労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第76号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第76号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成26年1月28日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   ①被申立人会社から申立外関連会社Zに出向していた組合員Dに対し、Zがプリンターのトナーカートリッジ等の梱包解体作業等に従事するよう命じたこと、②Dに対する退職勧奨の問題等を協議事項とする団交において、会社が申立人組合の要求する数値や基準等を示さないなど不誠実な対応をしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てはいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 組合員Dにトナーカートリッジ等の梱包解体作業等を命じたことについて
 申立人組合は、被申立人会社がDの組合加入を嫌悪して申立外関連会社Zと共謀し、劣悪な環境の中で働かせ、同人を退職させようとした旨主張するが、共謀があったとする根拠として、①会社が退職勧奨を拒否したDを退職させようとすることは容易に推認がつくこと、②会社の部長FがZの社員Hと話をしていたことをDが目撃しており、その時にDの業務内容について話し合われたことが容易に推認されることなどしか主張していない。
 しかし、FとHとの会話の内容は不明であり、そもそもHはZのグリーンセンター長兼リサイクルセンター長Gの上司などではなく、定年後再雇用者であった(なお、Dが配属されたのはリサイクルセンターの中の仕分けチームであった。)。また、Dに対してトナーカートリッジ等の梱包解体作業等を命じた業務命令は、FがHと会った日から4か月も経過した後に行われている。これらを考え併せると、会社がDの組合加入を嫌悪して、Zと共謀して同人を劣悪な環境の中で働かせ、退職させようとしたと推認することはできない。
 その他、会社がZによる上記業務命令に関与していたことを示す特段の事実も認められないため、会社とZの間の意思の通謀などに関し、具体的な疎明はないといわざるを得ず、同業務命令が会社によるものとはいえず、組合の主張は採用できない。
2 団交における会社の対応について
 組合は、会社が団交において①希望退職の目標人数、②退職勧奨者の人選基準、③退職勧奨を受けた人数を示さなかったことが不誠実な対応であり、支配介入にも当たる旨主張する。
 しかし、上記①に関しては、会社は、企業グループ全体の全世界規模での3か年計画での予定数はあるが、今回については目標設定はない旨などを回答しており、組合がこれに納得していないとしても、一定の回答を行っているといえる。
 上記②に関しては、組合が、人選基準を示すように明確に要求した事実は認められない。
 上記③に関しては、希望退職優遇制度の対象者全員に個人面談を行ったのかについての組合の質問に対し、会社がそれについては回答できない旨回答したことが認められる。しかし、団交申入書には「退職勧奨を受けた人数」の開示を求める記述はなかったこと、団交で組合が説明した要求事項は「元の職場に戻せ」というものであったことなどからすれば、そもそも組合が会社にそのような人数について答えるようにとあらかじめ明らかにしていた事実は認められず、会社に団交当日それに備えた準備をしておくことを期待することには無理があり、「退職勧奨を受けた人数」と「元の職場に戻せ」という要求事項との関連も判然としないのであるから、会社が組合の当該質問に回答しなかったからといって、団交における交渉の目的を阻害するような不誠実な対応であるとみることは困難である。
 さらに、団交後の経緯についてみれば、組合は団交申入れを1年近く行わなかった上、文書のやりとりの機会が複数回あったにもかかわらず、上記①ないし③の事項に関する資料の開示要求は一切行っていなかったのであり、当該質問への回答を重視していなかったとみることができ、上記団交における会社の対応を不誠実なものあるいは組合の活動を妨害したものとみることは困難である。
 組合はまた、会社が団交において「Dの能力がどれだけ劣っていたかに関する資料を提示しての説明」を行わなかったことが不誠実な対応であり、支配介入にも当たる旨主張する。
 しかし、Dがどれだけ劣っていたかについての説明を求めるに際し、会社から、それが「元の職場に戻せ」という要求と関連して、どうして必要なのかについて質問されたにもかかわらず、組合は説明しておらず、このような要求事項との関連も不明確なままに行われた回答要求に対して、「総合考慮」等と答えた会社の態度については、不誠実な交渉態度であったとまでみることはできない。また、組合がその後、本件申立てまでに当該事項に関する説明要求を一度も行っていないという経緯を考え併せると、団交における会社の対応が不誠実団交及び支配介入に当たるとは認められない。 
掲載文献   

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