労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第5号・第34号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第5号・第34号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成25年8月20日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①会社を解雇された後、裁判において労働契約上の権利を有する地位にあることが確定した組合員2名の職場復帰等に係る団交を拒否したこと、②春闘要求に係る団交及び組合員4名の年間一時金の減額等についての団交の申入れに応じなかったこと、③組合員5名に対し、年間一時金を一方的に減額したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、1 上記①の組合員の職場復帰後の労働条件に関する団交に応じること、2 上記②の組合員の年間一時金の減額等についての団交に応じること、3 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成23年11月12日付け、同年12月13日付け、同月16日付け及び同月22日付けで団体交渉を申し入れた事項のうち、申立人組合員X2及び同X3の職場復帰後の労働条件に係る事項に関する団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人が、平成24年3月22日付けで申し入れた組合員X4、同X5、同X6及び同X7の平成23年度の年間一時金及び組合員X8に対する退職金の支払等を議題とする団体交渉並びに同年4月27日付けで申し入れた春闘分会附帯要求に関する団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
(記 省略)

4 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員2名の職場復帰等に関する団交を拒否したことについて
 申立人組合の団交申入書における要求事項及び協議事項のうち、職場復帰の期日の決定、解雇期間中の未払賃金等の支払、不当な解雇により組合員が受けた損害の賠償などについては被申立人会社に団交での話合いに応じるべき義務があったとはいえないが、職場復帰後の労働条件については、確定判決を受けて会社が出勤を指示するまでに約2年9か月の不就労期間が存在することを考慮すると、組合がこの間に当該組合員の労働条件に変動があると考えるのは自然であるから、会社に団交での話合いに応じる義務があったとみざるを得ない。
 次に、団交に応じなかった会社の対応が正当なものであったか否かについてみると、会社は、組合員の職場復帰に当たって団交での合意を条件とすることに反対し、確定した判決に従って復帰を求めた会社の対応は不当労働行為ではない旨主張する。しかし、組合は、団交における協議決定がなされない限り、断固として職場復帰させないとの意思表示を示していたとまでみることはできず、むしろ団交協議を求めているにすぎないとも認める余地がある。また、仮に組合が団交開催を職場復帰の条件として組合員を職場復帰させなかったとしても、会社が組合と団交を行うこと自体の支障となるとはいえないのであるから、この点からも、組合が団交開催を職場復帰の条件として組合員を職場復帰させないことをもって、会社が組合との団交に応じないことを正当化することはできない。
 以上のことからすると、会社が組合員2名の職場復帰後の労働条件に関する団交に応じなかったことに正当な理由があったとはいえず、かかる会社の対応は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
2 春闘要求に係る団交及び組合員4名の年間一時金の減額等を議題とする団交に応じなかったことについて
 春闘要求に係る団交については、組合は会社に対し、集団交渉を申し入れたことが認められる。集団交渉とは、組合の上部団体である申立外組合の近畿地方本部と組合及び組合員が所属する各会社が一堂に会して集団的に行う労使交渉である。しかし、組合と会社との間に集団交渉を行うことについての合意が事前にあったと認めるに足る事実の疎明はないのであるから、会社にはこれに応じる義務はなく、また、自社だけの個別交渉として応じることも予定されていないとみるのが相当であって、会社に団交に応じるべき義務はないといわざるを得ない。
 組合員4名の年間一時金の減額等を議題とする団交については、拒否する正当な理由のない限り、会社に応諾義務があることは明らかである。会社は、組合が交渉の必要性があると真摯に考えているのであれば、要求として繰り返し明示するはずであり、明示されている限り、会社は団交において話合いに応じている旨主張する。しかし、組合は会社の団交拒否に抗議した上で、これについての不当労働行為救済申立てをしているのであるから、その後の団交において上記の事項を要求事項としていないとしても、当該事項について交渉の必要性があると真摯に考えていないとまでいうことはできない。また、会社は実際に上記の事項について団交に応じておらず、今後議題として取り上げることについての確認もないのであるから、会社の主張は採用できない。
 したがって、上記の団交に応じなかった会社の対応は、正当な理由のない団交拒否であるといわざるを得ない。
3 組合員5名の年間一時金を減額したことについて
 組合員の中には賞与支給額が前年度よりも多かった者も存在するのであるから、会社における賞与の査定において恣意的な評価が反映されていた可能性があったことを考慮しても、会社の取扱いについて、組合員であることを理由に不利益に取り扱ったものと認めることはできない。
 また、組合の主張は、組合員の賞与が減額されていることについての具体的説明がなされていないことを理由として、組合員であるが故の不利益取扱いが推認されるとするものであるが、賞与減額に際し、その理由を具体的に説明することが好ましいとしても、理由説明が不十分であったことをもって、直ちに組合員であるが故の不利益取扱いがあったと認めうるものではない。 
掲載文献   

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