労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成25年(不)第7号 
事件番号  大阪府労委平成25年(不)第7号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成25年10月8日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が、大阪府労委から平成25年1月に発出された命令の履行及び不当労働行為の責任者等の退陣を要求事項とする団交の申入れに応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は法人に対し、上記命令に係る団交の応諾及び文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人から平成25年2月5日付けで申入れのあった大阪府労働委員会命令に係る団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
  X労働組合
   執行委員長 A 様
学校法人Y
理事長 B
  当法人が、貴組合から平成25年2月5日付けで申入れのあった大阪府労働委員会命令に係る団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  1 本件団交申入れのうち府労委命令の履行要求に係る部分について 
 被申立人法人は、平成25年2月、中労委に対し、本件府労委命令に係る再審査申立てを行った。そして、法人は、本件府労委命令の履行を要求事項とする団交の申入れについて、当該命令を履行することは後に中労委において同命令とは異なる判断がされたとしても、法人にとって回復し難い損害を生じさせることになることが明らかであるので、団交申入れに応じなかった旨主張する。
 しかし、申立人組合による団交申入れは、単に本件府労委命令の履行そのものを要求しているのではなく、労使間で問題の解決を図るための交渉を行うことを目的として申し入れられたものと解するのが相当である。また、当該団交申入れに応じることが直ちに本件府労委命令を履行して法人にとって回復し難い損害を生じさせることを意味するわけではなく、団交において同命令の主文とは別の、当事者間の労働関係の正常な秩序を維持させ又は確立させるための新たな内容で労使双方が合意できる解決案を探るといった可能性もあるといえる。
 本件申立ての府労委命令の履行要求に係る部分は、同命令と被救済利益が同一であり、同命令とは別に救済を命じる必要性はないとの考え方もあるが、同命令は団交応諾のみではなく、協定書の締結や組合支部長の契約解除の撤回等の事項も命じていることからすれば、本件団交申入れは、同命令が発出されたという事実を踏まえて、新たな解決の可能性を探ることも視野に入れて申し入れられたものとみることができるので、新たな被救済利益が存在すると考えるのが妥当である。
 以上のとおりであるから、中労委による再審査の結果を待たずに本件府労委命令を履行することが法人にとって回復し難い損害を生じさせることになるとの主張をもって、本件団交申入れに応じないことの正当な理由と認めることはできない。
2 本件団交申入れのうち責任者の退陣に関する要求に係る部分について
 組合は、責任者の退陣に関する要求事項は組合員の不利益取扱いの中止あるいは組合への支配介入の中止を通して労使関係正常化を求めるものであり、義務的団交事項である旨主張する。
 理事長らの進退といった経営陣の人事に関する問題は、本来、団交の対象とすべき事項であるとはいえないが、それが組合員の労働条件の維持改善に密接に関連する場合には義務的団交事項となりうる場合があるので、以下検討する。
 まず、組合員の不利益取扱いの中止という目的との関係でみると、理事長らの退陣問題が直ちに組合員の労働条件に影響を与えるものであるとまで認めることはできない。次に、支配介入の中止という目的との関係では、その目的のために役員個人を指名して退陣要求をすることについては義務的団交事項の範囲を逸脱しているものといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、本件における責任者退陣要求事項については義務的団交事項には当たらず、法人がこれに関する団交申入れに応じなかったことには正当な理由があると認められる。 
掲載文献   

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