労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ミカド観光センター 
事件番号  長崎県労委平成24年(不)第1号 
申立人  全国一般長崎地方労働組合 
被申立人  株式会社ミカド観光センター 
命令年月日  平成25年8月5日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成23年11月14日、被申立人会社の従業員らは労働組合Zを結成し、同月22日、ストライキを実施した。申立人組合は、同月28日、上記の従業員らが組合に加入したことを会社に通知した(なお、Zは組合に加盟したことにより、組合の支部となった。)。
 本件は、その後会社が、①ストライキに参加していた組合員のうち10名に自宅待機を命じたこと、②違法なストライキを扇動したことなどを理由に組合員X2ら3名を懲戒解雇に付したこと、③上記10名のうち6名に配置転換を命じたこと、及びこれらの会社の行為に関する団交における会社の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 長崎県労委は会社に対し、1 上記②の懲戒解雇がなかったものとして取り扱うこと等、2 上記③の配置転換がなかったものとして取り扱うこと、3 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、X2及びX3に対する平成24年2月12日付け、X10に対する同年3月9日付け懲戒解雇がなかったものとして取り扱い、同人らを原職または原職相当職に復帰させるとともに、復帰までの間に同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、X4、X5、X6、X7、X8及びX9に対する平成24年2月12日付け配置転換がなかったものとして取り扱い、X4、X5、X7、X8及びX9を原職または原職相当職に復帰させなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、本命令書受領の日から10日以内に、下記内容の文書を手交しなければならない。
(記 省略)

4 申立人のその余の請求は棄却する。 
判断の要旨  1 本件ストライキの正当性について
 被申立人会社は、労働組合Zがストライキ回避の条件として要求した「会長の引退」や「Y4課長の謝罪、退職」は労働組合が要求できる事項ではないこと及びZがストライキを当初通知された開始日時よりも前倒しして実施したことから、本件ストライキは違法である旨主張する。
 しかし、上記の要求事項は交渉の途中段階で労働条件の改善を図るために必要な手段の一例として提示したものと認められ、また、当初の通知の後でZから会社に対し、新たな回答期限が通知されていることが認められるから、会社の主張は採用できない。また、会社は、前倒しでストライキが実施されたため、重大な損害を被ったとも主張するが、違法な前倒しとは認められず、会社は実施を予見できたのであるから、業務が停滞しないように対応すべきものであり、会社がとった対応策に対してZが妨害行為を行ったなどの事情も窺えない。したがって、本件ストライキはその目的及び対応において正当性を逸脱していないと認められる。
2 本件自宅待機命令について
 会社は、自宅待機命令を行った理由として、本件ストライキに至る経緯を調査するとともに、円滑な職場環境を整備するためであると主張するが、裏付けとなる根拠に欠けており、合理性を見出すことは困難であるから、採用することはできない。
 一方、会社の不当労働行為意思についてみると、会社の会長から組合対応を任されていたY3は、長崎地裁島原支部における陳述において、Zの執行委員長であったX2や組合を厳しく非難している。また、本件ストライキの開始当日、ストライキが違法であることなどを記載したチラシをY4に作成・配布させており、Zとは対決姿勢で臨んでいたことが認められる。よって、会社が組合を嫌悪していたと認めるのが相当である。
 以上のとおりであるから、本件自宅待機命令は、本件ストライキを違法と決めつけた会社が組合嫌悪の意思をもって行ったものであり、Zの中心的な存在であった組合員10名に精神的な不利益を負わせるとともに、他の従業員から隔離することによって組合の弱体化を図ったものと認められる。
3 本件懲戒解雇について
 会社が主張するX2ら3名に共通する解雇理由は、違法なストライキの扇動や違法なストライキによる長期無断欠勤であるが、前述のとおり本件ストライキには正当性が認められるから、これらの解雇理由に合理性があるとはいえない。また、3名のうちX10についてはセクハラ行為も理由とされているが、被害者とされている従業員の陳述等によっても実際にセクハラ行為があったと認めることは困難であり、これを理由とする懲戒解雇についても合理的な理由を見出すことはできない。その一方で、前述のとおり、会社が組合を嫌悪していたことが認められる。
 したがって、本件懲戒解雇は、X2ら3名を処分に付して不利益を負わせるとともに、Zの要職にあった同人らを会社組織から排除することにより組合の弱体化を図ったものである。
4 本件配転命令について
 本件配転命令は、不当労働行為に該当する本件自宅待機命令に続いて行われたものであるところ、これについても合理的な理由は認められない。そうすると、組合が本件ストライキ前と同じ部署への10名の復帰を求めていたのに対して、会社が組合嫌悪意思をもって、あえて配転を行ったとみるのが相当である。そして、配転先については、多数の従業員が働くホテル本館と距離があり、従業員への組合の影響力が広まらないようにするためにそこを選んだとも考えられる。
 したがって、本件配転命令は組合に対する支配介入である。
5 団交拒否について
 本件自宅待機命令等に関する団交は、自宅待機命令の期間中である23年12月14日に初回が開催され、その後、X10の懲戒解雇の前に2回開催されており、こうしたことからすると、会社が団交を拒否したとまでいうことは困難である。 
掲載文献   

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