなどが認められる。
組合は、X2が出勤を要しないものと勘違いして出勤しなかったことは容易に推察できるにもかかわらず、法人が故意の無断欠勤と一方的に決めつけたと主張する。しかし、X2の上記②の問合せは勤務の要否を明確な形で問い合わせたものではないとみるのが相当であるから、同人に対して出勤の要否を明確に回答しなかった法人の対応は不自然とはいえず、かかる状況において法人が、同人が出勤を要しないものと勘違いして判断していると推察できる立場にあったとまではいえない。また、X2が7月20日の出勤簿に出勤の押印をしたことを併せて考えると、法人が、同人が出勤の必要性を知りながら故意に出勤しなかったものと判断したとしても、不自然とまではいえない。以上のことからすると、この点に係る組合の主張は採用できない。
 さらに、X2以外にも7月20日に出勤せず、欠勤扱いされた教職員が1名おり、同日に欠勤扱いとされたのは組合員だけではなかったといえる。
 以上のことを総合して考えると、X2に係る法人の上記取扱いは組合員であるが故の不利益取扱いとはいえず、したがって、組合に対する支配介入に当たるともいえない。
4 平成23年8月23日付けで減給の懲戒処分を行ったことについて
 組合は、X2は同僚に尋ねても新旧どちらの勤務カレンダーに従うべきかが明確でないと考えていたと主張する。しかし、通常、使用者が勤務カレンダーを訂正した場合、特段の事情がない限り訂正後のものが有効であると考えられるところ、本件の場合、特段の事情があったとみることはできない。また、どちらの勤務カレンダーに従うべきかは法人に問い合わせれば直ちに明確になるにもかかわらず、同人は法人に重ねて問合せをしてはいないとみられる。以上のような状況において、23年7月4日から同月8日までの間、X2が午後5時まで職場に残り、出勤簿兼勤務時間管理表に自ら時間外勤務時間数を記載したことを、法人が同月の勤務カレンダーに違反したものとして業務命令に従わなかったものと評価したとしても、あながち不合理とはいえず、本件減給処分の理由に合理性がないとまではいえない。そして、法人はX2に対し、懲戒処分を検討していることを事前に通知した上で、弁明書の提出を受けて懲戒処分を通知しているのであるから、本件減給処分は一定の手続を踏んでいるものといえる。
 さらに、X2の組合公然化から本件減給処分までの間に行われた組合の要求に対する法人の対応をみると、前記1及び2で述べたように通信費及び23年度夏季一時金に係る取扱い及び団交における対応が不当労働行為に該当しないことに加え、その他の要求事項についても法人は一定の対応を行っているものとみることができる。
 以上のことを総合的に判断すると、本件減給処分は組合員であるが故の不利益取扱いであるとまではいえず、したがって、組合の組織力弱体化を図る支配介入であるともいえない。
5 遠足行事に参加させなかったことについて
 X2が3幼稚園合同の園外行事において運転業務に従事しない状況は組合加入公然化以前から生じており、また、他の運転士についても園外行事の際、幼稚園で待機していたことがあることからすると、法人がX2の組合加入を契機に同人のみを園外行事において運転業務に従事させないこととしたものとみることはできない。
 また、法人がX2を園外行事において運転業務に従事させなかった理由は、人数的にバス1台で問題ないが、大型バスが必要なので、普段大型バスに乗っているY5で対応したというものであるところ、この理由は必ずしも不自然であるとはいえない。加えて、X2とA幼稚園以外の2つの幼稚園の教職員との間には人間関係上の問題があったとみることができ、このような状況の下で、法人がX2を3幼稚園合同の行事の運転業務に従事させなかったとしても、あながち不自然であるとまではいえない。
 以上のことを考え併せると、法人のX2に対する取扱いは、組合員であるが故の不利益取扱いとはいえず、したがって、組合に対する支配介入であるともいえない。
6 平成24年7月31日付けで解雇したことについて
 本件解雇の理由は、①交通関係法規違反等を繰り返し、注意・指導しても改善されなかったこと、②22.11.5事件(運転士Z1がX2の顔につばを吐きかけた出来事)に係る操作関係書類及び民事裁判に関する書類を園児の保護者及び近隣幼稚園に配布したこと、③上司の業務命令等に従わず、上司・同僚との協調性を欠く行為を繰り返し、注意・指導しても改善されなかったこと等とされているところ、これらの行為を法人が問題とすることが不自然又は不合理であるとはいえず、したがって、本件解雇の正当性を根拠付ける事実がないとは必ずしもいえない。
 また、X2の上司に対する態度及び協調性に問題があるとする法人の評価は、組合加入公然化の前後で一貫していたとみることができる。加えて、法人は、本件解雇後も、本件解雇について組合と交渉することを拒否してはいないとみることができる。
 以上のことを総合的に判断すると、本件解雇は組合員であるが故の不利益取扱いであるとも、組合に対する支配介入であるともいえない。  
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