労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第42号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第42号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y、Z株式会社 
命令年月日  平成26年2月24日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   ①被申立人会社らの代表者Y1が申立人組合の分会長に対する差別的な降格及び脱退勧奨によって同人及び他の組合員を脱退に追い込んだこと、②Y1が組合掲示板及びその掲示物を一方的に破棄したこと、③会社らが団交において不誠実な態度をとるとともに、その後の団交申入れに対し、会社Yについては組合員がいないことを理由に、また、会社Zについては回答済みであるとして、これに応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委はZに対し、誠実団交応諾を、Y及びZに対し、文書手交をそれぞれ命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Z株式会社は、申立人が平成24年3月29日付けで団体交渉を申し入れた事項のうち、申立人組合の賃金及び一時金に関する事項について、回答の根拠となる資料を提示して具体的に説明するなどして、誠実に応じなければならない。
2 被申立人Z株式会社は、申立人が平成24年5月30日付けで団体交渉を申し入れた事項のうち、X2の組合脱退に関する事項、組合掲示板に関する事項及び申立人組合員の賃金改定に関する事項について、誠実に応じなければならない。
3 被申立人株式会社Yは、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
  X労働組合
   執行委員長 X1 様
株式会社Y
代表取締役 Y1
   当社が行った下記(1)から(4)の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。当社は、このことを誠実に受け止めます。
記(省略)

4 被申立人Z株式会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
  X労働組合
   執行委員長 X1 様
株式会社Z
代表取締役 Y1
   当社が行った下記(1)から(4)の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記(省略)

5 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社らの代表取締役Y1が組合掲示板及び掲示物を取り外したことについて
 申立人組合と会社らとの団交において組合掲示板を設置することが合意されたにもかかわらず、Y1が本件掲示物破棄を行ったことについて、会社らは、掲示物に事実誤認の記載があった旨主張する。しかし、破棄した掲示物にどのような事実誤認の記載があったのかについて認めるに足る疎明はない。また、破棄に先立ち、会社らが組合に対して抗議や警告を行ったと認めるに足る疎明もない。組合掲示板が組合と会社らとの合意の上で設置されたものであるにもかかわらず、Y1が一方的に掲示物を破棄することが、組合の情報宣伝活動等を妨害する支配介入行為として許されないことはいうまでもない。
2 被申立人会社Yが組合の元分会長X3の係長職を解任したことについて
 Yは、X3の係長職解任は同人の業務命令違反が原因であって、組合員であることが理由ではない旨主張する。しかし、認定した事実によれば、Yにおいては就業規則等に基づかない人事や労務管理がなされ得る状況であったということができ、かかる状況下であったことからするに、業務命令違反であるとYが指摘する事項をもって係長職を解任するに相当する理由があったと認めることはできず、また、当該処分に至る手続に合理性があったことを認めることもできない。
 また、Yは、非組合員である元係長Z1も係長職を解任されていることから、X3の解任は組合嫌悪に基づくものではない旨主張するが、Z1については係長職解任後も製造部をとりまとめるリーダーの立場が残されており、X3はリーダーの役割も外されているのであるから、Yのこの主張は採用できない。
 そして、X3が当時、分会の中心人物であったこと、会社らと組合とが緊張関係にあったことからすると、YはX3の係長職を解任することにより組合員の組合への信頼を減じさせ、組合の弱体化を図ったとみるのが相当である。
 以上のことからすると、YがX3の係長職を解任したことは、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
3 平成24年4月13日の団交における会社らの対応について
 認定した事実によれば、当該団交において会社らは、全従業員に対する賃金や一時金は交渉事項ではないと考える旨述べた上で、組合側の要求には応じられないと回答し、組合が一時金の支給原資や人事考課別の配分について尋ねたことに対して決算状況や平均の昇給額等については回答しない旨述べたことが認められる。
 しかし、要求事項が全従業員を対象としたものであったとしても、そのうちの組合員の労働条件に関する事項は義務的団交事項に当たり、使用者は回答の根拠となる具体的な資料を提示するなどして誠実に交渉を行う義務を負うと解するのが相当である。
 その上で、Yの従業員であるX3の賃金等に関するYの回答や説明についてみると、人事考課に基づくと抽象的に回答するばかりで、何ら具体的な根拠を示しておらず、経営情報等の開示についても応じられないとの態度を明確に示しており、かかるYの交渉態度は誠実交渉義務に反するものといえる。
 また、Zの従業員である組合員X2や同X4の賃金等に関してみても、Zは経営判断であるとか、慣行に基づくと回答するのみで、何ら具体的な根拠を示していないばかりか、経営情報等の開示についても応じられないとの態度を明確に示しており、かかるZの交渉態度も誠実交渉義務に反するものといえる。
4 Y1のX3に対する発言について
 認定した事実によれば、平成24年4月25日頃、Y1がX3に対し、Zの廃業を示唆する発言を行ったことが認められる。この発言は、X3が組合を続けるのであれば、Zを潰すことを趣旨とするものであったことが強く推認され、会社らの代表者が自ら、分会員の雇用主であるZの解散を示唆することによって組合活動を継続することに対する不安や動揺を与え、組合の弱体化を図ったものとみるのが相当である。よって、かかる発言を行ったことは、会社らによる労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
5 平成24年5月30日の団交申入れに応じていないことについて
 会社ら両社の代表取締役であるY1が両社に対する団交申入書を受け取らず、団交が開催されていないことが認められる。
 Yがこの団交申入れに応じるべき立場にあるか否かについては、X3が同年4月27日付けで組合を脱退し、Yに雇用される組合員はいなくなったのであるから、組合は本件団交申入れ当時、同社に対する団交の当事者としての適格を有していなかったといわざるを得ず、Yに同団交申入れに応ずべき義務を認めることはできない。
 一方、Zについて同社は、団交申入書のあて名にYが含められていたところ、Yの従業員の中に組合員は一人もおらず、YとZとが共同で団交を行うことはできない旨主張する。
 しかし、団交申入書のあて名にYが含められていたとしても、①X2の組合脱退に関する事項、②組合掲示板の扱いに関する事項、③組合員の賃金改定に関する事項については、これらが義務的団交事項に当たることや前記3のとおり、24年4月13日の団交における会社らの態度が誠実交渉義務に反するものであったことからすると、Zは団交に応ずべき立場にあったとみるのが相当である。
 また、Zは、あて名からYを外して申入れをすれば受け取ると回答したものの、組合がYと同一の場で団交を行うことに固執した旨主張する。しかし、そのような回答を行ったと認めるに足る事実の疎明はない。また、組合とYとが、X4らの賃金その他労働条件に係る団交について組合と会社らは現経営体制の下では同一の場で応じる旨の和解協定書を同年2月に取り交わしていたことからすると、YとZが同一の場で団交を行うことを組合が希望していたとしても、一定理解できるところである。
 したがって、Y1は団交申入書のあて名にYが含められていたことを口実として、団交を拒否したとみるのが相当であり、また、あて名にYが含められていたことが前記の議題に係る団交を拒否する正当な理由に当たるとみることもできない。 
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