労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  都労委平成23年不第101号 
事件番号  都労委平成23年不第101号 
申立人  Z労組 
被申立人  F社 
命令年月日  平成25年11月19日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社は、平成23年9月、アナログ刷版事業の縮小のた め、希望退職の募集を行ったが、応募者はなく、同年12月31日付けで組合員13名及び元組合員1名を対象として整理解雇を 実施した。本件は、①上記の希望退職募集及び整理解雇に関する団交における会社の対応、②上記の整理解雇で組合員13名を解 雇したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は会社に対し、1 組合員X2ら13名に対する整理解雇をなかったものとして取り扱うこと等、2 文書交付、3 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人F社は、申立人全労協Z労組の組合員X3、同X4、同 X5、同X7、同X8、同X9、同X10、同X11、同X12、同X13及び同X14に対し、平成23年12月31日付整理 解雇をなかったものとして取り扱い、整理解雇の翌日から25年6月22日までの間の、整理解雇当時の給与を基礎とした賃金相 当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合の組合員X2及び同X6に対し、平成23年12月31日付整理解雇をなかったものとして取り 扱い、整理解雇の翌日から24年9月30日までの間の、整理解雇当時の給与を基礎とした賃金相当額を支払わなければならな い。
3 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
年  月  日
   Z労組
   執行委員長 X1 殿
F社
代表清算人 Y1
   当社が、平成23年9月から11月にかけて開催された希望退職募集及び人員整理に関する団体交渉において、会社の財務 諸表の内訳書の開示を遅らせた点、その財務諸表の数字を裏付ける資料を開示しなかった点、整理解雇対象者選定基準を説明しな かった点で誠実に対応しなかったこと、及び平成23年12月に貴組合の組合員13名を整理解雇したことは、いずれも東京都労 働委員会において不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
   (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)

4 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交における被申立人会社の対応について
(1) 経営状況を表す資料の開示と経費削減
 会社が、経営が厳しいとして希望退職の募集や整理解雇を行うと説明している以上、申立人組合が会社の経営状況について詳細 な情報を得たいと考えるのは当然のことであり、団交に当たって会社は組合の理解が得られるように、組合の質問に対する具体的 な説明と自己の主張を裏付ける資料の提出をすることが必要であるが、認定した事実によれば、会社の態度は組合の理解を得よう としたものとはいえず、不誠実なものといわざるを得ない。
(2) 整理解雇対象者の選定基準
 第5回団交において、会社は、組合が解雇反対であるから整理解雇対象者の人選についての協議をしていないと述べ、また、団 交において整理解雇対象者のリストを組合に提示しようとした形跡はなかった。そして、本件整理解雇までに整理解雇対象者の選 定について組合及び対象者本人に説明しておらず、本件の審査において初めて、整理解雇対象者を選定する際に参照した評価表を 書証として提出している。このような経緯からすると、会社はもともと整理解雇対象者の人選について組合に説明する意思がな かったとみざるを得ない。
(3) 結論
 希望退職募集及び整理解雇に関する団交における会社の対応は、財務諸表の内訳書の開示を遅らせ、その財務諸表の数字を裏付 ける資料を開示せず、また、整理解雇対象者選定基準を説明しなかった点で不誠実な団交に当たる。
2 組合員13名を解雇したことについて
 会社は組合の分会の公然化等により、従業員のうち誰が組合員であるかを知り得た。また、整理解雇対象者の選定範囲は全体で 25名と小規模であるところ、どのような基準を用いれば誰が選定されることになるかを会社が認識するのは極めて容易であった といえる。そして、労使間の緊張関係と会社による組合嫌悪及び強い対決姿勢が存在していた中で、会社が設定し適用した年齢基 準及び評価基準の説明に合理性があるとはいえない以上、本件整理解雇は、非組合員が除外され、分会三役を筆頭に組合員及び元 組合員が当てはまる基準をあえて設定して適用し、彼らをいわば標的にして整理解雇対象者として選定し、組合の解体を意図した ものとみるのが相当である。
 よって、本件整理解雇は、組合と緊張関係にあり、組合を嫌悪し、強い対決姿勢をとっていた会社が、合理化策の実施に乗じ て、その推進の障害となっているともみていた組合員を会社から排除し、組合の解体を企図して行ったものであるといわざるを得 ず、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合の運営に対する支配介入にも当たる。 
掲載文献   

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