労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  株式会社群馬経済新聞社  
事件番号  群労委平成24年(不)第1号  
申立人  群馬合同労働組合  
被申立人  株式会社群馬経済新聞社  
命令年月日  平成24年12月18日  
命令区分  一部救済  
重要度   
事件概要   ①被申立人会社の社長が組合員X3に対し、「お前、何で組合に入った」などと発言したこと等、②申立人組合及びその分会が会社に対し、団交を開催の上、当時の就業規則(以下「旧就業規則」)及び新規策定中の就業規則の案並びにこれらの附属諸規程を全従業員に開示するよう要求したことに対して、新就業規則案の開示の時期及び方法について文書回答するのみであったこと、③会社の専務が組合の分会長X2との面談において、同人に新就業規則案及び旧就業規則を渡して「就業規則を社外に持ち出したら懲戒」などと発言したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 群馬県労委は会社に対し、1 組合員に対し組合からの脱退勧奨を行うこと等により組合の組織、運営に支配介入することの禁止、2 文書交付、3 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、次の行為により申立人組合の組織、運営に支配介入してはならない。
(1)申立人組合の群馬経済新聞社分会所属の組合員に対し、同組合からの脱退勧奨を行うこと。
(2)申立人組合に対し、就業規則及び附属諸規程の開示を拒むこと。
(3)申立人組合の群馬経済新聞社分会所属の組合員に対し、同組合に就業規則を渡さないように威迫すること。
2 被申立人は、申立人組合に対し、次の文書を速やかに交付しなければならない。
年 月 日
  群馬合同労働組合
  執行委員長 X1 様
株式会社群馬経済新聞社
代表取締役 Y1
  当社が行った下記の行為は、群馬県労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を行わないよう十分留意します。
  1 平成23年12月5日、私が貴組合の組合員X3に対し、同組合からの脱退勧奨を行ったこと。
  2 平成23年12月1日付け貴組合からの要求に対し、新規策定中の就業規則並びに当時の就業規則及び附属諸規程の開示を拒んだこと。
  3 平成23年12月28日、当社専務取締役が貴組合の組合員X2に対し、貴組合に就業規則を渡さないように威迫したこと。

3 その余の申立てを棄却する。
4 被申立人は、第2項に命ずるところを履行したときは、遅滞なく当委員会に文書で報告しなければならない。  
判断の要旨  1 組合員X2の労働者性について
 X2は、被申立人会社に在職中の平成20年10月に肺がん発症が判明し、退職後の21年7月に労災認定された肺がんに対する補償について、22年8月から23年5月までの間、会社と交渉するも合意には至らなかったことからすれば、同人と会社との間には在職中の事実を原因とする未精算の紛争が存在していたと認められる。また、申立人組合は23年8月に団交を申し入れているから、同人の在職中の事実を原因とする未精算の問題が顕在化してから合理的な期間内に団交の申入れがされたことが認められる。
 以上のとおりであるから、X2は労組法7条2号の「使用者が雇用する労働者」に該当し、アスベスト被害に係る補償等に関し、組合は会社との団交の当事者になり得るから、同人が会社に在籍する労働者でないことは、本件団交申入れを拒否する正当な理由とはなり得ない。
2 組合の要求事項の義務的団交事項への該当の有無について
 組合が団交事項として掲げた会社に対する要求事項のうち、X2に謝罪すること及び会社の補償についての考え方を明らかにすることは、退職前の雇用関係に関連して発症した健康被害に関するものであり、その他の事項も含め、いずれも安全衛生や災害補償に関する事項に該当し、会社に処分可能なものと認められるから、X2についての退職前の会社との雇用関係に関するものである限り、義務的団交事項に当たると解すべきである。
 会社は、既に労災申請に協力し、X2との交渉との中で肺がんに係る補償を申し出ていたのだから、残された課題は補償額の調整のみであり、実施済みであるX2への謝罪以外の団交事項は、すべて補償額の調整を目的とした事項であって労働条件を巡る紛争に関するものではないので、義務的団交事項に該当しない旨主張する。しかし、わが国では、労働組合が組合員に係る個別労働紛争について使用者と苦情処理的な交渉をし、その解決を図ることも、団交の1つの機能となっており、本件において、X2に係る補償等に関し組合が団交を申し入れることは組合の正当な活動であって、仮に補償額の調整を目的としたものであったとしても、組合の要求事項は上記のとおり義務的団交事項であるから、会社は本件団交事項について団交をすべき義務を免れないものというべきである。  
掲載文献   

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