労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  兵庫県労委平成23年(不)第5号  
事件番号  兵庫県労委平成23年(不)第5号  
申立人  X労働組合  
被申立人  学校法人Y  
命令年月日  平成24年11月8日  
命令区分  棄却  
重要度   
事件概要   被申立人法人が平成21年度及び22年度の一時金に関する団交において、①年間支給月数を削減する具体的根拠や裏付けとなる資料を提示して十分な説明を行わなかったこと、②「団交委員会」に交渉権限を委任して交渉したこと、③団交の席上、理事長が携帯電話に出て通話したほか、団交を打ち切ろうとする発言をしたこと、④交渉妥結前に両年度の一時金を暫定支給したこと、⑤交渉妥結前に一時金の支給通知をパブリックフォルダ(学内電子掲示板)に掲示したこと、⑥大学組合速報の内容について抗議したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 兵庫県労委は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 団交における被申立人法人の対応について
 法人は、当委員会が申立人組合らの申請に基づき行ったあっせんのあっせん案を受諾する前までは、団交において一時金削減の理由及び削減月数の根拠について十分に説明したとはいい難い。しかし、あっせん案受諾後の団交では、財務状況が厳しいことについて詳細な資料を示して一定の説明を行ったといえる。また、法人の収入の大半が学生納付金及び補助金であることからすれば、一時金削減の理由として社会情勢を挙げて説明し、社会情勢を考慮するに当たり人事院勧告を参考にしたことは不合理とはいえない。一方、組合の要求への対応についてみると、理事長懇談会や財政説明会を開催したり、役員報酬規程を開示するなどしている。さらに、あっせん後に組合の要求を受けて年間支給月数の再提案を行うなどしており、自らの提案に固執するのではなく、譲歩案や対案を示して合意に向け努力したといえる。これらに加え、全ての団交に理事長が出席していることなどからすれば、法人の対応は不誠実であるとまではいえない。
2 「団交委員会」について
 法人が理事会において任命された団交委員により構成される「団交委員会」に交渉権限を委任していることは明らかであり、全ての団交に理事長が出席していること、組合は同委員会の存在に異議を唱えながらも団交に応じていること等を併せ考えると、法人の対応が不誠実団交に当たるとはいえない。
3 理事長の言動について
 団交の席上、理事長が携帯電話に出て通話した際、組合は抗議せず、短時間の中断を除いて団交は支障なく進行したことが認められる。また、団交を打ち切ろうとする理事長の発言は、団交の終了予定時刻が近づいた頃に議論が繰返しになっていることを理由として行われたもので、組合はこの理由により終了することを争わなかったことが認められる。以上のとおりであるから、理事長の上記の言動は団交拒否ないし不誠実団交に当たるとはいえない。
4 一時金の暫定支給について
 法人が団交における妥結を待つことなく、各期の一時金を暫定支給したことは例年と同じ取扱いであり、加えて、一般に一時金は生活補填的な意味をももつことを併せ考えると、例年どおりの支給日に暫定支給することは不合理ではない。また、法人は、暫定支給に際し、今回は暫定支給であり、最終的な年間支給月数は団交を行って決定し、最終確定した後に再度通知する旨、パブリックフォルダに掲示している。これらのことからすれば、上記の暫定支給は、組合の団体交渉権を否認するものとはいえず、支配介入に当たるとまではいえない。
5 パブリックフォルダへの文書掲示について
 掲示の内容をみると、最終的な年間支給月数は団交を行って決定することが述べられており、実際、法人はその後も年間支給月数に関する団交に応じていることが認められるから、上記の掲示は組合の存在を否認ないし組合の弱体化を図るものとは認められない。
6 組合速報に対する抗議について
 法人の抗議文をみると、全体として、あっせんの経緯及びあっせん案の解釈について理事会の認識が組合と異なることを指摘したものであり、組合の内部問題にかかわる事項や組合ないし組合員に対する威嚇、利益誘導等を内容とするものではなかったといえる。したがって、上記の抗議は、組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。  
掲載文献   

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