労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第71号・23年(不)第30号 
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第71号・23年(不)第30号 
申立人  X労働組合、X労働組合Y支部、X3(個人)、X2(同) 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成25年2月19日 
命令区分  一部救済(22不71)、全部救済(23不30) 
重要度   
事件概要   ①被申立人会社が、満61歳に達した組合員X3及び同X2に対し、継続雇用を認めなかったこと、②会社の工場長Y2がX2との面談において、継続雇用が認められないことを仄めかした発言を行ったこと、③会社が組合員の継続雇用を議題とする団交に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、1 X3を週30時間勤務する従業員として雇用したものとして取り扱うこと等、2 X2を週40時間勤務する従業員として雇用したものとして取り扱うこと等、3 誠実団交応諾、4 文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X3に対し、平成21年11月21日以降同24年11月13日までの間、週30時間勤務する従業員として雇用したものとして取り扱い、この期間に同人が就労していれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人X2に対し、平成23年4月21日以降、週40時間勤務する従業員として雇用したものとして取り扱い、同日から就労させるまでの間、同人が就労していれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人X労働組合及び同X労働組合Y支部が平成21年11月10日付け及び同22年9月28日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
4 被申立人は、申立人X労働組合及び同X労働組合Y支部に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
                 記
                             年 月 日
  X労働組合
   執行委員長 X1 様
  X労働組合Y支部
   執行委員長 X2 様
                           Y株式会社
                            代表取締役 Y1
  当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、(1)については労働組合法第7条第1号及び第3号に、(2)については同条第2号に、それぞれ該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
                 記
 (1)貴組合員X3氏及び同X2氏に対し、高年齢者を対象とする継続雇用を認めなかったこと。
 (2)貴組合が平成21年11月10日付け及び同22年9月28日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったこと。

5 申立人らのその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社が組合員X3及びX2を継続雇用しなかったことについて
 X3及びX2は、申立人組合の支部発足以来、支部の組合活動の中心的人物であったと解される。
 組合(支部を含む。)と会社との関係についてみると、昭和55年から平成16年までの間に、当委員会に対し、不当労働行為救済申立てが繰り返し行われてきたことが認められ、会社における労使関係は長期にわたり対立状況にあったといえる。そして、この過程で会社の支部組合員に対する対応には不適切な点がみられ、本件においては、組合嫌悪意思が推認され得る状況であったというのが相当である。
 会社の継続雇用規程によれば、会社は従業員の業務習熟度表、社員実態調査票、保有資格、役職経験、表彰実績及び懲戒実績を点数化し、その合計点により継続雇用の可否を判断していると解される。しかし、会社による査定の運用には杜撰な点があり、公平性や透明性の点で高い水準にあるとは到底認められず、恣意が入る危険性のある状態であったというのが相当である。
 X3に対する平成21年の査定結果について、組合及び会社の主張や非組合員に対する査定結果を勘案しながら検討すると、社員実態調査票の項目中、上司評価がDであった25項目のうち22項目については同人が組合員であること等を理由としてDとしたもので、本来は少なくともCとすべきであること、懲戒実績について正当な理由なく懲戒処分があったとして減点されていることなどが認められ、結局、合計点は6.05点とされるべきと判断される。
 したがって、会社が合計点数が0点に達していないとして、同人を継続雇用しなかったことは、組合員であることを理由とするものであるとともに、もって組合を弱体化させる支配介入に該当する。X2についても、同様である。
2 工場長Y2のX2に対する発言について
 Y2はX2との面談において、社員実態調査票の評価を開示し、評価に関する話をした際、継続雇用するかどうかは最終的には社長が判断することである旨述べたことが認められる。
 しかし、この発言はX2が組合員であることや組合活動に関連したものとみることはできない。また、継続雇用の可否は査定の点数により決まるのであるから、内容に正確性を欠いてはいるが、このことをもって当該発言が支配介入に当たるということはできない。
3 組合員の継続雇用を議題とする団交申入れへの対応について
 組合は会社からX3に対して継続雇用をしない旨の通知がなされたのを機に、平成21年11月、同人の継続雇用についての団交を申し入れたと解される。これに対して会社は、①組合は組合員X4に係る訴訟において会社の継続雇用規程が違法であると主張しているから、最終結審までは一切のコメントができない、②組合はX3に関して法的手段に訴える意思を表明しており、団交開催の意味をなさないなどとして、団交に応じない姿勢を示していたとみるのが相当である。
 しかし、組合が継続雇用規程について会社と異なる見解を有するなどしていたとしても、会社が団交においてX3の継続雇用について説明し、協議すべき義務を免れるとは解されない。また、団交と訴訟とでは、制度の目的及び手続が異なるのであるから、組合員が訴訟を提起する可能性が高いこと等をもって、団交に応じる義務を免れるとも解されない。
 また、会社は、22年9月になされたX3及びX2の継続雇用を議題とする団交の申入れに対し、団交を開催しても結局は司法判断に委ねるとの結論になるとか、決算事務で非常に多忙であるなどと回答しているが、これらのことも団交に応じない正当な理由になるものではない。
 以上のとおりであるから、会社は正当な理由なく本件団交申入れに応じなかったものと判断される。 
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