労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  兵庫県労委平成23年(不)第7号 
事件番号  兵庫県労委平成23年(不)第7号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成25年2月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社がその従業員である組合員X2に対し、①5日間の出勤停止を命じ、当該期間中の給与を減額したこと、②年次有給休暇の取得を拒否ないし制限したこと等、③組合活動を理由とする年休の取得は認めない旨を述べたこと、④上記①・②のほか3回にわたり給与を減額したこと、⑤昇給させなかったこと、⑥一人で清掃作業等に従事させたこと、⑦一部施設への立入りを禁止するなどして他の社員や取引先等から隔離したこと、及び会社が⑧団交に応じなかったこと、⑨団交申入れ等のために申立人組合の役員が会社に立ち入ったことに対し、抗議したこと、⑩X2に対し、組合から脱退すれば出向先を探すと述べたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 兵庫県労委は会社に対し、1 上記③の年休取得を認めない旨を述べて、X2を不利益に取り扱うことの禁止、2 上記⑧の団交の応諾、3 上記⑨及び⑩に係る組合運営への支配介入の禁止、④文書手交を命じるとともに、その他の申立てを却下(申立期間の徒過)又は棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社Yは、申立人X労働組合の組合員X2に対し、組合活動を理由とする年次有給休暇の取得は認めない旨を述べて、同人を不利益に取り扱ってはならない。
2 被申立人株式会社Yは、申立人X労働組合が、平成22年9月17日付け、平成23年8月1日付け、同月22日付け、同年9月29日付け及び同年11月13日付けで行った団体交渉の申入れに応じなければならない。
3 被申立人株式会社Yは、申立人X労働組合の組合員が会社に立ち入った場合は警察を呼んで告訴する旨や同組合の組合員X2に対し申立人からの脱退を条件に出向先を探す旨を述べて、同組合の運営に支配介入してはならない。
4 被申立人株式会社Yは、本命令書写し交付の日から7日以内に、下記文言を記載した文書を申立人X労働組合に手交しなければならない。
         記
              平成 年 月 日
 X労働組合
 執行委員長 X1 様
             株式会社Y
              代表取締役 Y1
 株式会社Yが、X労働組合に対して行った下記の行為は、労働組合法第7条第1号、第2号又は第3号に該当する不当労働行為であると、兵庫県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないことを誓約します。
         記
 1 X2氏に対して、組合活動を理由とする年次有給休暇の取得は認めない旨を述べたこと。
 2 X労働組合が、平成22年9月17日付け、平成23年8月1日付け、同月22日付け、同年9月29日付け及び同年11月13日付けで行った団体交渉の申入れに正当な理由なく応じなかったこと。
 3 X労働組合の組合員が会社に立ち入ったら警察を呼んで告訴する旨を述べたこと及びX2氏に対し組合からの脱退を条件に出向先を探す旨を述べたこと。

5 申立人X労働組合の平成21年8月及び同年12月の給与減額に関する申立て、同年5月29日の年次有給休暇の請求に関する申立て、同年1月23日、平成22年2月10日及び同年4月22日の移動指示に関する申立て並びに平成21年11月6日の出勤命令等に関する申立ては却下する。
6 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 出勤停止処分について
 被申立人会社が組合員X2に出勤停止を命じた理由は、同人に対し、作業場のシャッターを閉め忘れたことについての始末書及び弁明書の提出を命じたにもかかわらず、同人が応じないためであるとされ、会社が就業規則の規定に基づき出勤停止を命じたことには合理性が認められる。よって、当該出勤停止の命令はX2が組合員であることや組合活動を行ったことを決定的な理由として行われたものとまではいえない。
2 年次有給休暇の取得拒否について
 平成22年9月24日に会社の部長Y2がX2に対し、組合活動を理由とする年休の取得は認めない旨述べたことは、同人の組合活動を嫌悪して、これを制限することを企図したものということができ、同人は年休の請求を取り下げることとなったのであるから、労組法7条1号の不利益取扱いに当たると判断する。
 23年7月にX2が私用を理由に連続4日間の年休を請求したのに対し、会社の社長Y1が仕事の予定があるので取得日を変更するよう求めたこと等については、適法な時季変更権の行使であるかについて疑問なしとしないものの、会社が業務上の都合を考慮したことは無理からぬところであり、X2が組合員であること等を嫌悪したことによるものとはいえない。
3 給与の減額について
 会社が23年8月にX2の基本給を減額したこと等については、同人が過去に隠蔽行為をしたことや検品作業において多数の不良品を見逃したことが理由とされているところ、会社が同人の能力や成績を慎重に判断したものと考えるのが相当であり、不合理であるとまではいえない。また、X2がY1に対し、不良品かどうかは主観の問題である旨を述べたことは真摯な勤務態度とはいいがたく、会社がX2に対して低い評価をしたことには無理からぬところがある。よって、当該基本給の減額等はX2が組合員であること等を決定的な理由として行われたものであるとまではいえない。
4 X2を一人で清掃作業等に従事させたことについて
 会社においては、非組合員である他の社員も主たる業務以外の業務に従事していたことが認められるから、X2を清掃作業等に従事させたからといって直ちに同人を不利益に取り扱ったとはいえない。また、同人が行った作業は一人でできるものであって、グループを組む必要がなかったのであるし、会社が同人だけをそのような業務に従事させたと認めるに足りる疎明もない。よって、労組法7条1号の不利益取扱いには当たらない。
5 X2に対し、一部施設への立入りを禁止するなどしたことについて
 申立人組合は、会社がX2を事務所等に立入らせないようにしたことや同人を空調設備がなく誰もいない南の建屋に移動させたことは不利益取扱いに当たると主張するが、これらの措置が会社の不当労働行為によるものと認めるに足りる疎明はなく、不利益取扱いには当たらないと判断する。
6 団交拒否について
 組合が団交を申し入れた議題は、X2の年休の取得や給与減額等の問題であるところ、いずれも義務的団交事項に当たる。会社は、X2とならば交渉に応じるとか、現在の組合の担当者では話にならないとして団交に応じなかったものであるが、これらが団交を拒否する正当な理由に当たらないことはいうまでもない。
7 会社に立ち入った組合役員に対して抗議したこと等について
 Y1が、今後組合の組合員が会社に立ち入った場合は警察を呼んで告訴する旨を述べたことは、組合ないし組合員を威嚇するものといえ、労組法7条3号の支配介入に当たると判断する。
 Y1がX2に対し、組合から脱退するのであれば出向先を探してもよい旨述べたことについては、会社における唯一の組合員である同人が組合を脱退すれば、会社における組合活動が事実上不可能になるのであるから、会社における組合活動の弱体化を図るものといえ、支配介入に当たると判断する。 
掲載文献   

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