労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  大阪府労委平成23年(不)第29号 
事件番号  大阪府労委平成23年(不)第29号 
申立人  Y労働組合 
被申立人  株式会社Z 
命令年月日  平成25年2月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①ストライキを行った組合員Y2及びY4に対し、無断欠勤を続けているとして、出勤停止の懲戒処分を強行したこと、②同人らの社会保険遡及加入分の社会保険料の支払を議題とする組合の団交申入れを無視又は拒否した上で、同人らに対し社会保険料の請求書を直接送付し、また、同人らを相手にその支払を求める訴訟を提起したこと、③同じくストライキを行った組合員Y3を無断欠勤を続けているとして解雇したこと、④上記②の社会保険料の支払、上記③の解雇等の問題を議題とする団交申入れに応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、速やかに下記の文書を手交しなければならない。
                 記
                              年 月 日
  Y労働組合
  委員長 Y1 様
                            株式会社Z
                             代表取締役 Z1
  当社が、貴組合から平成22年11月24日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員Y2及びY4に対する懲戒処分について
 被申立人会社による本件懲戒処分の理由は、Y2らが平成22年5月7日から同月24日までの間、無断欠勤をしたことであるとされているところ、同月7日から12日までは就労せず、13日から同年6月24日までは22.5.13無期限ストにより就労しなかったことが認められる。同ストライキについては、Y2がブローチ加工業務への異動の指示を拒否して就労しなかったことを正当化するためのものであったとみざるを得ず、ストライキとしての正当性を有するとの申立人組合の主張は採用できない。また、懲戒処分の手続に不合理な点があるとまでは認められない。したがって、本件懲戒処分は、労組法7条1号及び3号の不当労働行為であるとはいえない。
2 社会保険料の支払を求める訴訟の提起について
 認定した事実によれば、ⅰ)会社は、A年金事務所からY2及びY4を含む外国人従業員を入社日に遡って社会保険に加入させるようにとの指導を受け、同人らを加入させ、労働者負担分を含む社会保険料を支払ったこと、ⅱ)その後会社が当該従業員らに労働者負担分の支払を請求したのに対し、これに応じなかったのはY2及びY4のみであったことが認められ、したがって、会社が訴訟を提起したのは支払に応じなかった者だけであったということができる。
 組合は、会社はY2らに対しては請求書送付からわずか2週間後に訴訟を提起する一方、非組合員に対しては2か月が経過しても訴訟を提起せず、支払を待っており、差別的取扱いである旨主張する。しかし、Y2らは請求書送付から訴訟提起までの期間だけでなく、その1か月以上前からストライキ、有給休暇等により出勤しておらず、また、同人らが会社に当該請求のことで何らかの連絡を取ったこともなかった。加えて、組合の団交申入れの内容によれば、組合は社会保険料の会社による全額負担を主張しているとみられるのであるから、会社がY2らに支払の意思がないものと判断したとしても不合理とまではいえない。そうすると、本人又は家族と連絡が取れる非組合員について支払を待ったことに比べ、組合員を特段不利益に取り扱ったとまでいうことはできない。
 以上のことからすると、本件訴訟提起が労組法1号及び3号の不当労働行為であるとはいえない。
3 組合員Y3の解雇について
 Y3の解雇の理由は、ⅰ)欠勤が多く、3か月間における欠勤率が30%を上回っていること、ⅱ)同人に対し、再三注意し、見守ったが、改善されなかったこととされている。
 組合は、解雇の理由とされた欠勤の多くがストライキを欠勤として扱ったものであり、本件解雇は正当な組合活動を理由とするものである旨主張する。しかし、解雇理由とされた欠勤日数のうち7日はストライキへの参加による欠勤であるものの、当該ストライキは前記1に記したストライキと同じ趣旨のもので正当な組合活動によるものとはいえない。
 また、会社がY3の欠勤率の高さを問題視したとしても社会通念上、不合理であるとはいえないし、解雇の手続をみても不自然であるとはいえない。
 以上のことからすると、本件解雇は、労組法1号及び3号の不当労働行為であるとはいえない。
4 団交申入れに対する対応について
 会社は、本件団交申入れについて、組合との面談による団交には一度も応じておらず、また、団交に応じなかった理由について、組合の団交に対する取組姿勢に真摯性や誠実性が全く認められず、会社に対し不当な威圧を加える手段として取り組んでいるとしか思えなかったためであるなどと主張しているが、いずれも正当な理由とはいえない。したがって、会社の本件団交申入れに対する対応は、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約633KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。