労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岐労委平成24年(不)第1号 
事件番号  岐労委平成24年(不)第1号 
申立人  X労働組合A地方本部、X労働組合B支部 
被申立人  Y有限会社 
命令年月日  平成25年9月10日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合が平成24年1月及び3月に被申立人会社に対して行った団交申入れについて、会社が、申入れの趣旨からは交渉事項を特定して了解することができない、申入内容については十分な回答をしているなどとして、これに応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 岐阜県労委は会社に対し、当該団交申入れに係る団交事項の一部について誠実団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人らが平成24年1月11日付け及び同24年3月17日付けで申し入れた別紙団交事項目録記載の団交事項2中の昼勤者に対する賃金の据置措置及び同目録記載の団交事項4中の同22年7月分以降の賃金(住宅手当)引下措置を議題とする団体交渉に、誠実に応じなければならない。
2 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 一部の団交事項については団交申入れがなされたとは了解できないとする被申立人会社の主張について
 会社は、申立人組合が平成24年1月に内容証明郵便(甲11)により団交を申し入れたことに関し、その記載の内容が抽象的であり、団交事項1など一部の団交事項については団交が申し入れられたと了解することはできない旨主張する。
 しかし、団交事項1については、22年1月に組合から会社の代理人弁護士に申入れの内容が伝えられてから、甲11により団交が申し入れられるまでの間に、組合が申入れを撤回したと解するに足る特別の事情は証拠上窺えない。そうすると、甲11の記載は、団交事項1についての交渉申入れをも含む趣旨のものと解するのが相当である。
 また、他の団交事項についても、甲11の記載をもって団交が申し入れられたと解すべきであり、会社の主張はいずれの団交事項についても理由がないというべきである。
2 団交申入れを不応諾とする正当な理由があるなどとする会社の主張について
(1)団交事項1について
 会社は、本件救済申立てにより本団交事項の申入れの内容が明らかになった後、答弁書により、それについて説明しており、その結果、組合が不明であるとする点についてはいずれも明らかになったといえる。その後、組合から、これに関連して更なる団交が申し入れられたとする事情などはない。かかる経過に照らせば、会社が文書による説明に固執したり、現実の交渉を拒否したなどの事実はなかったと認められるのであって、団交の場で本団交事項が取り上げられなかったとしても、それをもって不誠実団交に当たるとはいえない。
(2)団交事項2について
 本団交事項は勤務時間の変更及びこれに伴う賃金の変更に関するものである。そのうち昼勤者について労働時間を1時間増やし、賃金は据置くという措置は労働条件の不利益変更に当たることが明らかであり、原則として労働者の同意なくして行うことはできないと解すべきものであるが、昼勤者の同意があったとする証拠はない。したがって、昼勤者に対する賃金の変更の有効性には問題があると解さざるを得ないが、会社がこうした認識に立って話合いを行った形跡は窺えない。会社は、組合の要求を真摯に受け止め、真剣かつ誠実な交渉努力をすべきであったのに、そのような対応を全くしていない。その意味において、なお団交の継続を求める組合の請求には理由があると解すべきである。
(3)団交事項4について
 本団交事項にいう組合員X2に対する住宅手当の支給停止は同人の労働条件の不利益変更に当たると解すべきものであるから、同人の個別的同意がない場合にはその有効性に問題があると解さざるを得ないが、会社がこうした認識に立って当該不利益変更の措置の是正等について話し合った形跡は窺えない。会社は、上記のような認識に立った上で、組合の要求を真摯に受け止め、真剣かつ誠実な交渉努力をすべきであったのに、そのような対応を全くしていない。その意味において、なお団交の継続を求める組合の請求には理由があると解すべきである。
 一方、X2に対する残業時間の短縮及びこれに伴う給与の減額の問題については、当該残業時間の短縮の必要性とその合理性は一応これを肯認することができ、また、会社は遅まきながらではあるが本審査の過程て゛提出した報告書によりその点の説明もしているところ、これに対する組合からの質問や根拠資料の提出請求などは一切ない。したがって、この問題については、交渉がたとえ組合の申入れ内容が実現することなく終わったとしても、会社になお継続しての団交応諾義務があるとすることはできない。 
掲載文献   

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