労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  (有)大洋 
事件番号  茨労委平成24年(不)第1号 
申立人  茨木ユニオン 
被申立人  有限会社大洋 
命令年月日  平成25年3月21日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が、組合員X2の解雇に関すること等を議題とする団交申入れを拒否したこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 茨城県労委は会社に対し、誠実団交応諾を命じた。 
命令主文  1 被申立人が、申立人から平成24年1月27日付け及び同年2月17日付けで申入れのあった団体交渉に正当な理由なく応じなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であることを確認する。
2 被申立人は、申立人から、申立人組合員X2に関することを議題とする団体交渉の申入れがあったときは、誠実かつ速やかに応じなければならない。 
判断の要旨  1 申立人組合による街宣活動について
 被申立人会社は、第4回団交において交渉が決裂したわけでもないのに、組合が会社のみならず、社長の実家等にまで来て街宣活動を行ったことを団交申入れに応じなかった理由の1つとして挙げている。
 しかし、組合は街宣活動を行った後に、本件団交申入れを行っていることから、当該街宣活動は第4回団交での会社の回答内容に抗議することにより団交において少しでも組合の要求に近い解決金額での合意を図ることを目的としたものであったと推認され、そのような目的で交渉中に街宣活動を行うことは組合活動として正当性を欠くとまではいえず、それを恐喝と同等とする会社の主張は認められない。
 また、組合が会社社長の実家等においてまで行ったことについては、確かに、労使関係の場で生じた問題は職場領域で解決すべきであり、労働組合の活動は企業経営者の私生活の領域に立ち入るべきではないとされていることから、いささか行き過ぎの面があったともいえる。しかし、街宣活動の方法、回数、時間、配布したビラの内容や、会社の正常な営業活動が妨げられた事情等について会社からの疎明がないことからすると、労働組合の活動として社会通念上許容される範囲内のものといえる。
 したがって、会社が、交渉中に行われた組合の街宣活動を理由に団交に応じないことは、正当とは認められない。
2 裁判での解決を選んだことを団交拒否の理由としていることについて
 会社は、当委員会における2回目のあっせんでも解決しなかったことなどから、組合との交渉は決裂しており、解決の唯一の方法として裁判での解決を選んだため、今後も組合との団交に応じる考えはない旨主張する。
 しかし、団交は、労使間の自主的な交渉を通じて将来にわたる労働関係を形成しようとするなど裁判とはまた別の意義を有しており、それにより紛争の自主的な解決を図ることは労使関係にとって望ましいことであって、団交による自主解決の余地が残されている以上、会社が民事訴訟を提起したとしても、組合が会社との団交により解決を図る意味は十分に存在するといえる。
 本件についてみると、会社が誠実交渉義務を果たした結果、交渉の余地がなくなっていたとは認められず、また、2回目のあっせんが打切りとなったことで交渉の余地がなくなったともいえないことから、団交は決裂しておらず、依然として自主解決の余地が残されているといえる。
 さらに、会社が裁判による解決を選んだため今後の団交に応じない旨の主張を、団交の場などでその理由等を直接組合に説明して理解を求めようとした事実も認められないことから、その主張を正当化することはできない。
3 結論
 以上のとおり、会社の主張はいずれも正当なものとは認められず、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否であり、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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