労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本印刷  
事件番号  都労委平成22年(不)第43号  
申立人  労組ジーケーアイ  
被申立人  日本印刷株式会社  
命令年月日  平成24年11月20日  
命令区分  一部救済  
重要度   
事件概要   被申立人会社において派遣社員として就労していたX1は、平成21年2月、契約期間を同年4月1日からの1年間とする準社員労働契約を会社と締結した。その後、申立人組合の組合員であることを公然化したX1は、準社員の過半数代表者選挙に立候補するなどしていたところ、22年2月25日、会社から翌日以降の自宅待機命令及び4月以降の労働契約の更新拒否を通告された。この間、組合と会社は21年8月以降、団交を2回開催し、組合は同年12月1日、3回目の団交を会社に申し入れたが、団交は開催されなかった。
 本件は、①会社が組合員X1の労働契約更新を拒否したこと、②組合の上記団交申入れに会社が応じなかったこと、③過半数代表者選挙の選出手続における会社の対応、④会社がX1に対して自宅待機命令を発したこと等が不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は会社に対し、1 X1に対する雇止めをなかったものとすること、2 文書交付、3 履行報告を命じ、その余の申立てを却下又は棄却した。  
命令主文  1 被申立人日本印刷株式会社は、申立人労組ジーケーアイの組合員X1に対する平成22年3月31日付雇止めをなかったものとし、23年3月31日までの賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
年 月 日
   労組ジーケーアイ
   委員長 X1 殿
日本印刷株式会社
代表取締役 Y1
   当社が、貴組合の組合員であるX1氏に対して、平成22年4月以降の準社員労働契約を提出する意思がない旨を通告したこと及び自宅待機命令を行ったこと、また、貴組合から申し入れられた団体交渉を21年12月7日付回答書によりこれに応じなかったは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないように留意します。
    (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 派遣社員の直接雇用化方針決定について、被申立人会社が申立人組合の関与を認めて、これを編集部派遣社員に説明しなかったことが不当労働行為に当たるとの申立てを却下する。
5 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員X1の雇止めについて
 被申立人会社は、X1の契約満了の約1か月前に至り、突如として、同人の遅刻1回及び遅刻による全体朝礼欠席2回を主な理由の1つとして、同人に対し、雇止めを通告した。しかし、これらの遅刻はいずれも30分程度のもので、出社後直ちに上長に報告しており、会社の業務への支障が生じたと認めるに足る疎明はない。また、朝礼欠席を含め懲戒処分には付されず、注意を受けるにとどまっていたことが認められる。さらに、会社が同人に注意する際、契約更新の当否に影響を及ぼし得る旨の指摘を行って問題意識の共有を図った事情も認められない。したがって、X1の上記行為が契約更新拒否を許容し得る程度に重大なものであったと評価することはできない。
 会社は、X1が準社員等就業規則に違反して、会社の許可なく事業所内において印刷物を配布したことも考慮した旨主張する。しかし、当該配布行為はその態様等からみて、形式的には就業規則に違反しているとしても、正当な組合活動の範囲を逸脱したものとはいえない。
 以上のような事情と当時の会社における労使関係を併せ考えると、本件雇止めは、活発な活動により会社と厳しく対立していた組合における社内で唯一の組合員であり、雇止め時点において組合委員長であったX1の組合員としての存在及び組合活動を嫌悪して行われた不利益取扱いに当たるとともに、社内における組合の活動を抑圧ないし不能ならしめようとした支配介入にも該当する。
2 団交申入れに対する対応について
 会社は、第3回団交の申入れに対する回答書において、組合のブログ記事が21年5月7日締結の協定書に違反しないという組合見解を書面で示すよう求め、それを見た上で対応を検討する旨回答した。この回答書に団交を拒否する旨の明示的な記載はないが、要するに、協定書違反について会社が望む対応を組合が行わない限り、団交には応じないという意向を表明しているに等しいものといわざるを得ない。
 また、会社は、本件団交申入れの段階で、会社が主張する協定違反状態が存在するか否かについての労使双方の見解が分かれていることについて認識していたことが認められる。そうすると、協定違反状態の取扱いについては、団交の席上で協議により解決を図ることも十分に考えられる。そして、組合が、期間満了が迫っているX1の準社員労働契約の更新の問題について団交を求めていたことも考慮すると、会社が上記のような姿勢をとることは、X1の契約期間満了問題という差し迫った事項に関する団交の開催を事実上拒否したものといえる。
 以上のことから、協定書違反の是正を団交の実施条件とすることに合理的理由があるとは認められず、会社の上記回答は正当な理由のない団交の拒否に当たる。
3 過半数代表者選挙について
 会社は、正社員就業規則変更については正社員の、準社員就業規則変更については準社員のそれぞれ過半数代表者を選出すればよいと誤信し、三六協定締結に係る過半数代表者も正社員のみを対象としてもかまわないとして行ったものと解される。そうであれば、労働基準法との関係で問題があったとしても、会社がX1を選出手続から排除することになるとの認識の下にあえて不適正な手続を行ったとまで認めることはできない。したがって、かかる会社の対応が組合に対する支配介入に当たるとは認められない。
4 X1に対する自宅待機命令について
 X1に対する自宅待機命令は、会社が主張するように、賃金を保証しつつ再就職活動が行えるよう同人の利益を図るためになされたものとみることは到底できず、同人が会社に出社しない状態を作出する目的でなされたものとみざるを得ない。そして、前記のとおり、X1の雇止めは不当労働行為に該当するものであることに加え、当該自宅待機命令は、会社の派遣労働者受入れに関して同人が行った公益通報についての東京労働局の処置が問題になっており、かつ、三六協定締結に係る過半数代表者選挙について組合が活発な活動を行っていた時期になされたものであることが認められる。
 以上のことから、本件自宅待機命令は、これまで活発な組合活動を行ってきたX1を契約期間満了を待たずに会社から排除することにより、組合の活動を弱体化するためになされた支配介入に該当する。  
掲載文献   

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