労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  パナソニックエコシステムズ  
事件番号  愛労委平成21年(不)第2号  
申立人  愛知連帯ユニオン  
被申立人  パナソニックエコシステムズ株式会社  
命令年月日  平成24年9月24日  
命令区分  棄却  
重要度   
事件概要   被申立人会社が①申立外会社Aから受け入れていた組合員である派遣労働者X2の直接雇用に関する団交に応じなかったこと、②申立外会社Bから受け入れていた組合員である派遣労働者X3の直接雇用に関する団交に応じなかったこと、③X3の派遣就労の終了から約1年後に申入れのあった同人の労働災害に関する団交に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 愛知県労委は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人会社の使用者性について
(1)基本的に使用者性が認められるか否か
 組合員X2に関して、会社は、派遣受入期間の制限を超えて同人の労務の提供を受けていたものの、同人を会社の社員と同様に扱っていたとはいえず、申立外会社Aによる採用及び賃金決定への関与、雇用契約の打切りへの関与、裁量による業務内容の拡大及び労働時間の管理等の各点においても、派遣先の立場を超えて雇用主と同視しうる程度に具体的に支配、決定できる地位にあったとまでは認められない。
 また、これらのことを合わせ総合的に判断しても、会社がX2の労働関係について雇用主と同視できる程度に具体的に支配、決定できる地位にあったとまではいえない。
 したがって、X2について、会社が労組法上の使用者に当たるとはいえない。
 X3に関しても、同様に、会社が労組法上の使用者に当たるとはいえない。
(2)直接雇用に関する団交に応じるべき使用者と認められるか否か
 X2らについて基本的に会社の使用者性が認められない場合にあっても、交渉事項によっては会社が団交に応じるべき使用者と認められる場合もあると考えられる。直接雇用という採用に関する事項は原則として団交になじむものではないが、近い将来において雇用関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存するなどの事情があれば、直接雇用に関する事項も義務的団体交渉事項となり、使用者として団交に応じる義務が生じる場合もあると考えられる。
 しかし、労働者派遣法40条の4で規定されている派遣先による派遣労働者への雇用契約の申込義務の発生の有無やそれ以外の理由によって当時、会社がX2を直接雇用する可能性、会社の言動により同人らが会社に直接雇用されるとの期待を抱くことの可能性についてみても、近い将来において会社とX2らとの間に雇用関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存するということはできない。
(3)労働災害に関する団交についての使用者性
 会社の工場内で発生した組合員X3の労災に関しての危険防止措置等を交渉事項とする団交については、会社は労組法上の使用者に当たるといえる。団交申入れが労働者派遣終了後に派遣先に対してなされた場合であっても、①当該紛争が派遣就労と密接に関連して発生したこと、②派遣先において当該紛争を処理することが可能かつ適切であること、③団交申入れが派遣終了後、社会通念上合理的といえる期間内にされること、との要件が満たされれば、派遣先はなお「使用者」として団交に応じる義務があると解するのが相当である。
 本件についてはこれらの要件が満たされているから、本件労災に関しての危険防止措置等という交渉事項については会社は労組法上の使用者に当たると認められる。
2 労働災害に関する団交の申入れに対する会社の対応について
 会社は、団交拒否の正当理由として、団交申入れのタイミングからしてX3の労働条件等の話合いを目的とするものとは考えがたいと主張する。この点についてみると、申立人組合は労災発生を認識した時点で直ちに団交申入れを行っておらず、この時点では本件労災を特段問題視していなかったといえる。また、X3のけがの程度については、医師から仕事の制限を受けておらず、通院も1回だけであったこと等からすると、軽かったものとみるのが相当である。さらに、本件労災発生について、X3自身にも一定程度責任があったものと認められる。そうすると、組合があえて本件労災について会社に対し通院慰謝料相当額の損害賠償に関する団交の開催を求めること自体に不自然さを免れない。
 組合は当該団交申入れ時点において既に直接雇用に関する団交申入れに会社が応じることを求めて本件救済申立てを行っていたこと、別件訴訟でX2らが会社を相手方として雇用契約上の権利を有する地位にあることを争っていたことを合わせ考えると、労災に関する団交の申入れの主な目的は会社とX2らとの間の直接的な労働契約の存在や直接雇用に関する団交を行うことにあったものと考えるのが自然であるということができ、会社が労災に関する団交に応じなかったことについては正当な理由があったといわざるを得ない。  
掲載文献   

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