労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第54号、同第72号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第54号、同第72号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成26年1月14日 
命令区分  棄却、一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①年度初めの団交における理事長の出席について、労使慣行に反してこれを拒み、また、年間一時金要求に対する減額回答の原因である資産運用問題等について、交渉議題ではないとして団交を拒否したこと、②自家用車での出張及びその旅費の取扱いの変更について、事務折衝で対応するとして団交を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は法人に対し、1 自家用車での出張及びその旅費に関する団交の応諾、2 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成24年3月7日付けで申し入れた自家用車での出張及びその旅費に関する団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)

3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 平成24年4月24日付け及び5月14日付けの団交申入れへの対応について
 平成24年4月24日付け及び5月14日付けの団交申入れによる団交については、当初、同年5月29日に開催が予定されていたが、その後、被申立人法人からの理事長欠席の連絡を受けて、申立人組合が理事長の出席可能な日時に開催するように延期することとした旨、法人に連絡したことが認められる。その後の団交申入れについても、法人による理事長が出席しない旨の連絡を受けて、組合が団交に応じない旨の連絡を行っていることが認められ、実際に団交は開催されていない。
 組合は、組合と法人との間には、春闘要求に関して、初回の団交に理事長が出席し、法人の中心的施策を説明することが労使慣行として成立していた旨主張する。しかし、年度初めの団交(春闘団交)において、理事長が出席することなく、団交が行われていることもみられ、理事長の団交出席が一種の自主的ルールとして尊重されるべき労使慣行として成立しているとは認められない。
 次に、上記の一連の団交申入れに係る団交に理事長が出席しない理由については、法人は、当初は急遽出席できなくなった旨、次には団交委員ではないため出席しない旨、更に組合が慣例を破って理事長の責任を追及したり非難したりすることが予測されたためである旨を組合に回答している。また、法人は、理事長の出席に関して組合とやり取りをしている最中に、既に応諾していた議題のうち資産運用問題等について、協議する必要がない、又は団交になじまない等と回答している。
 これらの法人の対応は、必ずしも団交の信義の上で適切なものであったとはいえないが、法人はそれらの議題に関する問題があることを理由に団交を開催しないとはしていない。加えて、春闘要求に関する初回の団交に理事長が出席して法人の中心的施策を説明しなければ団交開催ができないといった特別の事情も認められないこと、法人の団交委員が交渉権限を有しないとみることもできないことなどを併せ考えても、理事長出席の求めに法人が応じるべき義務があったとの事情を窺うことはできない。むしろ組合が理事長の出席に固執し、団交が開催されなかったものといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、法人が理事長の団交出席の求めに応じず、そのために組合が団交開催を承諾しないことで団交が行われないとしても、そのような法人の対応が正当な理由のない団交拒否に当たるとはいえない。
2 平成24年3月7日付けの団交申入れへの対応について
 平成24年1月12日に法人の事務部長が各部長等に対して発した旅費関係文書には、自家用車での出張及びその旅費の取扱いを変更する趣旨の記載があり、自家用車での出張における事故についての取扱い及び旅費の計算方法の変更を示すものとみることができるところ、同年3月7日付け団交申入れの、自家用車での出張及びその旅費に関する議題は労働条件に関するものであって義務的団交事項となると考えられる。これについて、法人がその後、同年4月3日に発した文書により、当分の間、旅費の計算方法について現行の計算方法で処理することとなったとしても、事故の取扱いに関し、「事故、交通違反は自己責任である」点を所属上長が確認して自家用車の利用を承認することについては撤回されておらず、事故の取扱いについて明らかであるとはいえないこと、また、現行の旅費計算方法について組合との間で疑義が生じている状態であると認められることから、自家用車での出張及びその旅費の取扱いについてが義務的団交事項であるとの評価に変わりはない。
 また、法人の同年3月13日付け回答書には、法人が団交の場における協議よりも組合執行部と担当部署における協議が適切であると考えているなどとの理由のほかに、団交に応じない正当な理由は示されておらず、同回答書を受けて行われた組合と事務部長等との面談についても、上記の疑義や不明な点を解消し、労使間の合意を目指すべく、実質的な交渉が行われたものと評価することはできない。
 以上のことからすると、上記団交申入れに対する法人の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるといえる。 
掲載文献   

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