労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  タケエイ  
事件番号  都労委平成22年不第102号  
申立人  全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合、同タケエイ支部  
被申立人  株式会社タケエイ  
命令年月日  平成24年12月18日  
命令区分  一部救済  
重要度   
事件概要   平成22年9月24日、被申立人会社で大型トラック乗務員として勤務している組合員X3が石膏ボードを積んだトラックを運転し高速道路を走行していたところ、会社の社長及び人事総務部部長Y2の乗車する車がその後ろに付いた。同人らは、トラックの荷台の後部シートがめくれているのを目撃し、Y2が写真に撮るとともに、会社の配車係に連絡し、当該トラック乗務員にシートを確認して直させるよう指示した。配車係から電話で指示を受けたX3は、一般道路に降り、停車してシートを確認し、問題はなかったと報告した。
 本件は、会社が後日、X3に対し、①7日間の出勤停止処分を通知したこと、②出勤停止を終えた日以後、同人を運転業務から外し、場内作業を命じたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は会社に対し、1 X3が23年1月14日以降、運転業務に復帰したものとして取り扱うこと等、2 文書の交付・掲示、3 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人株式会社タケエイは、申立人全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合及び同全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合タケエイ支部の組合員X3が、平成23年1月14日以降、大型トラック乗務員としての社外での運転業務に復帰したものとして取り扱い、同人に対し、同日から社外業務に復帰するまでの間、同業務に従事した場合の賃金相当額と既支払賃金額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社の川崎リサイクルセンターの敷地内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
年 月 日
  全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合
  執行委員長 X1 殿
  同全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合タケエイ支部
  執行委員長 X2 殿
株式会社タケエイ
代表取締役 Y1
  当社が、貴組合の組合員X3氏に対し、平成22年10月14日に場内作業を命じて以降、長期間、大型トラック乗務員としての社外での運転業務に戻さなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
  (注:年月日は、文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員X3に対する出勤停止処分について
 申立人組合は、被申立人会社の懲戒処分通知書に記載された処分事由は実際には存在しないと主張する。しかし、会社が挙げる3つの処分事由に理由がないとはいえず、また、会社のX3に対する厳しい評価は、同人が配車係に速やかに報告しなかったり、会社による事情聴取の際、事実と異なる言動を行ったこと等から同人に不信感を抱いたことによると考えられ、同人が組合員であることや組合嫌悪の情の故であるとはいえない。
 また、組合は、会社の経営陣交替に伴い労務政策が組合敵視・排除の姿勢に転じたこと等から会社の不当労働行為意思が明らかであると主張するが、会社の部長Y2らの車が高速道路でX3のトラックと遭遇したのは偶然であり、また、会社の挙げる懲戒処分事由に理由がないとはいえないのであるから、組合の主張するような労使関係の状況等を加味して考えても、X3に対する出勤停止処分の真の理由が、同人が組合員であることや組合嫌悪の情であったとはいえない。
 さらに、当該出勤停止処分の手続が他の懲戒処分事例と特に異なっているような事情は窺われないし、処分内容が特に重いということもできない。
 以上のとおりであるから、X3に対する出勤停止処分が組合員であるが故の不利益取扱いや組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。
2 出勤停止処分後の業務変更について
 X3は、平成22年10月14日以降、場内作業を命じられ、本件結審時現在、運転業務には復帰していない。このように1年以上の長期間にわたって社外での運転業務に戻さない会社の措置は、異例であるといえる。
 会社は、業務変更は懲戒処分ではなく、また、X3の現在の賃金は正当なもので、不利益は生じていないとも主張する。しかし、業務変更によって同人の賃金は大幅に減少し、大きな経済的不利益が生じているといわざるを得ない。また、運転業務に就かせないことは精神的な不利益取扱いでもあるといえる。
 また、会社は、X3が当委員会において、22年9月24日の電話報告や同月29日の事情聴取等に虚偽報告はなかったと証言したことなどを同人を社外業務に戻さない理由としている。しかし、これは労組法7条4号に抵触するといわざるを得ず、会社がX3を社外業務に戻さないという不利益な扱いを続ける正当な理由と認めることはできない。
 さらに、X3は技量的に運転業務ができないとか、同人に運転業務をさせれば、Y2が写真撮影したのと同様のシート被覆を行う可能性があるという会社の主張は、採用することができず、その他X3を長期間にわたり運転業務に戻すことのできない合理的な理由は認められない。
 以上のとおりであるから、会社はX3が組合員として団交や不当労働行為救済申立てによって出勤停止処分等の是非を争っていることや、本件審査手続において会社の意に沿わない主張等を繰り返していること等を嫌悪して、同人を運転業務に戻さないことにより、経済的及び精神的不利益を与えているものといわざるを得ない。このような行為は、組合活動や不当労働行為救済申立て等を理由とした不利益取扱いに該当するとともに、従業員に対し、組合が団交等によって会社に要求等を行っても効果がないことを知らしめ、組合弱体化を図る支配介入にも該当する。  
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約408KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。