概要情報
| 事件名 |
五島育英会 |
| 事件番号 |
都労委平成23年不第64号 |
| 申立人 |
東京私立学校教職員組合連合、東京都市大学付属中学校・高等学校教職員労働組合 |
| 被申立人 |
学校法人五島育英会 |
| 命令年月日 |
平成25年8月27日 |
| 命令区分 |
一部救済 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
被申立人法人は、平成21年末に導入を提案した新人事制度についての申立人組合との交渉が妥結していないことから、22年度及び23年度の入試手当及び賞与を組合員に支給せず、組合が求めた仮支給も拒否した。本件は、 ①上記の入試手当及び賞与を含む給与改定に係る団交における法人の対応、②組合との交渉の未妥結を理由に、法人が組合員に対し、賞与等の仮支給をしないことが不当労働行為であるか否かが争われた事案である。
東京都労委は法人に対し、文書の掲示及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
| 命令主文 |
1 被申立人学校法人五島育英会は、本命令書受領の日から１週間以内に、下記内容の文書を、55センチメートル×80センチメートル（新聞紙２頁大）の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、法人本部及び東京都市大学附属中学校・高等学校の教職員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記
年 月 日
東京私立学校教職員組合連合
中央執行委員長 X1 殿
東京都市大学付属中学校・高等学校教職員労働組合
執行委員長 X2 殿
学校法人五島育英会
理事長 Y1
当法人が、貴組合との間で行った、平成22年度及び23年度の賞与を含む給与改定に係る団体交渉に誠実に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後は、このような行為を繰り返さないよう留意します。
（注：年月日は、文書を掲示した日を記載すること。）
2 被申立人法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
1 給与改定に係る団交での被申立人法人の対応について
入試手当に係る団交は、平成22年度については13回、23年度については5回実施されており、法人は、申立人組合からの説明要求や資料等の要求に対し、必ずしも十分とはいえないが、それ相応の対応はしているといえる。入試手当は法人が21年度に見直しを行っており、その時の交渉は妥結したものの、その後、組合の要求や妥結方針の変更があり、妥結できない状況が約2年続いた。このような状況に至った要因は、新人事制度を導入した法人だけでなく、同制度導入後の組合のやや硬直的ともいえる対応にも少なからずあると考えられる。
以上のことから、上記団交について、法人の対応が不誠実であったとまではいえない。
次に、賞与を含む給与改定に係る団交については、組合が法人に対して再三にわたり要求していた国立学校と本件学校との年間給与総額の比較に関する資料提出及び説明に関し、法人は、団交時に提示可能な資料もその時には提示せず、本件審査手続に入ってから提示しており、自らの主張を組合に納得させることや、交渉を前進させようとする態度に欠けていた。よって、当該団交における法人の対応は、不誠実なものであったといえる。
2 入試手当及び賞与の仮支給を拒否したことについて
本件のように団交において賞与等の支給内容を決定するような場合、労使で妥結し、その支給内容が定まるまでは、法人が組合員に対する支払義務を負うものではないのであるから、法人が当該団交において、組合の弱体化を図るべく殊更に妥結を困難にしたというような特別の事情が認められない限り、組合の要求する賞与等の仮支給に応じなくとも、それが直ちに不当労働行為に該当するとはいえない。
本件の場合、法人の団交における対応によって組合が妥結できないような状況に追い込まれていたとまではいえず、かえって、法人は一定の妥協案を示して支給をしようとしていたことが窺えるのであるから、組合員が賞与等の支給を受けられないことにより経済的不利益を被ったことは、組合が法人の提案に同意しなかったことによる結果であるといえる。法人が組合員に経済的打撃を与え、組合を弱体化させることを意図して賞与等の仮支給をしなかったということはできない。
したがって、法人が団交における組合との未妥結を理由に、組合員に対し賞与等を仮支給しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱い、又は組合の運営に対する支配介入には当たらない。 |
| 掲載文献 |
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