労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  慈生会 
事件番号  都労委平成24年不第53号 
申立人  首都圏なかまユニオン 
被申立人  社会福祉法人慈生会 
命令年月日  平成25年9月17日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が組合員X2の解雇撤回等を要求事項とする団交に応じなかったことが正当な理由のない団交拒否に当たるか否かが争われた事件である。
 東京都労委は法人に対し、誠実団交応諾、文書交付及び履行報告を命じた。 
命令主文  1 被申立人社会福祉法人慈生会は、申立人首都圏なかまユニオンが平成24年6月4日付けで申し入れた組合員X2の解雇撤回等を要求事項とする団体交渉に、速やかに、かつ、誠実に応じなければならない。
2 被申立人法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、申立人組合に対して、下記内容の文書を交付しなければならない。
年 月 日
   首都圏なかまユニオン
   委員長 X1 殿
社会福祉法人慈生会
理事長 Y1
   当法人が、貴組合から平成24年6月4日付けで申入れのあった貴組合の組合員X2の解雇撤回等を要求事項とする団体交渉に応ぜず、貴組合からのその後の団体交渉申入れにも一切応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
   (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)

3 被申立人法人は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨   申立人組合が平成24年6月4日付団交申入書に要求事項として掲げた、組合員X2の同月1日付け解雇処分通知書の撤回、解雇に先立ち行われた同人に対する配置転換の撤回及び同人に係る賃金改善のごまかしの取消しについて、被申立人法人は、賃金問題は改善が完了し、配置転換についてはこれ以上議論を重ねても実効的な解決は見出せないとし、団交を実施する必要性は感じられない旨回答している。しかし、認定した事実によれば、これらの事項はいずれも解決済み又は議論が尽くされたものであったとはいえない。
 法人は、組合が法人に対して、体調不良であった施設長Y2の団交出席という無理難題を吹きかけ、大声で怒鳴り散らすなどしたことからすれば、団交を実施しないことには正当な理由がある旨主張する。しかし、法人もY2の団交出席を当初から否定していたわけではなく、第3回団交において次回には出席させる方向で努力すると応じ、第4回団交の際は開催前日まで出席を明確に否定してはいなかった。それにもかかわらず、Y2が出席しなかったため、組合の不信感が募り、団交において抗議したり、反発したりしたことには相応の理由があると認められる。また、組合が社会的相当性を逸脱する行為を行った事実は認められないのであるから、組合の交渉態度を理由に法人が団交拒否を正当化することには無理がある。
 法人は、組合が法人本部や法人の施設等の敷地内又は周囲で不法行為を伴う抗議行動を繰り返すなどしたため、合理的な話合いは到底不可能であるとの心証を抱いている旨主張する。しかし、そもそも組合がこのような抗議行動に出たのは、法人が同年4月16日付けの書面でこれ以上の団交は不要である旨記載したことに端を発するものである。さらに、団交申入書の受領を複数回にわたり拒否し、団交を拒否し続けたために組合が抗議行動を繰り返したのであるから、そのことをもって法人が団交拒否を正当化することはできない。
 以上のとおりであるから、法人が同年6月4日付けで申し入れた団交に応じず、その後の団交申入れにも一切応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に該当する。 
掲載文献   

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