労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  琉球大学 
事件番号  沖労委平成25年(不)第1号 
申立人  琉球大学教授職員会、国立大学法人琉球大学労働組合、「国立大学法人」琉球大学医学部・付属病院職員労働組合 
被申立人  国立大学法人琉球大学 
命令年月日  平成26年2月25日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①退職手当の削減に関する団交において誠実な交渉をせず、その後、決裂を理由として団交を拒否したこと、②退職手当削減に係る就業規則の変更に伴う労基法所定の労働者の過半数代表者の選出について大学の規則に基づかない選出手続を申立人組合らに求めたこと、③労使合意に基づく団交議事録の作成を拒否したこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 沖縄県労委は法人に対し、上記①の団交について、第4回団交をもって決裂したとの理由で拒否してはならないことを命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、退職手当削減に関する団体交渉について、平成24年12月12日開催の第4回団体交渉をもって決裂したとの理由で、これを拒否してはならない。
2 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件団交における誠実交渉義務違反の存否について
 認定した事実によれば、被申立人法人は本件団交の開始当初から、国家公務員退職手当法の改正に準じて大学の教職員の退職手当を削減するという方針を固めていたものであって、本件団交において申立人組合らからの質問や要求を受けても、これを回避したり緩和したりするといった措置について十分な検討をしたような事情は見当たらない。また、国立大学法人の職員の退職手当の支給基準については、国家公務員についての支給基準がそのまま準用されるものではないことに照らしても、第4回団交の時点までにおける法人の説明内容は、自己の主張の根拠として必要かつ十分な説明を尽くし、資料を提示したとまではいえない。
 しかし、上記時点は、国家公務員退職手当法の改正から1か月にも満たない時期であって、法人においても組合らが求める予算執行状況等の資料を整えるのは困難な状況にあったこと、組合らからの要求事項も当初の段階では退職手当削減に関しては包括的なものにとどまっていたことに照らすと、第4回団交までの法人の対応は自己の主張の根拠を具体的に説明し、その当時において可能な限り資料を提示するなどしていたものであって、これをもって不誠実であるとまでいうことはできない。
2 本件団交拒否に係る正当理由の有無について
 法人は、第4回団交において組合らと決裂を確認しているなどと主張する。
 しかし、同団交の経緯は、過半数代表者の選出の問題に議事が移ったところ、その選出日程につき、組合らが法人の求める平成25年1月内の選出について消極的な態度を示したため、法人が交渉の打切りを申し出た上、組合らに対して決裂ということでよいか確認したというものである。したがって、過半数代表者の選出の点のみを見れば、行き詰まりの状態であったといえるが、退職手当削減に関しては、前記1のとおり、法人はいまだ必要な説明を尽くしたとはいえない状況であった。それにもかかわらず、法人は、改正された国家公務員退職手当法の施行日と時期を同じくして大学の就業規則を変更することを急ぐあまり、自ら団交の打切りを申し出たものである。
 かかる経緯からすれば、第4回団交の後、組合らが退職手当削減に関する団交を求めたことに対して、法人にはこれに応ずべき義務があり、法人が同団交をもって交渉が決裂したことを理由に退職手当削減に関する団交に応じないことについて、正当な理由は見当たらない。
3 過半数代表者の選出手続に関する対応について
 組合らは、過半数代表者の選出規則に係る労働協約において過半数代表者の選出は使用者の責務であるとされているにもかかわらず、法人が団交を拒否して過半数代表者の選出を迫り、また、全職員からの意見聴取を行おうとしたことは、労働協約の意義を無視し、組合らを軽視した支配介入に当たる旨主張する。
 しかし、法人が組合らに対し、過半数代表者の早期選出を要請し、あるいは過半数代表者選出の協力を得られないことを理由に全職員から意見聴取をする方針を表明したことは、法人として、過半数代表者の選出方法に関する意見を表明し、あるいは組合らに対して過半数代表者の選出を要請する域を出ないものであって、これらをもって、組合らに対する威嚇ないし強制とみることはできず、組合らの自主性を阻害し、その運営を支配、介入する行為には当たらない。
4 団交議事録の確認等に関する対応について
 組合らは、団交議事録の作成方法に関し、法人と組合らとの間で、平成18年6月5日付け合意書及び同月16日付け団交議事録において、双方の議事録署名人が署名することにより確定する方法によるとの合意が存在しており、法人が本件団交において上記方法による議事録作成に応じないことは支配介入に当たる旨主張する。
 しかし、上記18年6月16日付け団交議事録は、合意の内容が明確ではなく、また、労使それぞれの協約締結権限を有する者による合意とみることはできないから、これを労働協約とみることはできない。また、本件団交時において、労使間に上記のような議事録作成方法をとるべき慣行が成立していたとみることのできるような事情も存在しない。
 したがって、本件団交の過程において、法人が組合らから議事録に署名を求められた際にこれに応じなかったことは、労働協約に反するものではなく、これをもって支配介入に当たるということはできない。 
掲載文献   

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