労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ニチアス 
事件番号  神労委平成24年(不)第24号 
申立人  全日本造船機械労働組合アスベスト関連産業分会 
被申立人  ニチアス株式会社 
命令年月日  平成26年1月8日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合が、被申立人会社の工場で就労中にアスベストにばく露した元従業員X2及びX3の加入を受け、会社に対し、アスベスト健康被害に対する補償制度等を議題とする団交を申し入れたところ、会社が団交には応じるものの、交渉の対象をX2及びX3の各個人の問題に限るとの対応に終始したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労委は会社に対し、具体的な資料の提示等をして誠実に団交に応じること及び文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の平成23年12月26日付け申入れに係る団体交渉について、具体的な資料を提示して十分に説明するなどして、誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人に手交しなければならない。
記(省略) 
判断の要旨  1 本件要求事項は義務的団交事項に当たるか
 本件要求事項は、①被申立人会社のA工場におけるアスベスト被害の実態を労働者及びその家族や周辺地域住民について明らかにすること、②在職者及び退職労働者に対するアスベスト被害補償について、会社の制度を資料をもとに説明すること、③退職労働者に対する健康対策について明らかにすること、④組合員X3の在職時における安全対策と労災補償についての会社の考え方を明らかにすることであるところ、会社は、義務的団交事項となるのは組合員に係る権利主張としての補償要求に関する事項に限られる旨主張する。
 しかし、上記①のうち在職者の家族及び周辺住民の健康被害の実態については組合員X2及びX3に対する補償、健康対策等の検討に必要なものとは認められないものの、上記④はまさに組合員X3の労働条件等に関する事項であり、それ以外の事項についても両名の労働条件等に密接に関連するものということができる。したがって、本件要求事項は、在職者の家族及び周辺住民の健康被害の実態を除き、いずれも義務的団交事項に当たる。
2 本件団交における会社の対応は不誠実な団交に当たるか
 前記1で述べたように、本件要求事項の大部分が義務的団交事項に当たる以上、それについて説明や資料の提示をしないという会社の対応は正当な理由がない限り、不誠実であるというべきである。
 まず、在職者の健康被害の実態についてみると、会社はX2及びX3の問題に関係がないとして回答していないが、ホームページにおいて自ら公表している健康被害情報についてさえ団交で説明をしないという理由は見出しがたい。次に、在職者及び退職者の健康被害に対する会社の補償制度については、会社は、X2及びX3は同制度の対象外であるとの説明に終始している。しかし、時の経過とともに疾病の悪化した元従業員が存在することを会社はホームページで認めており、このような健康被害の実態を十分に把握していたことからすれば、会社は両名の症状が悪化した場合の対応について申立人組合の理解や納得を得るよう十分な説明を尽くさなければならないというべきである。また、会社は、会社のじん肺取扱規程を書証として当委員会に提出しながら、本件団交において同規程を提示しなかった理由について何ら説明していないことからすると、提示しなかったことにそもそも十分な理由がなかったものといわざるを得ない。次に、退職者に対する健康対策については、X2及びX3が他の退職者と比較して健康対策が十全なものであったかどうかを検討するのに必要な事項であり、会社には十分な説明をすることが求められるというべきである。さらに、X3の在職時の安全対策及び労災補償について、会社は同人に対する補償は既に済んでいるとして説明していないが、同人の在職時に行われていた安全対策や労災認定された場合の補償がいずれも同人の労働条件等に関する事項であることは明らかであり、会社が十分な説明をしなければならないことはいうまでもない。
 以上のとおり、会社は組合の理解や納得を得るために誠意をもって本件団交に当たったものとは認められないから、その対応は不誠実な団交に当たる。
3 本件団交における会社の対応に正当な理由はあるか
 会社は、X2について、平成18年に組合に加入した時点で団交を申し入れることが可能であったにもかかわらず、本件団交申入れは23年12月になってからであり、昭和42年12月の退職から合理的期間を経過している旨主張する。しかし、X2は平成17年10月に管理区分2であったものが、25年4月には管理区分4へと移行しており、このようなアスベスト健康被害の性質上、雇用期間が終了してから長期間を経た後に症状の悪化を契機として団交申入れに至る場合があることは是認されて然るべきである。
 また、会社は、団交においてX3の労災関係資料を会社に提供しない組合の態度は、正当な理由について検討する際に考慮されるべき事情である旨主張する。しかし、組合が当該資料を提供しない旨の回答をしたのは、それ以前の団交における会社の補償規程を開示しないという対応を受けたものであり、相応の理由がある。一方、会社は補償規程を開示すると、じん肺管理区分の決定を受けた従業員の個人情報を提供することになる旨を述べているが、補償規程のみによって特定の個人を識別することはできないから、同規程の開示が直ちに個人情報の提供に当たるとはいえない。
 以上のとおり、会社の主張にはいずれも理由がなく、本件団交における会社の対応に正当な理由は認められない。 
掲載文献   

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