労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成23年(不)第67号 
事件番号  大阪府労委平成23年(不)第67号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成25年4月15日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成22年12月22日、申立人組合と被申立人会社との間で同年年末一時金等を議題とする団交が開催されたが、会社側として出席していた代理人Y2が組合側出席者の口のきき方に問題があるとして退出したため、10分程度で終了した。その後、組合は数回にわたり団交申入れを行ったが、会社はこれに応じなかった。23年3月、組合は会社の取引先Aに対し、会社との紛争の拡大阻止のために積極的な役割を果たすようお願いする旨記載された申入書と題する文書を提出するとともに、Aの店舗付近で集会を開き、ビラを配布するなどした。同年4月、組合は大阪府労委に対し、上記団交申入れへの会社の対応に関し不当労働行為救済申立てを行ったが、同年7月和解が成立し、一時金、賃金改定等を議題とする団交を行うとの条項を含む和解協定書が作成された。これを受け、同年8月3日以降、3回にわたって団交が開催された。
 本件は、①会社が組合員に対し、組合のAに対する上記要請活動に関して事情聴取をした上、懲戒処分を行ったこと、②団交申入れに対する会社の対応等、③会社が組合員に対し、平成22年年末及び23年夏季の一時金を支給せず、また、23年賃金改定を行わないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、1 上記③の一時金及び賃金改定後の賃金額と既支払額との差額の支給、2 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成22年年末一時金、同23年夏季一時金及び同年賃金改定について、金額の算出方法についての客観的な基準を示すなどした上で、申立人組合員に対し、これら一時金及び改定後の賃金額と既支払額との差額を支給しなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
          記  
               年  月  日
 X労働組合
  支部執行委員長 X1 様
              株式会社Y
               代表取締役Y1
  当社が行った下記(1)から(7)の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
          記
  (1)平成22年12月22日の団体交渉以降、同23年7月15日付けの和解協定書に基づく団体交渉が行われるまでの間、貴組合との団体交渉に応じなかったこと。その際、同年5月6日付け及び同月16日付け文書にて、大阪府労働委員会平成23年(不)第27号事件の判断がなされるまでの間、貴組合との団体交渉に応じない旨返答したこと(2号違反)。
  (2)平成23年3月25日、貴組合員4名に対し事情聴取を行ったこと(3号違反)。
  (3)平成23年4月27日付けで貴組合員4名に対し懲戒処分を行い、同年5月分給与から賃金を減額したこと(1号・3号違反)。
  (4)貴組合との事前協議を行わないまま上記(3)の懲戒処分を行い、平成19年10月18日付け確認書に違反したこと(3号違反)。
  (5)貴組合との事前協議を行わないまま、貴組合員に対して、平成22年年末一時金及び同23年夏季一時金を支給せず、また、同年賃金改定を実施せず、平成19年10月18日付け確認書に違反したこと(3号違反)。
  (6)平成23年夏季一時金を議題とする団体交渉において不誠実な対応をし、同年7月15日付けの和解協定書に違反したこと(2号・3号違反)。
  (7)平成22年年末一時金及び同23年夏季一時金を貴組合員に対して支給せず、同年賃金改定を貴組合員に対して行わなかったこと(1号・3号違反)。

3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員に対する事情聴取及び懲戒処分について
 被申立人会社は、申立人組合の取引先Aに対する要請活動は正当な組合活動に当たらない旨主張する。しかし、組合がAに提出した申入書は、組合の窮状を訴え、組合の活動への理解や労使紛争拡大防止への助力を求めるために作成されたとみるのが相当である。ちなみに、平成22年夏季及び年末の一時金をめぐる交渉は未妥結で、会社は組合員に対してこれら一時金を支払っておらず、また、後記2記載のとおり、当該年末一時金を議題とする団交の後、会社が団交申入れに応じなかったことは団交拒否に当たると判断される。さらに、申入書は、虚偽の事実を流布するなどして会社の信用を傷つけたものとはいえない。取引先Aの店舗付近での組合活動についても、組合が会社に関し、虚偽の内容を流布するなどしたと認めるに足る疎明はない。したがって、本件要請活動は正当な組合活動と判断される。 
 一方、本件事情聴取の対象となった4名の組合員のうち、2名は上記Aの店舗付近での組合活動には参加しておらず、残りの2名は参加していたが、仕事が休みであったことが認められる。また、組合は事情聴取の前に会社に対し、会社が組合員に直接説明を求めることは不当労働行為に該当するとし、組合が自身の行動について説明する意思があることを伝えたが、会社は事情聴取を中止しなかったことが認められる。
 以上のとおりであるから、本件事情聴取は組合員個人に対し、正当な理由なく、強制的に聴取しようとしたとみるのが相当で、かかる行為は、組合員を威圧し、萎縮させ、組合の活動に支配介入したもので、労組法7条3号に違反する不当労働行為である。また、本件要請活動をしたこと等を理由とする懲戒処分は、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として不利益取扱いを行い、もって組合活動に支配介入したものに該当し、同条1号及び3号に違反する不当労働行為である。
2 団交申入れに対する会社の対応等について
 平成22年12月22日に開催された年末一時金を議題とする団交において、会社の代理人Y2が開始10分程度で、組合側出席者の口のきき方に問題があるとして退出したことが認められるが、同年7月以降の団交における同人の発言内容をみると、個々の組合員の一時金額の算出方法や従業員間に差が生じる理由すら不明確であって、しかも、十分な説明をしないまま、自らの提示する金額に同意することのみを求めていたと解され、かかる会社の対応は、相手の理解を得るための努力を欠いたもので、相当程度問題がある。
 そうすると、仮に会社が主張するように組合側参加者が声を荒げるといった事態が発生したとしても、その原因はむしろ会社の団交での不適切な対応にあるというべきであって、同日の団交での組合の言動が、会社が団交に応じない正当な理由に当たるとみることはできない。したがって、23年7月に作成された和解協定書に基づく団交が行われるまでの間、会社が団交に応じなかったことは、労組法7条2号に違反する不当労働行為である。
3 組合員に対する一時金の不支給等について
 平成22年年末及び23年夏季の一時金並びに23年賃金改定をめぐる団交での協議内容をみると、協議が尽くされた結果、双方の主張が平行線になり妥結できなかったとは到底みることはできず、会社は一貫して組合に対し、必要な説明を行わず、理解を得るための努力を欠いたまま、会社の提示する回答に同意することのみを求め、同意しなければ組合員に一時金を支給せず、賃金改定を行わないとする対応をとってきたとみるのが相当である。かかる対応は、組合員とそれ以外の従業員との間に、正当な理由なく金銭面についての差を設けたものというべきである。
 以上のとおりであるから、会社が組合員に対して上記一時金を支給しないこと等は、組合員であることを理由として不利益取扱いを行い、もって組合活動に支配介入したものに該当し、労組法7条1号及び3号に違反する不当労働行為である。 
掲載文献   

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