労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  アオシ運輸株式会社 
事件番号  新労委平成24年(不)第2号 
申立人  アオシ運輸労働組合 
被申立人  アオシ運輸株式会社 
命令年月日  平成26年2月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①組合員数名にストライキを実行しないよう電話で求めるなどしたこと、②申立人組合の執行委員長を普通解雇し、副執行委員長を懲戒解雇したこと、③上記②の解雇や団交における組合側の言動等について記した文書を組合員に配付し、署名押印を求めたことなどは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 新潟県労委は会社に対し、上記①ないし③のような行為による組合の運営に対する支配介入の禁止を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、
 (1) 個々の申立人組合員にストライキの実行を思いとどまるよう説得するなど、争議権の行使に容喙して申立人の自主的な活動に介入したり、
 (2) 別紙1(平成24年8月6日付け文書「従業員の皆様へ」)及び別紙2(平成24年9月21日付け文書「回答書」)のように組合活動を威嚇し、あるいは組合活動を萎縮させようとする文書を申立人及び組合員に配付したり、
 (3) ストライキの実行を防ぐ目的で申立人の幹部を解雇したりして、
 その運営に支配介入してはならない。
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員数名にストライキを実行しないよう電話で求めるなどしたことについて
 被申立人会社の社長、常務等が組合員に対してストライキを実行しないよう求める働きかけを行ったことは、申立人組合の争議権の行使を組合の頭越しに個別の組合員の切り崩しによって抑えようとするものであるから、組合の運営に対する支配介入に該当する。
2 組合の執行委員長等の解雇について
(1)執行委員長X1の解雇
 X1の普通解雇事由は、会社が団交等で会社の状況について再三説明したにもかかわらず、同人が従業員に真実を告げずに、会社に対する不信感を植え付けたことにより、職場の秩序及び風紀が著しく乱れ、会社と従業員との信頼関係を著しく損ねたことであるとされ、就業規則第17条第1項第4号等に該当するとされる。
 しかし、実際には就業規則の当該規定には該当せず、したがって解雇事由が存在しない。また、従業員に真実を告げずに、会社に対する不信感を植え付けた旨や職場の秩序及び風紀が乱れた旨の部分については、これらを認めるに足りる証拠がない。要するに会社は、会社の主張が組合員に通じていないのは、組合幹部が団交の様子などについて組合員に真実を告げていないことが理由ではないかと疑っただけであった可能性が大きい。
 これらの状況の下で、会社があえてX1を解雇したのは、ストライキ実行の日が迫ってくる中で、執行委員長であるX1を会社及び組合から遠ざけようとして解雇を強行したものと考えるのが最も合理的である。特に、ストライキ予定日の直前に会社と組合との間で協定が成立し、解雇は撤回され、ストライキは中止されたが、このことは解雇の撤回がストライキ中止の取引材料にされたことを推測させる。
 すなわち、X1の解雇は、組合の争議権の行使を妨害しようとしたもので、組合活動への支配介入に該当する。
(2)副執行委員長X2の解雇
 X2の懲戒解雇事由は、同人が酒気を帯びて出社し、着車時間に遅延したことと、上記X1と同様の行為をしたことであるとされ、就業規則第52条第8号などに該当するとのことである。
 しかし、酒気帯び及び出社の件については、X2は酒気帯びで勤務したわけではないこと等からみて懲戒事由に該当しない。また、それ以外の事由については、前記X1の場合と同様である。
 むしろ、酒気帯びの程度、これが会社に及ぼした損害の不存在、酒気帯び発覚から懲戒解雇までの迅速さなどの事実に審査の全趣旨を勘案すれば、この懲戒処分は、前記X1の場合と同様にX2を会社及び組合から遠ざける理由に用いようとしたものと考えるのが最も合理的である。
 したがって、X2に対する懲戒解雇も組合の運営に対する支配介入に該当する。
3 前記2の解雇や団交における組合側の言動等について記した文書を組合員に配付し、署名押印を求めたことについて
 X1及びX2の解雇処分については理由がなく、不当労働行為であることは前述のとおりであり、従業員に配付する書面にこのように根拠を欠く解雇処分を記載することは、組合活動を萎縮させようとするもので、組合の運営に対する支配介入に当たる。
 また、この書面の中には、組合側が団交の場において、会社が会計書類を改ざんしているなどという事実無根の主張を繰り返し、従業員に真実を告げていない旨の記述があるが、会社が、組合の頭越しに組合員に対して、組合幹部がこのように言っていると断定し、強調する書面を配付した上、その会社の説明を了解したとする署名押印を求めることは、組合員の組合幹部に対する不信感をあおろうとするもので、これも組合に対する支配介入に該当する。 
掲載文献   

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