労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第19号・第66号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第19号・第66号 
申立人  Y市役所労働組合、Y市役所労働組合現業評議会 
被申立人  Y市 
命令年月日  平成26年2月20日 
命令区分  全部救済、却下 
重要度   
事件概要   被申立人市が、申立人組合らが組合事務所として使用していた市庁舎内の事務室について退去を求め、組合らの平成24年度の使用許可申請に対して不許可としたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は市に対し、文書手交を命じるとともに、Y市役所労働組合現業評議会の申立てを却下した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人Y市役所労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
  Y市役所労働組合
   執行委員長 A 様
Y市
市長 C
  当市が、平成24年1月30日、貴組合に対し、本庁舎の組合事務所の退去を求め、同年2月20日、貴組合からの本庁舎に係る行政財産使用許可申請について不許可としたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 申立人Y市役所労働組合現業評議会の申立てを却下する。 
判断の要旨  1 Y市役所労働組合の申立人適格について
 申立人Y市役所労働組合(市労組)は、労組法が適用される職員又は地公労法4条により労組法が適用される職員と地公法が適用される職員を構成員とする労働団体であるところ、被申立人市は、現行法上、職員団体と労働組合とはその法的根拠を異にし、その機能も厳に峻別されており、一個の労働団体が同時に多重の性格を有することは現行法体系の予定するところではなく、質量ともに非現業職員が主体である市労組は地公法上の職員団体として扱われるべきで、労組法上の労働組合には該当しない旨主張する。
 しかし、適用法規の異なる労働者で構成するいわゆる混合組合の、労組法適用者の問題に関する活動は、原則として労組法上の労働組合としての活動であると認めるのが相当である。
 市はまた、本件は労組法の適用を受ける構成員自身の労働条件に関する問題ではなく、団体としての活動自体に関する問題であって、過去に混合組合の申立人適格を肯定した中労委命令の判断とは射程を異にする旨主張する。
 しかし、市労組は労組法適用者の問題に関して労働組合として活動することができるのであるから、団体的労使関係に係る活動についても、それが非現業職員に限った活動であるなど特段の事情がない限り、直接的又は間接的に労組法適用者の問題を含めた労働組合の活動とみるのが相当である。市労組が行った組合事務所としての使用に係る行政財産の目的外使用許可の申請についてみると、これが非現業職員に限った活動であるとの特段の事情も認められないから、当該申請に係る市の対応について不当労働行為の救済を申し立てることができるというべきである。
 以上のとおりであるから、市労組は不当労働行為救済申立ての申立人適格を有する。
2 Y市役所労働組合現業評議会の申立人適格について
 認定した事実によれば、市庁舎内での組合事務所の使用許可申請は、市労組らにより行われており、これを現業評議会により行われたものとみるべき特段の事情は見当たらない。本件の争点は組合事務所の使用に係るものであって、団体としての活動に関する不当労働行為救済申立てであるのだから、その申立てをなし得るのはその活動を行った団体である市労組らとこれに加入している組合員個人のみと解され、現業評議会は申立人適格を有さないと判断される。 
3 市が市労組に組合事務所として使用させてきた市庁舎内のスペースを平成24年4月1日以降、使用させないこととしたことについて
 認定した事実によれば、市労組は市から年度ごとに行政財産の目的外使用許可を受け、市本庁舎の一部分を組合事務所として使用してきたものであって、労使合意の上で組合事務所の貸与を受けていたというものではない。しかし、市が使用許可をしないことに方針を転換すれば、組合の活動や運営を阻害するのであるから、市が方針を転換した経緯、また、市が示す退去通告及び本件不許可処分の理由や市労組への理由の説明・協議状況によっては、組合活動に対する支配介入に該当する余地があるというべきである。
 市が方針を転換した経緯についてみると、庁舎内での政治活動問題がY市会で取り上げられたことを契機に組合事務所の使用を許可しない方針に転換したことが推認できる。しかし、市は市労組に対し、庁舎内での政治活動問題と庁舎内に組合事務所が置かれていることとの関連性について十分な検討を行わず、また、自らの見解を明らかにして具体的な説明や協議を行うことのないまま、一方的に今後は使用を認めないとの結論だけを通告していたというのが相当である。
 市は、平成23年度から4部署の事務室が狭隘なため事務スペースが必要になったことをもう1つの理由として挙げている。しかし、市が従来、組合事務所として使用されてきたスペースを行政事務スペースとする必要があると判断するに当たって、行政事務スペースの充足度について十分な検討を行ったと解することはできない。また、市が市労組に対し、行政事務スペースの不足について具体的な説明や協議を行おうとしたと認めるに足る疎明もない。
 以上により、市が掲げる退去通告及び本件不許可処分の理由について、合理性があると認めるに足る疎明はなく、また、市はその理由について自らの見解を明らかにして具体的な説明や協議を行っていないというのが相当である。
 そうすると、市は使用許可をしないことにより市労組が被る不利益について代替措置を含む協議も一切なく、また、団交にも応じず、拙速に市労組に対し、退去通告及び本件不許可処分を行い、もって市労組が相当の期間にわたり、組合活動の拠点として使用してきた組合事務所について従前どおりに使用できない状況を生ぜしめたと判断される。
 以上のとおりであるから、市が市労組に対し、市本庁舎から事務室の退去を通告し、行政財産使用許可申請に対して不許可処分としたことは組合に対する支配介入に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第14号・18号 棄却 平成27年10月21日
 
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