労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  ロジテムトランスポート  
事件番号  千労委平成23年(不)第5号  
申立人  全日本建設交運一般労働組合千葉県本部千葉合同支部、同ロジテムトランスポート分会  
被申立人  ロジテムトランスポート株式会社  
命令年月日  平成24年11月12日  
命令区分  一部救済  
重要度   
事件概要   被申立人会社が①組合員らに対し、「業務指示書」等の書面を多発するなどの行為により、組合活動を圧迫していること、②申立人組合との団交に誠実に応じず、チェックオフ等に関する交渉が進展していないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 千葉県労委は会社に対し、1 服務指導の趣旨が不明確な書面を組合員に対して発出することによる組合活動への支配介入の禁止、2 団交における誠実な対応、3 文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、服務指導の趣旨が不明確な書面を申立人組合員に対して発出することにより、申立人の労働組合活動に支配介入してはならない。
2 被申立人は、チェックオフの実施及び有給休暇を取得しやすい環境をつくることに関する申立人との団体交渉において、回答の理由や根拠を具体的に示すなどして申立人の理解を得るべく誠実に対応しなければならない。
3 被申立人は、本命令書受領の日から14日以内に、下記内容の文書を申立人に交付し、かつ、縦2メートル以上、横1.5メートル以上の白紙に、紙面いっぱいに下記内容を黒書し、これを被申立人会社本店の従業員の見やすい場所に、10日間以上掲示しなければならない。
  全日本建設交運一般労働組合
  千葉県本部千葉合同支部
  執行委員長 X1 様

  全日本建設交運一般労働組合
  千葉県本部千葉合同支部
  ロジテムトランスポート分会
  分会長 X2 様

   年  月  日
   (注:年月日は交付又は掲示の日を記載すること。)
ロジテムトランスポート株式会社
代表取締役 Y1
   当社が行った下記の行為は、千葉県労働委員会において労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような不当労働行為を繰り返さないようにします。
  1 貴組合の組合員に対し、以下の行為を行ったこと。
  (1)36協定の閲覧を求めた組合員に対し、閲覧を求める立場と趣旨を問う「指示書」を発出したこと。
  (2)上記(1)のほか、当社総務課長兼本店業務課長Y2に対する書面の持参、有給休暇の申請用紙の交付要求及び当社の複写機を用いた車両の運行記録の複写等の組合員の行為に対し、「業務指示書」及び「通知書」を発出したこと。
  (3)上記(1)及び(2)の書面を組合員の自宅に郵送したこと。
  2 貴組合とのチェックオフの実施及び有給休暇を取得しやすい環境をつくることに関する団体交渉において、不確実な対応を行ったこと。

4 申立人のその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 36協定の開示を求めた組合員らに対し、その趣旨を問う「指示書」を発出したことについて
 会社は、組合員であるか否かを問わず、従業員に対し、36協定を開示しなければならないのであり、組合員としての立場であれば就業時間内には開示しないという意図の下に、開示を求める趣旨を組合員に問うことに合理性 はない。また、開示要求によって会社の業務に支障が生じた具体的な事実の疎明はなく、当該要求が業務妨害であるとの主張に理由はない。さらに、会社は、仮に組合員以外の従業員が開示請求をした場合には応じる旨証言していることから、同協定の締結について申立人組合の関与を排除する意思の下、組合員に対しては開示しないという独自の主張により、開示を行わなかったものと推認される。
 以上のとおりであるから、本件指示書の発出には合理性がないというべきであり、これらの発出により組合員を動揺させ、36協定の締結への組合の関与を排除することにより、組合活動をけん制しようとするものといわざるを得ない。したがって、会社の行為は労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
2 組合員らの行為に対するその他の「業務指示書」等の書面の発出について
 会社は、組合員らが①団交に関する書面を会社の部長等に渡しにいったこと、②有給休暇の申請用紙の交付を要求したこと、③会社の複写機を使用して車両の運行記録を複写したことなどについて、これらは就業規則の服務規律に関する条項に違反する行為であるとして、弁明書の提出を求める業務指示書を計11通発出した。
 しかし、当該業務指示書等は、組合員らの行動に関し、その多くは組合活動に関連するものであると会社が判断した場合において会社の業務に支障が生じないような軽微なものであっても発出されているものであって合理性が認められず、従業員への服務指導としての効果を期待して行ったものとはいえない。また、これらの書面が、組合活動の要素を排除しなければ従業員からの労働条件等に関する質問や要求に一切応じないという態度を表すものといえること等も考え合わせれば、服務指導の名目で組合員を動揺させ、その行動に制限を加えて組合活動を萎縮させようとする意図が窺われる。したがって、当該業務指示書等の発出は不適切かつ過剰な対応であり、後記4に記載の団交における不誠実な対応をも併せて考えれば、組合活動をけん制する意図により行われ、団結権を侵害するものといわざるを得ない。
3 業務指示書等を組合員らの自宅に郵送したことについて
 多くは組合活動に関連している服務指導の書面を組合員であるが故に自宅に郵送したことは、会社が組合員らの私生活の領域にまで踏み込んで服務指導の名目で組合嫌悪の情を示すものであり、組合員を精神的に圧迫する不当な行為であるといえ、組合活動を阻害する要因となるものであるから、書面発出の事情や団交における不誠実な対応を併せ考えれば、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
4 団交における会社の対応について
 会社は、第1回団交においてチェックオフの実施に前向きとも受け取れる回答をした後、第3回団交まで結論を先延ばしにしながら、「業務上必要と認められない」との理由だけ述べてチェックオフを拒んだ。このような対応は、いたずらに結論を先延ばしにした上、組合の理解や納得を得るべく説明したともいえず不誠実であると認められるから、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
 会社は、第1回団交において、有給休暇を取得しやすい環境づくりについての組合の要求を受け、有休申請用紙を用意する旨回答し、第3回団交においても平成23年5月中に作成する旨回答したが、第4回団交において、有給休暇の申請は従来どおり、事前に口頭で申請するよう回答した。このような対応は、自ら提案した有休申請用紙の作成について真摯に検討した様子が窺われず、しかも撤回した経緯や理由について組合への説明が不十分であるから、誠実であったとはいえない。  
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第62号 棄却 平成26年4月2日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約582KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。