労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第43号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第43号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y府 
命令年月日  平成25年10月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人府が①公立学校の常勤・非常勤講師の任用に関し、非組合員である者を雇用継続したにもかかわらず、組合員2名を雇止めにしたこと、②申立人組合が非常勤講師等の雇止め反対及び雇用継続を求めて申し入れた団交に、個別の任用に関する要求は交渉事項ではないとして拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、公立学校常勤講師に係る申立てを却下するとともに、府に対し、文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 地方公務員法第22条の規定により任用された大阪府の公立学校常勤講師に係る申立てを却下する。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
  X労働組合
   執行委員長 E
Y府
知事 F
   当府が、貴組合が平成24年1月27日付け及び同年3月15日付けで申し入れた団体交渉のうち、地方公務員法第3条第3項第3号に定める特別職のY府の公立学校非常勤講師である申立人の組合員の雇止め反対及び雇用継続に関する団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 申立人組合の申立人適格の有無について
 被申立人府は、申立人組合はいわゆる混合組合であるとしても、組織の実態に照らせば、その法的性格は地公法上の職員団体であるので、労組法7条1号ないし3号に基づく本件不当労働行為救済申立てを行うための申立資格がないと解すべきである旨主張する。
 しかし、混合組合は、労組法の適用がある構成員にかかわる問題については労組法上の労働組合としての権利を行使することができ、申立人適格を有するものと解すべきである。本件申立てが労組法適用者の問題に関するものであるといえるか否かについて検討すると、組合員Gに係る救済請求については、同人は現に地公法適用者である常勤講師であり、労組法適用者に係る救済請求であると解する余地はなく、組合員Hに係る救済請求については、同人は現に労組法適用者である非常勤講師であり、労組法適用者に係る救済請求であるとみるのが相当である。したがって、組合は、本件申立てについて、Hの雇止め反対及び雇用継続並びに本件団交申入れのうちHを含む非常勤講師組合員5名の雇用に係る部分に関する限り、申立人適格を有すると解するのが相当である。
2 組合員2名を雇止めとしたことについて
 組合は、府がHを平成24年4月から25年3月までの間、継続して任用しなかったことが組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとする理由として、①府が、同人が組合員であること及び組合活動に積極的に参加していることを認識した上で同人を雇止めとしたこと、②府及び府教育委員会が自らの権限で雇用(任用)を生み出せるか、少なくとも雇用需要を把握して任用を行い得ること、③府教委が7,661人もの講師を任用しておきながら、同人については合理的な説明なく雇止めにしたことの3点を挙げる。
 しかし、上記①については、団交及び団交応諾を求める集会等にHが参加していたと認めるに足る事実の疎明はなく、そのほか、府教委が、同人が何らかの組合活動を行っていることを認識していたことを窺わせるに足る事実の疎明もない。②については、公立学校の講師の任用は府立学校の校長等又は市町村教委からの内申提出を受理したときになされるものであるところ、同任用が内申提出を受けることなく、府教委独自の判断でなされた又は府教委が講師の任用内申を提出するよう指示したと認めるに足る事実の疎明はない。③については、平成20年度から24年度までの各年度において、任用を希望しながら任用されなかった者が組合員以外にも多数存在していたことは明らかであり、24年度において、任用を希望した者のうち組合員だけが任用されなかったとみることはできない。これらのことからすると、上記3点はいずれも組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとする理由とはならない。
 また、府が講師の任用に当たり組合員でない者を優遇してHを差別したと認めるに足る事実の疎明はないから、同人を雇止めにしたことが組合に対する支配介入であるということはできない。
3 団交拒否について
(1) 本件団交申入書の団交事項は義務的団交事項に該当するか
 本件団交申入れに係る非常勤講師組合員5名の講師としての任用は、形式的には新たな任用手続によるものではあるが、実態としては、繰り返しの任用によって実質的に勤務が継続する中での任用条件の変更又は任用の継続であったとみるのが相当であり、任用が繰り返しなされて実質的に勤務が継続することに対する合理的な期待を有するというべきであり、したがって、労組法適用者である非常勤講師組合員5名について、「組合員について雇い止めを行わず、雇用を継続すること」という団交事項は義務的団交事項に該当する。
 この点、府は、地公法上の職員団体が特定の者を非常勤講師に任用することを要求事項とする交渉を求めることは、管理運営事項に関して交渉を求めるものとして同法の規定に反する旨主張するが、上記の団交事項が義務的団交事項に該当することは上記判断のとおりであるから、この主張は採用できない。
(2) 府が団交申入れに応じなかったことに正当な理由はあるか
 府は、本件団交申入れに応じなかった理由について、仮に府が交渉(団交)をしても、府教委が府立学校の校長及び准校長の任用内申によらずに勝手に講師の任用を決定することはできず、府教委には支配可能性がなく、実質的に意味のない交渉にならざるを得ないことを挙げる。しかし、非常勤講師の任用手続をみると、講師の採否について、内申の存在を根拠として直ちに府教委の支配可能性がないとまでいうことはできない。また、本件団交申入れの対象である非常勤講師5名について、任用が繰り返しなされて実質的に勤務が継続することに対する合理的な期待を有するというべきことは、前記判断のとおりである。これらのことからすると、府の上記主張は採用できない。
(3) 結論
 以上のことからすると、府が本件団交申入れのうち、公立学校非常勤講師である組合員の雇止め反対及び雇用継続に関する事項について団交に応じなかったことに正当な理由があるとはいえないから、本件団交申入れに応じなかった府の対応は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。、 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地裁平成25年(行ク)第125号 却下 平成26年1月22日
 
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