労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成23年(不)第73号 
事件番号  大阪府労委平成23年(不)第73号 
申立人  X労働組合 
被申立人  一般財団法人Y 
命令年月日  平成25年4月8日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合らは、平成23年7月4日、被申立人法人との団交の後、法人に対し、争議通告書を手交した。法人は、同月11日、法人の各出張所の出納員(景品買取業務に従事する職員)に対し、組合員が業務ボイコットについての同意を求めるため訪問してきても出張所に立ち入らせないよう求める「お知らせ」と題する文書を配付した。
 本件は、法人が①上記の「お知らせ」文書配付以降、組合員らが業務を行うパチンコホールと一体となって、組合員に対し、ストライキに参加しないよう促す言動を行い、ストライキを妨害したこと、②同月4日、組合員X6が法人に対し、組合員を訪問するために法人の各出張所に立ち入ることがある旨伝えたところ、その翌日、組合に対し「処分」を予告する文書を送付し、組合の情報伝達を妨害したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は法人に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
  X労働組合
   執行委員長 X1 様
一般財団法人Y
 代表理事 Y1
 当協会が行った下記(1)及び(2)の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
  (1)当協会が、当協会従業員に対して平成23年7月11日付け「お知らせ」と題する文書を配布することにより、貴組合の同月15日のストライキを妨害したこと。
  (2)平成23年7月11日以降、当協会が、貴組合員らに対し、貴組合の同月15日のストライキに参加しないよう働きかけたこと。

2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 平成23年7月11日の「お知らせ」配付以降の被申立人法人の対応について
「お知らせ」の内容をみると、本件ストライキにより法人が莫大な損害賠償を請求されるおそれがある旨の記載があるが、これは組合員らに労働条件や雇用に関する不安の念を抱かせるものであり、また、労働組合員が業務ボイコットへの参加の同意を求めるために出張所を訪問することが想定される旨を前置きした上で出張所への立入禁止に言及していることからすると、本件ストライキの妨害を企図したものとみざるを得ない。加えて、組合員に対して法人の職員が個別に手渡す方法により配付されたことを併せ考えると、「お知らせ」の配付は、組合員に対し、本件ストライキへの不参加を働きかけ、本件ストライキの妨害を企図したものとみることができる。
「お知らせ」の配付以降の、法人職員の組合員らに対する言動についてみると、本件ストライキに参加することによって出納員の職を失う可能性や経済上の不利益を被る可能性があることを示唆するもの、本件ストライキに至る申立人組合の方針を組合嫌悪の念をもって批判するもの、組合員に対して直接、スト当日に出勤するよう説得するものなどがあり、いずれも組合員にスト参加への不安や躊躇の念を抱かせるに足るものといえる。
 法人は、法人職員らが行ったのはストライキ当日の出勤の有無の確認にすぎない旨主張する。しかし、組合からストライキ通告書及び一部の組合員の年次有給休暇の取得に係る届けが提出された時点で、誰がストに参加するのかを把握していたはずであり、改めてスト当日の出勤の有無を確認する必要性は乏しく、確認をしたこと自体がスト参加へのけん制を企図したものといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、「お知らせ」配付以降の法人の対応は、本件ストライキへの参加に対する不安や躊躇の念を組合員に抱かせるに足るものであって、本件ストライキに対する妨害及び組合員間の離反を企図し、現に3つの分会においてスト不参加による63名もの除名者等を出すに至らしめた組合弱体化行為であり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
2 平成23年7月5日の文書送付について
 法人は、賃上げをめぐって労使関係が緊張することとなった平成23年より6年以上前から、出張所内への業務関係者以外の立入禁止について出納員に周知してきたが、そのような立入禁止の措置は多額の現金を扱う出張所における防犯上の理由によるもので、合理的なものといえる。
 組合は、争議突入状態において法人が出張所への入室に対する処分を示唆することは、組合がストライキへの参加を呼びかける活動に圧力をかける意図を明白にするものである旨主張する。しかし、法人が組合に送付した「出張所への立ち入り禁止について(連絡)」と題する文書は確かに争議通告の翌日に送付されており、組合の争議行為を意識して送付したものである可能性は否定できないものの、組合の争議行為に関する記載はなく、組合員X6が無許可で出張所に立ち入る旨申し出たことに対して、かかる行為が禁じられていることを確認若しくは警告したものとみざるを得ず、また、前述のとおり、立入禁止措置が防犯上の合理的な理由に基づくものであることを併せ考えると、本件ストライキをはじめとした組合活動の妨害を企図したものとまでみることはできない。 
掲載文献   

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