概要情報
事件名 |
健創庵
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事件番号 |
奈労委平成23年(不)第4号
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申立人 |
奈良さわやかユニオン
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被申立人 |
株式会社健創庵
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命令年月日 |
平成24年9月27日
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命令区分 |
一部救済
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重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社との業務委託契約に基づき就労していたX2が申立人組合に加入し、組合が同人の雇用問題について会社に団交を申し入れたところ、会社は第1回団交の開催後、同人に対し、契約の更新拒否を告知した。本件は、会社が組合員X2を雇止めとしたことは不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
奈良県労委は会社に対し、①X2の雇止めがなかったものとして取り扱うこと等、②文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合員X2に対する平成23年6月20日付け雇止めがなかったものとして取り扱うとともに、本件雇止めになる前の1年間の賃金額に年6%を乗じて得た金額を付加した金額を支払わなければならない。
2 被申立人は、本命令書(写)受領後速やかに、下記の文書を申立人に交付しなければならない。
記
平成 年 月 日
奈良さわやかユニオン
執行委員長 X1 殿
株式会社 健創庵
代表取締役 Y1
当社が、貴組合の組合員を雇止めしたことは、奈良県労働委員会において、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認められました。よって、貴組合に対し、今後はこのような行為を一切行わないことを約束します。
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判断の要旨 |
1 組合員X2の労働者性について
被申立人会社は、組合員X2との間で締結された「業務委託書」に「乙は・・・労働者でないことを確認する。従って、・・・労働者としての保障を甲に求めることが出来ない。」(第7条)、「乙は独立した事業主として、乙の所得その他必要事項を税務署等の官公署に対して申告しなければならない。」(第8条)と定められていること等を理由に、同人は労働者性を有しないと主張する。しかし、そのように定められてはいるが、X2は①会社の業務の遂行に不可欠な労働力として、事業組織に組み込まれていたこと、②労務の内容を一方的・定型的に決められていたこと、③労働の対価として報酬を受けていたこと、④業務依頼の諾否の自由も制約を受けていたこと、⑤指揮監督を受け、時間的・場所的拘束を受けていたこと、⑥事業者性があるとはいえないことから、会社との関係において、労組法上の労働者であると認めるのが相当である。労組法上の労働者と判断した場合、本件業務委託契約は、1年の期間を定めた有期労働契約と認められる。
2 X2の雇止めについて
(1)本件雇止めの合理性の有無
会社は、雇止めの理由について、X2の業務態度に問題があった旨主張する。しかし、確かに同人の業務態度に問題があったことは認められるものの、同人の問題行為によって会社が業績不振に陥ったと認めることはできないし、当該問題行為の後にも業務委託契約を更新していること、同人の行為によって生じたとされている女性従業員の退職問題の解決には同人も協力していることなどから、本件雇止めには必要性を認めることができない。
(2)本件雇止め時の労使事情
会社は、「業務委託書」の規定に従い契約期間の終了日より2か月以上前となる平成23年4月10日頃に雇止めの告知をしたにすぎない旨主張する。
しかし、会社は、同年3月9日時点ではX2に仕事の継続を希望させており、今後の継続に期待を持たせながら、その1か月後に雇止めの通知をしているところ、この間における同人の業務態度についての問題点については主張していない。そうすると、この間の3月29日の第1回団交において、申立人組合が未払賃金、慰謝料及び退職金の支払を要求したことが会社の心境の変化を決定づける原因になったと考えられる。
また、会社は、いまだ雇用期間中である同年6月18日付けでX2に対し、契約終了の通知を行うとともに、私物の即時撤去を求め、応じない場合には刑事告訴を行うことも通知した。このような行為は、会社がX2に対して強い嫌悪の情をもっていたことの表れとみるのが相当である。
(3)結論
以上のような検討の結果、本件雇止めについて会社に不当労働行為意思があったと認めざるを得ない。
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掲載文献 |
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