労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  アイシ・フュージョン・アソシエイツ 
事件番号  岡委平成23年(不)第4号 
申立人  労働組合岡山マスカットユニオン 
被申立人  株式会社アイシ・フュージョン・アソシエイツ 
命令年月日  平成25年3月14日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   X2は、平成21年10月、申立外A社に派遣登録し、同社と岡山県との間の労働者派遣契約に基づき県立学校に派遣されて勤務していた。22年4月、入札替えにより、A社に替わり被申立人会社が落札したため、X2は会社に派遣登録し、同年6月2日から9月30日までを雇用期間とする労働契約を締結して勤務を続けた。同人は、7月に申立人組合に加入した。9月になって、X2は会社に雇用延長を申し入れ、会社が県と交渉したが、結局、派遣期間の延長は認められず、同人は会社からの求めに応じて離職票作成に応じ、10月末をもって離職することとなった。会社はX2に対し、休業補償を支払った。
 本件は、その後会社が組合員X2に対する解雇予告手当の支払等を議題とする団交に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。 
 岡山県労委は会社に対し、誠実団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社アイシ・フュージョン・アソシエイツは、申立人労働組合岡山マスカットユニオンに対し、平成23年8月15日付け及び同年10月1日付けの団体交渉申入れ事項のうち、組合員X2に対し支給した休業手当相当額と解雇予告手当相当額との差額の支払いの問題に係る団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件団交申入れに係る団交議題について
 申立人組合は団交議題として、解雇予告手当の支払ないし解雇予告手当と休業補償との差額の支払を掲げている。
 被申立人会社は、解雇予告手当の支払要求は請求の根拠がなく、不当要求であると主張する。しかし、組合員X2が平成22年9月7日、会社に雇用期間延長を申し入れた後、会社が同人に対し、契約更新ができないことを伝えた形跡はなく、また、会社は10月1日以降の同人とのやり取りにおいて、県との交渉を続ける旨を再三告げていた。そうすると、10月1日以降も、会社とX2との関係においては、雇用契約の更新の有無について依然として曖昧な点が残っていたのであり、会社から同人に対して明確な説明が与えられなかったことからすれば、労働関係の終了に際して未清算の問題が生じていたというべきである。組合の主張する解雇予告手当の支払要求は、労使関係の終了に際して生じた未清算の問題に関するものであるので、義務的団交事項に当たると解される。
 組合は、X2に対する慰謝料の支払も議題に掲げているが、X2は離職票作成に応じ、会社は「休業補償」を支払っていることから、両者の雇用契約関係は遅くとも22年10月末には終了している。その10月分の補償のあり方については、休業手当の支払が妥当か、解雇予告手当の支払が妥当かについて見解の相違があり、この点について団交で話し合う必要は認められるが、それを超えての慰謝料支払については義務的団交事項であるとは認められない。
2 その他の団交拒否事由について
 会社は、①雇用契約期間の満了によりX2との雇用関係は既に消滅しているから、団交の請求には理由がない、②会社の見解や主張を既に文書で回答しており、また、譲歩の可能性はまったくなく、交渉の余地がない、③組合がインターネットを通じて会社に対する誹謗中傷を繰り返しており、暴力的であるから交渉相手とすることができないなどと主張する。
 しかし、①に関しては、前記1で判断のとおり、X2と会社との間には労使関係の終了に際し未清算の問題があると解され、この限度において会社には団交に応じる義務があると考えられる。
 ②に関しては、労組法の予定する団交の方式は接見による話合い方式であり、書面の交換は主張内容を明確にするなど補充的な手段として用いることはともかく、接見方式に代替する意義、機能を有するものではない。仮に書面の交換による方法が許される場合があるとしても、接見が困難であると認められる特段の事情がある場合等に限られると解すべきところ、この点につき会社による具体的な疎明等はなされていない。
 ③に関しては、組合のホームページにおける記述は、会社の団交拒絶等の対応への不満や批判、対決姿勢の表明、あるいはいわゆる不快な書込みの程度にとどまっており、会社の名誉や信用を著しく毀損するおそれがあるということはできず、またその旨の会社による疎明もない。また、この記述を公開していることをもって、正常な団交を行うことができない程度の支障が生じると考えることはできない。
3 結論
 以上検討したとおり、X2に対する解雇予告手当の支払に関する事項は義務的団交事項であり、会社の主張する団交拒否の正当理由はいずれもないと判断されることから、団交申入れを拒否する会社の対応は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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