労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本ボクシングコミッション 
事件番号  都労委平成24年不第38号 
申立人  全労協全国一般東京労働組合 
被申立人  一般財団法人日本ボクシングコミッション 
命令年月日  平成25年11月5日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成23年4月、被申立人法人において、前・本部事務局長A1の不正経理疑惑に関する怪文書が出回り、法人は調査委員会を設置した。同年6月28日、法人はA1について不正経理等の事実は認められないとする調査委員会報告を発表したが、管理職として不十分な点があったとして本部事務局長を解任した。同日、Y2が法人の専務理事に、Y3が本部事務局長にそれぞれ就任した。法人の職員X2とX3は、同年7月以降、法人に対し、Y3及び職員Y5らの行為に関し、数回にわたり公益通報を行った。法人は、同年7月6日の試合を最後にX2を試合担当業務から外し、また、同年11月以降、X2、X3及びA1を法人のメーリングリストから除外するなどした。同年12月29日、職員B3はY2及びY3に対し、Y2の指示により気付いた点をメモしたとして、X2、X3、A1らの職務遂行上の問題点をメールで報告した。X2は24年2月、X3は同年3月、申立人組合に加入し、分会を結成した。
 本件は、以上のような経過の後、法人が①X2を懲戒解雇処分に、X3を解雇処分に付したこと、②これらの処分に関する団交に応じなかったこと、及び③X2の組合加入に係るY3の発言、団交におけるY3及び事務局次長Y4の発言等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は法人に対し、文書交付及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人一般財団法人日本ボクシングコミッションは、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人全労協全国一般東京労働組合に交付しなければならない。
年 月 日
  全労協全国一般東京労働組合
  執行委員長 X1 殿
一般財団法人日本ボクシングコミッション
代表理事 Y1
  当法人が、貴組合の申し入れた、貴組合の組合員X2氏の懲戒解雇処分及び同X3氏の解雇処分に関する団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないように留意します。
  (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)

2 被申立人法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2の懲戒解雇及び同X3の解雇について
 X2の申立人組合加入前の法人の状況をみると、同人はX3とともに前・本部事務局長A1や職員A3に近い立場にあり、専務理事Y2や本部事務局長Y3、事務局次長Y4、職員Y5らとは激しい対立関係にあったといえる。そして、X2が試合担当業務から外されたり、X2、X3及びA1の3名だけが法人のメーリングリストから除外されたりしたこと等からすれば、X2は組合加入前から、A1及びX2とともに法人の現体制から疎外されていたといえる。また、同人の処分理由の中には、平成23年12月29日の職員B3の報告に「職員X2の問題点」として記載されていたことが含まれており、同報告はY2の指示に基づくものであったことからすると、法人はX2の組合加入前から同人の懲戒事由を探しており、法人における内部対立の中で同人を排除する動きがあったといえる。
 以上からすれば、X2に対する懲戒解雇処分には、同人が組合に加入する以前からの法人における激しい内部対立の影響が強く推認されることから、本処分は、同人が組合員であることや法人の組合嫌悪の情等からなされたものとは認めがたい。したがって、本処分が組合員であるが故の不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入であるとまでいうことはできない。X3に対する解雇処分についても、同様である。
2 X2及びX3の処分に関する団交について
 法人は、X2及びX3の代理人弁護士が「解雇異議通知」等により、当事者間の直接交渉を禁じたことから、本件各解雇を巡る法的紛争において弁護士同士で解決を図る必要があったと主張する。しかし、上記の通知は、あくまでも法人に対し、X2又はX3個人との直接交渉をしないで今後の交渉は代理人弁護士を通すよう求める趣旨と解すべきであり、法人と組合との団交を禁止する趣旨に解することはできない。したがって、X2及びX3の代理人弁護士が当事者間での直接交渉をしないよう求めたことは、法人が団交を拒否する正当な理由とはいえない。
 法人は、団交に応じない理由として、X2及びX3が訴訟を提起し、組合が本件救済申立てをしたことから、同人らの解雇については司法や労働委員会の場で解決すべきであるとも述べている。しかし、裁判所や労働委員会に係属中であることは、団交の実施を妨げるものではなく、法人が団交を拒否する正当な理由とはいえない。
 以上のとおりであるから、法人の行為は正当な理由のない団交拒否に該当する。
3 法人側の言動及び自宅待機命令等について
 24年2月、Y3が法人の理事会・評議員会が終了した後、ホテル内の評議員らがいる場において、「X2が組合に入って争ってきている」と発言した事実が認められる。しかし、この発言は単に事実を述べているだけとみることもでき、直ちに組合を嫌悪し敵視する発言であるとはいえない。また、理事会・評議員会終了後の仲間内での会話であり、一般の法人職員等に対してなされた発言ではないこと等も考慮すれば、組合の運営に対する支配介入であるとまではいえない。
 同年3月22日の第1回団交においてY3がX2に対し、「うるせえな」と発言し、また、交渉終了後、「ああ、残念だ」とつぶやいた事実が認められるが、これらの発言がなされた具体的な状況が明らかではないのであるから、これらの発言のみをもって、組合の運営に対する支配介入であるとまでいうことはできない。
 法人がX2及びX3の解雇に先立ち、就業規則違反についての調査が終了するまでの間、自宅待機を命じたことについて、組合は、法人にはこれまで就業規則違反の疑いで自宅待機とされた職員はおらず、かかる法人の対応も組合に対する支配介入であると主張する。しかし、前記1のとおり、両名に対する解雇を不当労働行為ということはできないこと、A1及びA3も自宅待機を経て懲戒解雇処分を受けていることなどを考慮すると、自宅待機命令等の解雇に至るまでの対応は法人における激しい内部対立の影響によるものであることが推認され、組合弱体化を企図したものであるとまでいうことはできない。
 以上のとおり、組合嫌悪の言動である等と組合が主張する法人側の各言動や自宅待機命令等の対応は、いずれも支配介入には当たらない。 
掲載文献   

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