労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本電産ピジョン  
事件番号  都労委平成23年不第19号  
申立人  全日本金属情報機器労働組合、同東京地方本部、全日本金属情報機器労働組合サンキョー支部  
被申立人  日本電産ピジョン株式会社  
命令年月日  平成24年12月4日  
命令区分  棄却  
重要度   
事件概要   被申立人会社は、平成22年10月、申立人組合(3組合)に対し、親会社である申立外会社Zに23年3月末までに事業を譲渡して会社を解散すること、従業員のうち転籍を希望する者全員をZが引き受けること等を通知し、協議を申し入れた。その後、雇用の確保や退職金の上積み等について8回の団交が行われたが、合意に至らず、会社は事業譲渡を同年6月末まで延期した。そして、更に4回の団交が行われたが合意には至らず、同月30日、会社は事業譲渡を行って解散し、退職届(会社都合による退職)を提出しなかった組合員1名が解雇された。
 本件は、①上記の団交における会社の対応、②会社が組合員らに個別に転籍の意思確認をしたこと、③組合がストライキを予定していた日にZの入社説明会が実施されたこと、④会社が、退職の意思表示をしなかった者は解雇すると回答したことは不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 団交における被申立人会社の対応について
 申立人組合は、転籍については事前に充分協議し、合意を得て行うとの労使間の協定に会社が違反した旨主張する。しかし、当該協定が、事業譲渡に伴う譲渡先への転籍といった場合にまで組合の事前合意を要求する趣旨のものであるのか、疑義のあるところであり、会社が雇用の確保を優先し、組合との事前合意を優先しなかったとしても、そのことのみをもって不誠実な交渉に当たると断定することはできない。
 また、組合は、会社が組合の理解と合意を得る努力をせず、団交は形骸化・無力化されたという。しかし、会社は、8回の団交において、資料を提示して説明を行い、組合の要求の全てを受け入れることはなかったものの、退職付加給付金の基本給3か月分の支給を約するなど一定の譲歩を行った。さらに、事業譲渡の時期を延期して4回の団交を行い、転籍後の労働条件についての資料を提示するなどした。したがって、会社は、組合の理解と同意を得る努力を行ったものといえ、団交における対応が不誠実であったということはできない。
2 転籍の意思確認の実施について
 組合は、会社が23年6月10日に転籍の意思確認を行ったことは団交で合意し労働協約を締結するという組合の方針に対する支配介入に当たると主張する。しかし、事業譲渡の時期である23年6月末が迫っており、この時点での転籍の意思確認が不可欠であるとの会社の主張も無理からぬものがあること、また、前記1で判断したとおり、会社の団交における対応は不誠実とはいえないこと、そして、転籍の意思確認は全従業員について行われ、組合員らはそれぞれが意思表示又は意思確認の拒否をしたことを併せ考慮すると、会社が転籍の意思確認を行ったことが支配介入に当たるとはいえない。
3 ストライキに対する対応について
 23年6月17日の入社説明会開催については、ストライキへの参加をためらわせる強い要因となることが容易に想像でき、会社があえてストライキに合わせて入社説明会を開催させ、組合のストライキ権行使の妨害を図ったとの組合の主張も理解できないわけではない。しかし、会社は組合の抗議を受け、同日以前に、同日の入社説明会に出席しない者のための説明会を同月21日に設定していたのであるから、ストライキに参加しても説明会への参加が可能であることはストライキの実施前に明らかになっていた。したがって、会社がストライキを妨害するためにあえて同日に入社説明会を設定したものとまではいえず、ストライキに対する会社の対応が支配介入に当たるとはいえない。
4 退職の意思表示をしなかった者は解雇するとの回答について
 組合は、この回答が退職の意思表示をしていなかった組合員に深刻な不安を与えたことが不利益取扱いに該当すると主張する。しかし、会社は、組合員・非組合員の区別なく適用される措置について説明しただけであり、組合員に何らかの不利益を与える意図でその回答をしたと評価するのは到底困難である。会社がその後も組合員らに意思表示を認め、それにより採用となった組合員がいたことからしても、不利益取扱いに当たるということはできない。  
掲載文献   

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