労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第46号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第46号 
申立人  X労働組合 
被申立人  一般財団法人Y、Z病院 
命令年月日  平成26年2月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人法人と同法人が開設する病院を被申立人として、①組合員Gを看護部長室付に異動させ、その後、インフォメーションセンターの業務を担当させたこと、②看護部長らがGに対して組合員であるが故に不利益な取扱いを行ったこと、③団交申入れに係る看護部長のGに対する対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、病院に対する申立てを却下し、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Z病院に対する申立てを却下する。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人病院の被申立人適格について
 病院は被申立人法人の機関の1つにすぎず、不当労働行為救済命令の名あて人たる使用者には当たらない。したがって、病院に対する申立ては却下する。
2 組合員Gを看護部長室付に異動させ、その後、インフォメーションセンターの業務を担当させたことについて
(1) 労組法27条2項との関係について
 本件申立ての時点において、Gを看護部長室付へ異動させ、インフォメーションセンターの業務を担当させることとなってから1年を超えていたことは明らかである。しかし、本件は単なる人事異動や業務分担上の問題にとどまらず、一貫した不当労働行為意思に基づいて、Gに対してのみ、他の看護師と異なる配置を行い、業務を担当させてきたと判断される可能性があるのだから、労組法27条2項の「継続する行為」に該当するといえる。したがって、上記の異動等に係る申立ては同項に規定する期間を経過してなされたものには当たらない。
(2) 本件異動等は組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか
 本件異動前、Gは看護部長Jに対し、内科外来の問題点を記載した提案書を自発的に提出しており、その内容はインフォメーションセンターと関連した点があるといえるから、法人が本件異動を行い、Gにインフォメーションセンターの企画を担当させたことに不自然な点は見当たらない。また、Gは同センターで内科外来患者に対する超音波検査等の説明を担当することになったが、看護師に検査説明業務を担当させることがその資格に対して不相当であると認めるに足る疎明はない。
 申立人組合は、①JがGに企画を中断させたりした結果、インフォメーションセンター構想はストップしたままで、JはそれをGの能力不足として同人に責任転嫁した、②同センターの企画がなくなった段階でGに同センターを担当させる必要がなくなったにもかかわらず、Gを他の業務に就けなかった旨主張する。しかし、確かに同センターの企画は設立以降、ほとんど進行していないと解されるものの、同センターの拡大には他科との調整を要し、容易に進行させることはできないとする法人の見解は首肯できる。また、JがGに関し、調整能力に欠けている部分があると評価していることや、同人の能力上の問題が同センターの企画が進行していない原因の1つであるとすることには、理由がないとはいえない。さらに、同センターの企画がほとんど進んでいないといっても、Gを他の業務に就けなければならないと認めるに足る疎明はない。
 組合はまた、法人がGに対してのみ内科業務に手出しさせないとする対応は、分断、隔離に当たる旨主張する。しかし、上記のとおり、Gに調整能力に欠けている部分があるとの評価には理由がないとはいえず、法人が同人を同センターの業務に専念させることとしたことも、組織運営上の判断に基づくものといえる。
 一方、本件異動等があった頃の労使関係についてみると、組合は平成22年から24年4月までの間、23年12月の団交申入れを除き、団交を申し入れていない。また、この頃、Gが病院において組合活動を活発化させていたとする疎明はない。
 以上のとおりであるから、本件異動等は、その後、インフォメーションセンターの企画業務がほとんど進行していないことや同センターの業務を担当するのは原則としてGのみであること等を考慮しても、同人が組合員であること等を理由としたものということはできず、この点に関する組合の申立てを棄却する。
3 JらのGに対する対応について
 組合は、合計8点のJらの対応を挙げて、それらが不利益取扱いに当たると主張する。
 しかし、外来副看護師長NがGに対し、詳細な所在確認を行った(Gは常に監視されている)とする点については、Nが業務の遂行上必要な域を超えてGの所在確認を行っていたと認めるに足る疎明はない。
 Gを研修に参加させなかったとする点については、同人は少なくとも研修が実施されることを知りながら、自ら研修に参加するための行動を取らなかったとみるのが相当であって、法人が研修参加を妨害したとまでいうことはできない。
 JがGからの備品購入要求等を放置したとする点については、Gからの要望が無視されたとはいえず、逆に、要望に沿ってブラインドが設置されたと解されるから、Jが放置したとはいえない。
 JがGに対し、「検査説明以外何もしなくていい」と指示したとする点については、Jの発言は他の部署の業務に関与することなく、自分の担当業務に集中することを求めたものというのが相当で、これを不当というべき特段の事情は見当たらない。
 JがGに対し、内科受付での対応を除く診察・処置・患者運搬をしないよう指示したとする点については、JがGに対してそれらを禁じる発言をしたと認めるに足る疎明はない。
 外来看護師長LがGに対し、診察終了後に診察室を使用しないよう指示したとする点については、LがGに対し、診察室を使用しないよう述べたことがあることが認められるが、Gが業務上の必要性から使用していたと認めるに足る疎明はない。
 外来副看護師長Mが外来クラークに対し、Gには何も聞かないよう発言したとする点については、Mがそのような発言をしたと認めるに足る疎明はない。
 Mが、Gがいる前で医師に対し、「今から看護師はいません」と発言したとする点については、法人はGをインフォメーションセンター業務に専念させることとしており、それは前記のとおり、組織運営上の判断に基づくものというべきであるから、この発言を不当とはいえない。
 以上のとおりであるから、JらのGに対する対応に、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるものがあったとはいえない。
4 団交申入れに対するJの対応について
 ①平成23年12月1日、患者への対応に関連してGと院長との間でトラブルが起こったこと、②その翌日の勤務開始前、Gが事務部長に対して団交申入書を提出したこと、③同日午前8時40分頃、GがJと話をし、団交申入れに言及し、その後、両人が2時間半ほど話をしたこと、④同日午前11時30分頃、GとJが事務部長室を訪ね、その際、団交申入れが取り下げられたことが認められる。
 組合は、上記③のGとJとの会話について、Jが団交申入れに不当な圧力をかけたもので、恫喝、脅迫に当たると主張する。
 両人の会話の詳細な内容は、本件審問を通じても明らかではない。ただし、Jは当時、上記①のトラブルの収束を図っていたと解され、そのためにGと長時間、話をすることになったとしても、あながち不自然とはいえない。
 一方、組合は法人又は病院に対し、上記団交申入れに係るJのGへの対応に関して抗議を申し入れたことなどはなく、同団交申入れが取り下げられた直後、組合がJの行為を問題にしたとは解し難い。また、同月5日にGがJに提出した報告書には、Jが団交申入れを強制的に取り下げさせたことを窺わせる記述は見当たらない。さらに、24年5月31日の団交において上記①のトラブルとその後の経緯について話されているが、GはJと話し合い、取下げをした旨述べ、Jの行為を非難する発言はしていない。
 以上のとおりであるから、Jの対応が本件団交申入れの取下げに何らかの影響を及ぼしたとしても、同人がGに対し、強制的に取り下げさせ、支配介入を行ったとみることはできない。 
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