労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  名古屋石田学園 
事件番号  愛労委平成23年(不)第1号 
申立人  星城高等学校教職員組合(X)、愛知県私立学校教職員組合連合(Z) 
被申立人  学校法人名古屋石田学園 
命令年月日  平成25年7月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が平成22年度の一時金に関する団交において①一時金削減の根拠資料として組合が提示を求めた部門別を含む財政三表等の資料を開示しなかったこと、②交渉権限ある者を出席させなかったこと、③申立人組合Xの上部団体である同Zの関係者の参加を理由に学校内での開催を拒否したこと、及び法人が平成23年12月15日に前年度より更に0.5か月分減額して23年度の一時金を支給したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 愛知県労委は法人に対し、一時金削減に関する団交に誠実に応じること及び文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人学校法人名古屋石田学園は、申立人星城高等学校教職員組合が申し入れた平成22年度及び23年度の一時金削減に関する団体交渉において、教育研究活動のキャッシュフローの分析結果に係る財務資料を提示して、イエローゾーンの予備的段階において一時金削減を行う必要性を説明し、誠実に交渉に応じなければならない。
2 被申立人学校法人名古屋石田学園は、申立人星城高等学校教職員組合及び同愛知県私立学校教職員組合連合に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から7日以内に交付しなければならない。
   当学園が、平成22年度の一時金を議題とする団体交渉において、一時金削減の必要性を説明するための資料を十分に提示せず自己の主張の根拠を具体的に説明しなかったこと及び実質的な交渉権限を有する者を出席させなかったことは、いずれも労働組合法第7条第2号に、平成23年度の一時金を一方的に決定し支給したことは、同号及び同条第3号に、それぞれ該当する不当労働行為であると愛知県労働委員会によって認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
        年  月  日
   星城高等学校教職員組合
     執行委員長 X1 様
   愛知県私立学校教職員組合連合
     中央執行委員長 Z1 様
学校法人名古屋石田学園
理事長 Y1

3 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 団交における交渉態度について
 被申立人法人は、団交において愛知県人事委員会作成の「人勧資料」及び平成13年度から21年度までの法人全体の消費収支計算書の大科目の数値を記載した「消費収支表」を提示したと認められるが、これらは一時金削減の必要性を示す資料としては不十分といわざるを得ない。
 また、法人の事務局長をはじめとする法人側の団交出席者は、団交の進展につれて妥協点に達する方向で話合いを進めることができる実質的な交渉権限を持ち合わせていなかったといわざるを得ず、法人の意向や決定を伝達する権限しか与えられていなかったとみるのが相当である。
 したがって、団交における法人の交渉態度は誠実なものとはいえず、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
2 団交の開催場所について
 認定した事実によれば、法人は申立人組合Zの関係者の参加を理由として学校内での団交開催を認めていないが、Z関係者の参加を抑制するともいえるような態度をとることは好ましいことではない。しかし、申立人組合Xはやむを得ずではあるが、校外開催に同意し、その結果、平成22年度第4回以降、団交は継続的に校外で開催されていること、校外の開催場所への移動の負担及び借上げ費用の負担は軽微であることをも総合的に判断すると、校外で団交を開催したことが誠実交渉義務に反するとまでいうことはできない。
3 平成23年度の一時金支給について
 23年度の一時金に関する団交において、法人は、組合に配付した一資料によれば、学校法人の帰属収支差額が赤字の場合にはイエローゾーン(経営困難状態)の予備的段階であるとされており、法人の財務状況は21年度に帰属収支差額が赤字になり、イエローゾーンに入りかけている旨説明した。なお、その資料には、イエローゾーンにおける取組みとして人件費・経費削減等を内容とする経営改善計画の作成・実行が必要である旨の記載があるが、イエローゾーンの予備的段階における取組みとして人件費削減を必要とする旨の明確な記載はない。
 組合は、イエローゾーンの予備的段階は正常な段階であり、労働組合と検討していく段階であること、その資料によれば、帰属収支よりも教育研究活動のキャッシュフローや外部負債の状況が重視されており、その点からみると、法人の経営状態はイエローゾーンにはほど遠い段階であること等を主張した。しかし、法人はこれに対し、イエローゾーンの対処の仕方を参考にしていかなければならない旨や、教育研究活動のキャッシュフローの黒字額が減ってきており、2年連続の赤字となって一挙にイエローゾーンに突入する危険がある旨を説明するにとどまった。したがって、法人は、イエローゾーンの予備的段階において一時金削減を行う必要性について、根拠をもって具体的に説明したとはいえず、また、教育研究活動のキャッシュフローが悪化することについても必要な資料を提示して説明したとはいえない。
 以上のとおりであるから、法人が十分な説明をせず、不誠実な交渉態度のまま、23年度の一時金を一方的に決定し、支給したことは、団交において誠実な対応を通じて合意形成の可能性を模索する義務を果たしたものとはいえず、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。また、このような態度は、組合を軽視し、弱体化させるものであるから、同条3号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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