労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ロピア 
事件番号  神労委平成23年(不)第29号 
申立人  神奈川シティユニオン 
被申立人  株式会社ロピア 
命令年月日  平成25年9月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人会社のA工場で食品の製造業務に従事していたX2(日系3世のブラジル人)は、平成22年12月、食品工場の従業員として不適格であるとの理由で退職を促され、同意した。X2は申立人組合に加入し、組合は会社に「団体交渉要求書」を送付した。会社は、その後、X2の復職を認めたが、同人が精神的に不安定な状態にあることを考慮し、労働時間を8時間から5時間に短縮するとともに、業務を清掃業務に変更した。組合はX2の労働時間を元に戻すよう要求し、団交が行われた末、会社は段階的に8時間の製造業務に戻す「トライアル勤務」を2か月間行わせ、その間、日本人従業員に同人を指導させることとした。トライアル勤務開始後まもなく、X2が同僚に暴行等を行う事件が発生し、会社は同人を10日間の出勤停止処分に付した。
 本件は、以上のような経過の下で、会社が①X2を労働時間5時間の清掃業務に配置転換し、第1回団交開催後5か月間就労させたこと、②同人をトライアル勤務において日本人従業員の指導の下で就労させたこと、③同僚とのトラブルを理由に同人に対し懲戒処分を行ったこと、④上記の労働条件変更や懲戒処分を組合との協議や合意なく行ったこと、⑤団交において不誠実な対応を行ったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労委は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2の労働時間を短縮し、業務を変更したことについて
 被申立人会社がX2に退職勧奨を行ったのは、同人が日頃から同僚との間でトラブルを起こしていたことに加え、当時、会社が製造した食品に異物が混入する事件が続けて発生したことを受け、再発防止対策の徹底を図っている中で、同人がそれについての指導を無視するなどの言動をしたことによるものと認められる。そうすると、会社がX2の健康と製造業務での勤務に不安を感じ、復職の条件として労働時間の短縮と清掃業務への変更を提示したことには合理性が認められ、同人が組合員であることを理由として決定されたものと認めるに足る証拠はない。また、申立人組合は、会社が組合との協議や合意がないままに労働時間の短縮等を行ったことは支配介入であるとも主張するが、上記のとおり復職の条件には合理性があり、また、組合の団交要求等に対する会社の対応に不適切な点はなく、X2本人との合意の下に復職を決めたのであって、格別、反組合的意図をもって行ったものとは認められない。
2 トライアル勤務において日本人従業員の指導の下で就労させたことについて
 日本人従業員の指導の下で就労させたことがX2にとって精神的な不利益を伴うものであったとしても、トライアル勤務解除の可否を判断するためにはやむを得ないものであったと認められるから、それが組合員であるが故の不利益取扱いであり、同時に組合に対する支配介入であるとする組合の主張は採用できない。
3 X2に対し、懲戒処分を行ったことについて
 同僚とのトラブルにおける、暴行と評価されてもおかしくないX2の行為は職場規律を乱すものであり、会社が就業規則に照らし、同人の解雇を選択肢の1つとして考えたとしても、それは同人が組合員であるからではなく、当該トラブルの態様が原因であるというほかない。処分は10日間の出勤停止処分となったが、会社はX2に対し、再び働くことができるチャンスを与えたものと評価できる。しかも、その出勤停止処分後にトライアル勤務を解き、製造業務における8時間勤務としている。このような事情からすると、X2に対する懲戒処分が組合員であるが故の不利益取扱いであり、同時に支配介入であるとする組合の主張は採用できない。
 なお、組合は、組合との協議や合意がないままに懲戒処分を行ったことが支配介入であるとも主張するが、組合員に対する懲戒処分の決定について労働協約や合意事項があるとは認められないこと、上記のトラブルについて団交が行われた事実はないことからすると、組合の主張は採用できない。
4 会社の団交等への対応について
 組合は、平成23年1月12日に開催することを求めた団交を会社がX2に対して「忙しいから」行かないと言ったのみで組合に連絡もなく欠席したことは正当な理由のない団交拒否であると主張する。
 しかし、会社は同年1月10日に開催日の延期を求める文書をファクシミリと郵便で送付しており、団交そのものを拒否したものではないことや、会社の工場長が多忙のため団交に出席できない旨をX2に述べ、同人がそれを組合に伝えていたが、組合は会社に確認の連絡を取ることもせず、同月12日に組合事務所で会社を待ち続け、結果として会社が欠席という形になったことからすると、団交が開催されなかったことの責を会社のみに負わせ、会社が正当な理由なく団交を拒否したと評価することは相当でない。 
掲載文献   

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