労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  殖産運輸 
事件番号  平成24年道委不第10号 
申立人  殖産運輸労働組合 
被申立人  殖産運輸株式会社 
命令年月日  平成25年7月26日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①申立人組合が「会社は労働条件を変更する場合は、(中略)組合と協議する」との労働協約の規定の変更を求めたのに対し、団交で誠実に対応しなかったこと、②冬期一時金に関する団交において、一時金額の引下げの根拠となる会社の業績につき組合が納得できる資料を提示するなどの誠実な対応をしなかったこと、及び③会社の顧問Y2が団交の席上で、組合の執行委員長X1を中傷する発言を行うなどしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 北海道労委は会社に対し、1 上記②の団交における誠実な対応、2 上記③の発言を行うことによる組合への支配介入の禁止、3 文書の掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成23年度冬期一時金を議題とする団体交渉において、企業業績に関する申立人からの指摘に対し、適宜、追加資料を提示して説明を尽くすなどの誠実な対応をしなければならない。
2 被申立人は、団体交渉の席上、被申立人の団体交渉要員が、申立人の団体交渉要員の団体交渉外での言動及び就業上の問題などを殊更に取り上げ、かつ、取り上げた事項に関し、申立人の団体交渉要員に対する懲戒処分を示唆するなど、誠実交渉義務に照らして使用者に求められる説明や反論を逸脱し、申立人の団体交渉要員を萎縮させ、また、団体交渉の円滑な進行を妨げるおそれのある発言を行うことにより、申立人の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、次の内容の文書を、日本工業規格B1判縦長白紙にかい書で明瞭に記載して、被申立人の本社事務所正面玄関の見やすい場所に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
   当社が、貴組合に対して行った下記の行為は、北海道労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないようにします。
(記 省略)
   平成  年  月  日 (掲示する初日を記載すること)
   殖産運輸労働組合
    執行委員長 X1 殿
殖産運輸株式会社
代表取締役 Y1

4 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 労働協約の規定の変更に係る申立人組合の要求への対応について
 組合は、被申立人会社に提示した労働協約の変更案は、平成23年道委不第1号事件における和解協定の第2項を踏まえたものであり、会社の対応はこれを無視するものであって、誠実交渉義務に反する旨主張する。
 しかし、同項は、労働協約の改定による新規のルールの構築等を明示するものではないから、組合の主張を認めることは困難である。また、会社は団交の席上等で、組合の要求に応じられない理由を具体的に説明したものと解される。したがって、団交における会社の対応は、誠実交渉義務に反するものということはできない。
2 冬期一時金に関する団交における対応について
 会社は団交の場で「企業業績状況」と題する資料を開示して、営業利益等の金額について説明をしているものの、当該資料中の製造原価に関する組合の指摘に対し、組合を説得するための回答をしたり、必要に応じて追加の資料を用いて説明するなど、会社が説明を尽くした事実は認められないから、説明を尽くさなかった点において誠実交渉義務に反するものといわざるを得ない。
3 団交における会社の顧問Y2の発言について
 団交において組合の執行委員長X1が配車係の従業員の解任を検討するよう求めた後で、Y2が会社にも言い分があると前置きした上で、①X1が勤務中自宅に立ち寄ったり、会社に連絡することなく通院し、しかもそれを後から休憩時間に入れているという趣旨の発言、②X1が他の従業員を怒鳴りつけており、相手方や見ている者が、X1が恫喝しているように受け取っている、複数の従業員が身の危険を感じているという趣旨の発言、③会社も、X1のこれらの言動を放置できず、何らかの措置を考えなければならないとの発言をしたことが認められる。しかし、これらX1に係る件は事前に合意していた団交事項ではないことはもとより、組合の要求や主張に対する会社の主張の根拠の説明や反論の範囲を逸脱したものといわざるを得ない。
 そして、X1に対し懲戒処分などの不利益処分をすることを示唆するものであって、組合の団体交渉要員に心理的圧力を加え、萎縮させるおそれがあることは否定できない。また、団交の経過からみても、X1が反論を余儀なくされ、団交の円滑な進行に影響があったものと認められる。
 したがって、Y2の発言にみられる会社の対応は、組合の団体交渉力に対し、不当な影響を与えるものと評価するのが相当であり、組合の運営に対する支配介入に該当する。 
掲載文献   

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