労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  田井自動車工業 
事件番号  平成24年道委不第20号 
申立人  札幌中小労連・地域労働組合、札幌地域労組田井自動車支部 
被申立人  田井自動車工業株式会社 
命令年月日  平成26年1月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①労働審判の申立てをする旨の書面を支部組合員に送付し、労働審判の申立てを行ったこと、②争議行為に対する固定残業代不支給通知を支部組合員に送付したこと、③未払残業問題に係る団交において不誠実な対応に終始したこと等、④平成24年の12月賞与に係る団交を拒否したこと、⑤争議行為による不就労を理由に支部組合員の12月賞与を減額したこと、⑥チェック・オフを中止したこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 北海道労委は会社に対し、1 上記⑤の賞与減額の是正、2 賞与に係る不利益取扱いによる支配介入の禁止、3 上記③、④及び⑤に係る団交の誠実応諾、4 団交における不誠実な対応による支配介入の禁止、5 争議行為の解除に不当な影響を与える書面の組合員への送付による支配介入の禁止、6 チェック・オフの一方的中止による支配介入の禁止、7 文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成24年12月賞与の支給につき、争議行為による不就労の日数を勤務制限のないものとして是正し、それにより算定した金額と暫定支給として既に支払った金額との差額を申立人札幌地域労組田井自動車支部に所属する組合員に支払わなければならない。
2 被申立人は、平成24年12月賞与の支給につき、申立人札幌地域労組田井自動車支部に所属する組合員に対し、争議行為による不就労を理由にことさらに不利益に取り扱うことにより、申立人らの運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、申立人らが要求した未払残業代問題に係る団体交渉、平成24年12月賞与に係る団体交渉及びチェック・オフの実施に関する労働基準法第24条第1項ただし書に規定する協定を議題とする団体交渉に誠実に応じなければならない。
4 被申立人は、前記3の団体交渉について不誠実な対応をすることにより、申立人らの運営に支配介入してはならない。
5 被申立人は、争議行為につき、申立人札幌地域労組田井自動車支部に所属する組合員に対し、申立人らが自主的に決定すべき争議行為の解除について不当な影響を与える書面を個別に送付するなどして、申立人らの運営に支配介入してはならない。
6 被申立人は、申立人らと何ら協議することなく、いったん合意したチェック・オフを一方的に中止して、申立人らの運営に支配介入してはならない。
7 被申立人は、次の内容の文書を、縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載し、被申立人の総務部社屋及び本社工場事務所の正面玄関の見やすい場所に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
記(省略)
8 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 支部組合員に対する労働審判の申立てをする旨の書面送付等について
 被申立人会社が団交継続中に、未払残業代問題につき労働審判の申立てをする旨の書面を組合員に送付し、労働審判の申立てを行ったことについては、集団的労使関係の秩序に鑑みてそのような行為が適切であったかどうかは疑問が残るところであるが、労働審判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとするまでの事情が存在したことを認めるに足りる証拠はないし、また、労働審判手続において組合員に解決案を個別提案したことをもって不当労働行為に当たるともいえない。
2 争議行為に対する固定残業代の不支給通告について
 認定した事実によれば、申立人組合が未払残業代問題に係る団交における会社の不誠実な対応に抗議するとしてストライキを実施したところ、会社はノーワーク・ノーペイの原則に則り残業命令に服するまで固定残業代を支給しない旨、支部組合員に個別に通告したことが認められる。かかる通告は本来、組合に対してなされるべきであり、また、残業拒否闘争を解除するか否かは組合が自主的に決定すべきところ、会社が組合員に直接通告することはその生活不安を煽って争議行為の中止を唆すおそれがあるといえる。そうすると、本件争議行為に対する会社の対応は、争議行為の解除について不当な影響を与えることにより組合活動を妨害し、団結権を侵害し、組合運営に介入したものと認めるのが相当である。
3 未払残業代問題に係る団交における会社の対応について
 組合が団交で会社に対し、労働審判において支部組合員に提案した賃金改定案を組合に改めて提案することなどを求めたが、会社は労働審判において提案したことなどを理由に「個別的事案」である旨主張し、組合に回答・提案することを一切拒否したことが認められる。しかし、使用者は団交事項につき労働審判や訴訟が係属していても自主的に解決できる余地があるから、労働審判や訴訟が係属していることを理由に説明を拒否したり、団交開催を拒否したりすることは認められない。会社は、団交に誠実に対応しなかったものと認めるのが相当であり、また、それにより組合活動を妨害し、団結権を侵害し、組合運営に介入したものと認めるのが相当である。
4 平成24年の12月賞与に係る団交を拒否したことについて
 組合が12月賞与に係る団交の開催を再三求めていたところ、会社は団交の応諾に、争議行為及び団交などにおける組合の会社代表者や会社代理人に対する言動について謝罪すること等の条件を付けたことが認められる。しかし、これらの条件はいずれも正当なものではないから、会社は正当な理由なく団交を拒否し、そのことにより組合活動を妨害して、団結権を侵害し、組合運営に介入したものと認めるのが相当である。
5 12月賞与を減額したことについて
 組合と会社との労使関係は、会社の代理人が替わった平成24年8月以降悪化し、会社は正当な理由なく団交を拒否したり、組合への不当な介入を繰り返し行っていた。そうすると、会社に組合嫌悪の意思を認めることができるから、会社が12月賞与の算定に当たり、争議行為による不就労を会社の勤務命令に従わなかった日数として調整したことは、争議行為に対する制裁として組合員を不利益に取り扱ったものであり、それにより、団結権を侵害し、組合運営に介入したものと認めるのが相当である。
6 チェック・オフの中止について
 会社は自らの不誠実な対応により悪化させた労使紛争の最中に、書面による協定を締結せずにチェック・オフを実施することは労基法違反であるとしてチェック・オフを中止したが、それ以降も組合に対し、不利益取扱いや団交拒否などを繰り返している。そうすると、チェック・オフの中止については、組合活動を嫌悪した会社が不当労働行為意思に基づき組合活動を妨害して、団結権を侵害し、組合運営に介入したものと認めるのが相当である。 
掲載文献   

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