労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本郵便 
事件番号  平成24年道委不第16号 
申立人  郵政産業労働者ユニオン北海道地方本部、郵政産業労働者ユニオン空知支部 
被申立人  日本郵便株式会社 
命令年月日  平成26年3月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成21年4月30日、申立人組合(支部)のA分会に所属する被申立人会社の従業員X2が郵便外務事務に従事している際、その運転する自動二輪車が乗用車と接触する交通事故が発生し、会社はこの事故に関し、同年6月19日付けで同人に対して懲戒処分(戒告)を下した。本件は、この懲戒処分に関係する会社の次の行為は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
①申立人組合(地方本部)が会社に対し、本件懲戒処分を交渉事項として22年2月以降複数回にわたり団交申入れをしたところ、会社が同交渉事項は経営専決事項であり、団交の対象外であるとして団交を拒否したこと等。
②X2が本件懲戒処分について、労使協約で定められた苦情処理制度により苦情申告を行ったところ、会社側が1年余を経過しても結論を出さないなど、苦情処理制度の運用について不誠実な対応を続けていること。
③組合(地方本部)が25年4月19日付け団交申入書により会社に団交を申し入れたところ、会社が上記交渉事項は個別的人事権の行使に関する事項であり、団交の対象外であるとして団交を拒否したこと。
 北海道労委は会社に対し、1 上記③の団交に応じること、2 前項の団交を拒否することによる組合(地方本部)の運営に対する支配介入の禁止、3 文書掲示を命じるとともに、上記①に係る申立てを却下し、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人郵政産業労働者ユニオン北海道地方本部から平成25年4月19日付けで申入れのあった組合員X2に対する戒告処分を交渉事項とする団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、第1項記載の団体交渉を拒否することにより、申立人郵政産業労働者ユニオン北海道地方本部の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、次の内容の文書を、縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載し、被申立人北海道支社の従業員出入口の見やすい場所に、本命令書写しの交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
記(省略)

4 申立人らの平成24年6月11日付け救済申立てのうち、申立人らの要求書に対し、被申立人が、平成21年7月31日、平成22年1月20日、同年3月5日、同年4月9日、同年7月21日及び同年11月10日になした回答などの対応に係る部分については却下する。
5 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 平成22年2月以降複数回にわたり行われた団交申入れを拒否したこと等について
 申立人組合らは、本件懲戒処分に係る団交申入れを22年2月22日以降同年10月16日まで継続して行い、同年11月10日に団交拒否があった後も、23年12月20日に団交を申し入れ、拒否されたのであるから、同日まで団交拒否は継続していると主張するが、22年11月10日の団交拒否があった後、1年以上が経過しており、これを同年2月22日以降、一連の行為として継続する行為に当たると認めることはできない。そうすると、24年6月11日付けで行われた上記団交拒否に係る申立ては、継続する一連の団交拒否が終了した22年11月10日から1年を経過して行われたものということになるから、却下せざるを得ない。
2 組合員X2による苦情申告への対応について
 本件苦情申告は組合員X2個人の申告であるが、本件懲戒処分が不当であるとして被申立人会社に諸々の要求書を提出した組合らの意を体したものと認められるから、これに対する会社の対応について、組合の運営に対する支配介入を論じる余地がある。
 本件においては、苦情申告から本件当初申立てに至るまでに1年4か月を経過し、さらに最後陳述書提出日を経過しても結論が出されていないことが認められ、苦情申告に対する処理が適正かつ迅速に行われたとはいい難い。
 しかし、結論が出されていない理由についてみると、①本件苦情処理制度が原則として個別的人事権の行使に関する事項を対象外事項としていること、②労使間の覚書で、個別的人事権の行使に関する事項であっても、労働協約、就業規則等の運用に当たり「不当に利害を侵害されたと客観的に認められる場合」には苦情処理で取り扱うとされているところ、本件処分が上記の場合に当たるか否かについて労使の主張が対立していること、③会社本社と組合中央本部を設置単位とする「中央苦情処理会議」(中央会議)の形式審査(事案を受理して事実審査を行うか否かについての審査)においても労使の意見の一致によることとされていること、④苦情申告の処理期間が設定されていないことなどの制度的要因に専ら起因するものと認められ、会社の対応が本件労使協約等の規定を逸脱し、殊更に組合側に不利になるような取扱いをしたと評価するに足る事情等は認められない。
 以上によれば、本件苦情申告に対する会社の対応が支配介入に当たるということはできない。
3 25年4月19日付け団交申入書による団交申入れを拒否したことについて
 組合の団交申入れに対し、会社が、当該申入れに係る交渉事項は本件労使協約等に照らし、個別的人事権に関する事項であり、団交の対象外の事項であると述べたことが認められる。しかし、個別的人事権の行使に関する事項も、組合員がその適用を受ける場合には組合員の労働条件にほかならず、また使用者に処分可能なものといえるのであって、本件団交申入れに係る交渉事項は義務的団交事項に当たる。ただし、労使自治の観点からは団交事項の範囲を労使の自律的交渉に委ねることは一切許容されないとすることも相当ではないから、個別的人事権の行使に関する事項を労働協約に基づき労働組合の関与する苦情処理等の手続に委ねることとし、団交事項から除外している場合、そのような取扱いは団体交渉権保障の趣旨に反しない限り許容されるものというべきである。そして、労働協約に定める苦情処理制度が団交に匹敵する実質を有している場合において個別的人事権の行使に関する事項を苦情処理手続に委ねる取扱いは、団体交渉権保障の趣旨に反するとはいえない。
 本件労使協約等においては、「個別的人事権の行使に関する事項」を団交の対象から除外する一方、苦情処理制度では「不当に利害を侵害されたと客観的に認められる場合」に限って例外的に取り扱うものとされており、個別的人事権の行使に関する事項が苦情処理手続の対象となる場合を限定的に規定している。さらに「不当に利害を侵害されたと客観的に認められる場合」について客観的で明確な判断基準が定められているわけでもないため、苦情処理の判断が裁量的に行われるおそれがあり、その結果、苦情申告があった際に形式審査に時間を要するか又は却下されるなど苦情申告の円滑な処理が阻害される可能性がある。
 この点について、本件苦情申告に対する対応をみると、支部会議(支店と組合支部)、地方会議(支社と組合地方本部)においては事実関係を踏まえた実質協議は全くなされておらず、中央会議においてもその窓口交渉において労使の議論がなされているにすぎない。その窓口交渉における議論は明確な判断基準がないまま「不当に利害を侵害されたと客観的に認められる場合」に当たるか否かという点に終始しており、申告後2年近くを経ても労使の意見が一致せず、結局のところ形式審査さえ終えていないことが認められる。そうすると、本件苦情申告に対する苦情処理機関の対応においても、団交に代わり得る実質的で慎重な協議や審理が行われているとはいい難い。
 以上によれば、本件労使協約等における苦情処理手続は、個別的人事権の行使に関する事項について、団交に代わって実質的で慎重な審理が行われることが制度的に担保され、かつ、現にそのような運用がなされていると評価することは到底できない。
 したがって、本件団交拒否が正当な理由によるものということはできないから、本件団交拒否は労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 
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