労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  郵便局  
事件番号  広労委平成23年(不)第2号  
申立人  郵政産業労働者ユニオン中国地方本部、郵政産業労働者ユニオン呉支部、X2(個人)  
被申立人  日本郵便株式会社、同中国支社、同広島東郵便局、同呉郵便局  
命令年月日  平成24年11月30日  
命令区分  棄却、却下  
重要度   
事件概要   被申立人会社らが、申立人郵政産業労働者ユニオン呉支部(以下「組合支部」)の執行委員であった申立人X2に対し、平成23年4月1日付けで呉郵便局から広島東郵便局への異動を命じたことは不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 広島県労委は、被申立人日本郵便株式会社(以下「会社」)に対する申立てを棄却し、会社以外の被申立人に対する申立てを却下した。  
命令主文  1 申立人らの被申立人日本郵便株式会社に対する申立てを棄却する。
2 申立人らの被申立人日本郵便株式会社中国支社、同広島東郵便局及び同呉郵便局に対する申立てをいずれも却下する。  
判断の要旨  1 申立人X2に対する異動命令について
(1)本件異動命令の不利益性
 本件異動によりX2の業務内容や役職に変更はない。通勤時間については片道45分程度増加したものと認められるが、他と比べ特段異なった取扱いがなされたものとは認められない。また、同人の父親に対する介護について著しい不利益が生じたとまではいえない。
 組合活動に関しては、X2を除く会社所属の他の組合員には執行委員を務めるほどの経験や力量を有する者がいなかったことから、組合役員が不在となり、X2及び組合支部の日常の組合活動に一定程度の影響が生じるなど、不利益が生じていると認められる。
(2)本件異動命令の業務上の必要性
 会社は、監督官庁から業務改善命令等を受け、10年以上異動のない社員に対して人事異動を実施するという内容の取組みを行っていたのであり、会社の経営上の判断に基づくものとして、その合理性を否定する理由はなく、これに則した人事異動を行う必要が生じていたといえる。本件異動命令が発令された時点において、X2はこの方針に基づく異動対象社員に該当し、異動できない理由があると会社が判断した社員を除いて最後の対象社員になっていたことから、本件異動命令については業務上の必要性があったことが認められる。
(3)本件異動命令の合理性
 異動に際しての打診の有無や本人の希望の配慮等に関し、本件異動命令が他と比べ差別的な取扱いであるとは認められず、会社の対応が著しく配慮を欠き、不合理であるとまではいえない。また、会社が広島東郵便局を異動先として選定した理由には合理性が認められる。
(4)本件異動命令とパワハラ交渉との関係
 申立人組合らは、本件異動命令は、X2がA郵便局長のパワハラに関する事件について組合支部を代表して会社と交渉していた最中に発令されたものであり、パワハラ交渉を頓挫させる目的があったと主張する。
 しかし、会社は本件人事異動の内命までの間に、パワハラ事件について2回にわたり組合支部と交渉を行い、その後もA郵便局長に対し指導を行うなど相応の対応をしていたものと認められる。そして、第2回交渉から内命までの間、組合支部が依然としてパワハラ交渉を継続する意思をもっていたことを会社が認識していたと認めることは困難である。さらに、内命後、組合がパワハラ事件を特に重要な問題としてとり上げたというような事情は認められない。
(5)不当労働行為意思の存否
 本件異動命令に至るまでの労使関係については、パワハラ事件が生じるまでは、特に重要な問題で対立していたというような事情は認められない。また、会社は、X2が組合支部において一定の役割を担っていたことは把握していたと推認されるが、同人を異動させた場合にどのような影響が生じるかについてまで認識していたことを認めるに足る疎明はない。さらに、組合らから会社に対し、広島東郵便局がどの支部の範囲であるかの通知等もなされていなかったことが認められる。
 以上のことから、本件異動命令は、X2の異動が組合支部に及ぼす影響や組合支部の範囲を考慮することなく行われたものと認められる。
(6)結論
 以上を総合すると、本件異動命令は、10年問題という業務上の必要性に基づくもので、その人選過程等においても不合理な点は認められず、会社の不当労働行為意思に基づいて行われたものともいえないため、労組法7条1号の不当労働行為には該当しない。また、本件異動命令は、組合支部の組合活動に一定の影響を及ぼしたことは否定できないものの、それは主に組合内部の問題等によって生じたものであると認められ、加えて、上記のとおり本件異動命令は反組合的な意思に基づいて行われたものとはいえないから、同条3号の不当労働行為にも該当しない。
2 被申立人中国支社等の被申立人適格について
 中国支社等は法人たる会社の部分的な組織にすぎず、不当労働行為救済命令の名宛人である法律上独立した権利義務の帰属主体とはなり得ないものと判断するのが相当であるから、被申立人適格を認めることはできない。  
掲載文献   

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