労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  熊本県労委平成25年(不)第1号 
事件番号  熊本県労委平成25年(不)第1号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成26年1月9日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①団交に際して1時間の時間制限を設けていること、②申立人組合の求めにもかかわらず、日本私立学校振興・共済事業団が平成19年度に作成した法人の財務状況の分析に係る報告書を開示しないこと、③組合員X2を法人の設置するA高等学校からB高等学校に配置転換したこと、④組合員3名が求めた法人の財産目録等の閲覧を拒んだことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 熊本県労委は法人に対し、団交の時間に関して一方的に制限を設けてはならない旨を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人との団体交渉の時間に関し、一方的に制限を設けてはならない。
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 1時間での団交打切りについて
 本件においては、当事者間の団交が円滑に行われていないことについて双方の交渉態度に改善すべき点があると認められ、被申立人法人としても団交自体を拒否したことはなく、本件配転問題について一応の説明を行うなど団交の場で説明をしようとする姿勢が全く欠けているわけではないなどの事情が存在する。しかし、法人が交渉申入れの内容如何とは関係なく、あらかじめ団交の時間に一方的な制限を設け、申立人組合の繰返しの抗議にも応じることなく、機械的に1時間で交渉を打ち切るという態度を続けることは、組合の要求に真摯に対応しているとはいい難い。したがって、法人が団交の時間に関して組合との合意形成をしようとしないまま、一方的に1時間の時間制限を設けていることについては、使用者が労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもって団交に当たったと認めることができず、労組法7条2号の不当労働行為に該当するものと認められる。
2 日本私立学校振興・共済事業団の作成した報告書を開示しないことについて
 本件救済申立て前1年間に行われた団交において本件事業団報告書の開示を必要とする交渉議題があったかについてみると、組合が平成24年6月7日付けで提出した団交申入書に「義務教育等教員特別手当の支給を再開し、H19年度以降の未払い分を支払うこと。」などが掲げられていること及び24年11月28日の団交において組合から冬季一時金の支給について妥結案が提示されたことが認められる。しかし、これらは平成19年度以降に法人がとった給与抑制策の結果に対して原状回復を求めるもの及び交渉が行われた時期における一時金の支給を求めるものであって、法人がこれらの要求に対応できるか否かはこの要求を受け入れた時点及びそれ以降の財務状況に左右されるものであり、事業団報告書で分析された平成18年度の法人の財務状況はこれらの要求と必ずしも直接の関係があるとはいえない。上記の団交申入事項又は組合の提案に関しては、要求当時の財務状況を示す財産目録等に基づいた議論が行われたとは認められないのであって、このような段階において法人が事業団報告書を開示しないことについては、これをもって労組法7条2号の不当労働行為であるとはいえない。
3 組合員X2の配置転換について
 認定した事実によれば、本件配転は業務上の必要から行ったものであるとの法人の主張は首肯できないものではない。
 組合員X2の組合活動については、それが特に突出したものであったとは認められないことに加え、配転先の職場においてもそれまでと同様の組合活動が可能であると考えられる。また、平成24年の人事異動でA高校からB高校に配転となった者はX2のほかに3名おり、組合に加入している者だけが配転されたのでもないことが認められ、これらを考慮すれば、本件配転がX2が組合員であること又はその組合活動を嫌悪して行ったものであるとの主張は採用しがたい。
 配転に伴うX2の不利益については、課外授業手当が減収となることは、学校によって課外授業の有無や時間数は異なるものであり、同手当が、教員が本来の勤務時間外に課外授業を行ったことへの対価として支払われるものであることを考えれば、A高校において受けていた手当の金額が常に保障されるべきものとはいえないので、不利益とみることはできない。
 以上のとおり、本件配転は、業務上の必要性が存在し、他の不当な動機・目的をもってなされたということも認められず、労働者に特段の不利益を負わせるものでもないことが認められるので、権利の濫用に当たるとはいえない。
 また、本件配転は業務上の必要から行ったものであるとの法人の主張は首肯できないものではなく、その他、組合の運営等に対する干渉ないし組合の弱体化を図ったものと認めるに足りる事情もないことから、これを組合への支配介入であるとみることはできない。
4 財産目録等の閲覧拒否について
 法人が組合員3名の閲覧を拒否したのは、申請者が組合員であるということよりも、組合には以前に一度見せたから再度見せる必要はないと考えたことによるものとみるのが相当である。また、法人が他の者への応対と異なって組合に対してのみ二度目の閲覧を拒否する態度をとったという事情も確認できない。したがって、本件閲覧拒否は、組合員であることの故をもって閲覧を拒否したものとはいえず、労組法7条1号の不当労働行為に該当するものとはいえない。 
掲載文献   

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