労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  株式会社幸和物産 
事件番号  群労委平成23年(不)第5号 
申立人  全日本建設交運一般労働組合群馬県本部 
被申立人  株式会社幸和物産(Y)、破産者株式会社幸和物産(Z) 
命令年月日  平成25年7月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社Yでトラックの運転手として勤務する従業員らが申立人組合に加入し、分会を結成して労働条件の改善を求めたところ、会社が①組合員X2ら4名に対して配車差別を行ったこと、②乗務中の事故等を理由に組合員X6を懲戒解雇に付したこと、及び③団交における会社の対応、④組合が配布したビラの内容に関することを理由に会社が団交に応じていないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 群馬県労委は被申立人Zに対し、1 X2に対する配車差別がなかったものとして取り扱うこと等、2 X6の解雇がなかったものとして取り扱うこと等、3 団交におけるチャート紙等の提示、4 組合が配布したビラを理由に団交を拒否することの禁止、5 文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人破産者株式会社幸和物産破産管財人Z1は、被申立人株式会社幸和物産より全日本建設交運一般労働組合群馬トラック合同支部幸和物産分会所属の組合員X2に対してなされた配車差別がなかったものとして取り扱い、同人に対し、平成22年11月24日から同24年1月31日までの間の賃金相当額と既支払額との差額として合計108万5633円を、また、平成24年2月1日以降雇用契約存続の間、同人が同分会結成前と同様に配車されていれば得られたであろう各月ごとの賃金相当額と既支払額との差額をそれぞれ支払わなければならない。
2 被申立人破産者株式会社幸和物産破産管財人Z1は、被申立人株式会社幸和物産より全日本建設交運一般労働組合群馬トラック合同支部幸和物産分会所属の組合員X6に対してなされた平成22年11月29日付け解雇がなかったものとして取り扱い、同人に対し、同年11月30日以降雇用契約存続の間、賃金相当額として、毎月末日限り18万8333円を支払わなければならない。
3 被申立人破産者株式会社幸和物産破産管財人Z1は、未払割増賃金問題に関する団体交渉において、申立人から被申立人破産者株式会社幸和物産との平成22年7月18日付け確認書第3項に基づいてチャート紙や日報等の提示を求められたときは、これに応じなければならない。
4 被申立人破産者株式会社幸和物産破産管財人Z1は、申立人から破産財団に関する事柄を要求事項とする団体交渉を申し入れられたときは、申立人が平成23年2月3日ころに配布したビラを理由に、これを拒否してはならない。
5 被申立人株式会社幸和物産は、申立人から破産財団に関する事柄を要求事項とする団体交渉を申し入れられたときは、申立人が平成23年2月3日ころに配布したビラを理由に、これを拒否してはならない。
6 被申立人破産者株式会社幸和物産は、速やかに次の文書を申立人に交付しなければならない。
  (次の文書 略)
7 申立人の請求する救済内容のうち、平成22年11月23日以前の配車差別によってX2が被った損害の賠償を求める部分を却下する。
8 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 配車差別について
 被申立人会社Yにおける労使関係についてみると、申立人組合の分会結成通告(平成22年3月)の直後、会社の社長が組合員に対し、組合員は長距離の配車から除外する旨述べ、また、分会の解散や分会からの脱退を働きかけていた。そのため、通告から3,4か月後に組合員数が半数程度になってしまったことが認められ、会社にとって分会結成が特に長距離の配車において大きな障害となり、分会との対立関係を生じさせるものであったと推認される。
 このような中で、22年5月分以降、組合員4名に対する長距離の配車が減少したこと、組合員X2の賃金支給額が減少したこと、23年1月から4月までの間には配車日数及び中・長距離の配車において非組合員との間に格差が存在していたことがそれぞれ認められ、それらは会社が分会ないし組合員を嫌悪し、会社から排除しようとするとともに、分会の中心人物であったX2の積極的な組合活動をことさらに嫌悪して、同人らに対し配車差別を行ったことによるものと判断される。
 よって、本件配車差別は、組合員に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当する不当労働行為である。
2 組合員X6の解雇について
 本件解雇が行われた時期は、近接して組合員X4も懲戒解雇に付され、同X5も退職を余儀なくされるなど、組合員が集中して排除手続を受けていた時期であった。また、上記の懲戒解雇等は、就業規則の懲戒解雇事由をはじめ懲戒処分に関する規定が会社によって一方的かつ大幅に改正された直後に行われたものであった。そして、X6の解雇の理由についてみると、22年9月までに発生した3回の事故は既に処理済みで懲戒処分の対象にもならなかったものであり、同年11月の事故は仮に同人に責任があるとしても重大な過失までは認められないものであり、会社が支払った修理費は19万8,450円にすぎず、懲戒解雇で臨むほどの重大な事故とまでいえるか疑問である。したがって、本件解雇に合理的な理由があったとは認められない。
 以上のことから、本件解雇は、分会結成以来、組合員に対する排除意識をもっていた会社が配車差別を行う中で、上記22年11月の事故を奇貨としてこれをX6の責任であったと結論づけることにより同人を会社から排除し、もって分会の弱体化を図ったものと推認せざるを得ない。
3 団交における会社の対応について
 会社が22年12月に開催された2回の団交において、X6の解雇問題についての組合からの質問等に具体的な説明を行うなどしなかったこと、及び同年7月18日付け確認書の労使合意に反してチャート紙及び日報等を組合に提示しなかったことは、不誠実な対応であったと認められる。
4 団交拒否について
 組合が配布したビラには、それまでに団交で話し合われた解雇、就業規則の変更及び配車差別の問題などが記載されているが、会社の主張する解雇理由が全て書かれてはおらず、しかも出席していた会社代理人弁護士などの実名が記載され、「弁護士や社会保険労務士などの肩書きを利用して合法を装って不当な行為を強行し」とあるなど、記載内容の一部に穏当でないところがあった。しかし、配布されたのは20数枚程度で、それによって業務に支障が生じたとの事情はうかがえない。したがって、当該ビラの内容、配布等の状況に照らせば、これをもって団交を拒否する正当な理由にはなり得ない。 
掲載文献   

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