概要情報
事件名 |
大阪府労委平成24年(不)第91号 |
事件番号 |
大阪府労委平成24年(不)第91号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
株式会社Y |
命令年月日 |
平成26年2月10日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が①組合員2名の平成24年4月25日支給分以降の賃金を5%減額したこと、②団交において、社長の給料額等に関する質問に回答しなかったこと、③社内の別組合への対応と異なり、団交に弁護士を出席させたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てをいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員2名の賃金を5%減額したことについて
申立人組合は、被申立人会社が組合との労使合意が成立していないにもかかわらず、本件5%減額を強行しており、これは組合を労働組合として認めず、組合を無視する支配介入に該当する旨主張する。
しかし、認定した事実によれば、会社は賃金減額を実施するに当たり、文書及び団交において、組合に対し、重ねてその必要性を説明し、理解を求めたが、組合は会社が送付した給与規程改定案抜粋等の書面について会社に説明を求めることもなく、一貫して両組合員の賃上げを要求すると同時に、本件5%減額は認められない旨を主張し、両者の交渉は決裂したものとみることができる。このような経緯からすれば、会社は組合の理解を得ようとして一定の努力を行ったことが認められ、結果的に組合の同意を得られないまま会社が本件5%減額を実施したことをもって、会社が組合を無視又は軽視したとみることは困難であり、この点に関する組合の主張は採用できない。
組合はまた、会社が別組合の組合員に対しては、賃金の5%減額を労使合意や労働協約の締結により実施しているのに、両組合員に対しては給与規程の変更を根拠として行っているため、支配介入である旨主張する。
しかし、前記のとおり、組合と会社との交渉が平行線となり、決裂した後に本件5%減額を行ったとみることができる。また、事前の通知や団交開催等において組合と別組合を差別的に取り扱った事実を認めることもできず、結果的に別組合との扱いの差異があったとしても、両組合員について給与規程の変更を根拠として本件5%減額を行ったことは、複数組合間の差別又は組合を無視若しくは軽視した行為とはいえないため、この点に係る組合の主張は採用できない。
2 団交において、社長の給料額等に関する質問に回答しなかったことについて
認定した事実によれば、会社は、会社が賃金減額を行わざるを得ない状況にあることについて、組合に対して事前に資料を送付し、団交において財務状況及び組合の賃上げ要求に応じることが難しいこと等を説明していたのであり、そうである以上、賃上げが困難であるという主張の根拠について会社は誠意をもって説明しているとみることができ、社長の給料額と弁護士2名の費用を明らかにしなかったとしても、直ちに不誠実な団交態度であるとまでいうことはできない。
3 団交に弁護士を出席させたことについて
団交に弁護士を出席させるに至った経緯をみると、組合と会社とは賃金減額をめぐり労使関係が悪化し、その後、組合は会社からの賃金減額等を議題とする団交申入れを拒否する旨通知し、労使関係が対立、緊張状態にあったため、会社はこのような労使関係を勘案して弁護士に交渉権限を委任するに至ったことが窺える。このように、それぞれに団交をめぐる背景事情が異なる以上、団交への弁護士の出席に関して別組合とは異なる対応をしているからといって、それが組合間差別に当たるということはできず、会社が別組合との団交には弁護士を出席させていないにもかかわらず、組合との団交に弁護士を出席させたことをもって、団交における労使合意を否定する支配介入に当たるとする組合の主張は採用できない。 |
掲載文献 |
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