概要情報
事件名 |
ベストライフ
|
事件番号 |
都労委平成22年(不)第60号
|
申立人 |
一般合同労働組合東京西部ユニオン
|
被申立人 |
株式会社ベストライフ
|
命令年月日 |
平成24年8月28日
|
命令区分 |
一部救済
|
重要度 |
|
事件概要 |
平成22年4月26日、被申立人会社の運営する有料老人ホームAにおいて、組合員X2と他の職員との間でトラブルが生じ、結局、警察官を呼ぶ事態となり、会社は同日、X2に自宅待機を命じた。翌月7日、会社はX2に上記4月26日及びそれ以前の同人の言動等を理由とする5月6日付け諭旨退職の処分通知を手交して退職願の提出を求め、同人がその撤回を求めると、同月11日、3日以内に退職願の提出がなかったことを理由として懲戒解雇の処分通知を同人に手交した。
これらの処分に関して、会社と申立人組合との間で同年5月31日以降団交が行われたが、会社は第2回団交において、本件懲戒解雇の事実経緯の説明を拒否し、団交を途中で打ち切った。そして、会社は第3回団交においても、同様に団交を途中で打ち切った。
本件は、会社がX2に対して行った自宅待機及び懲戒解雇の処分が不利益取扱いに当たるか否か、また、これらの処分に関する組合からの団交申入れに対する会社の対応が正当な理由のない団交拒否に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は会社に対し、誠実団交応諾、文書交付及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
|
命令主文 |
1 被申立人株式会社ベストライフは、申立人一般合同労働組合東京西部ユニオンが、被申立人会社に申立人組合の組合員X2に対する自宅待機命令、諭旨退職処分及び懲戒解雇処分に関する団体交渉を申し入れた場合には、誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合に対し、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を交付しなければならない。
記
年 月 日
一般合同労働組合東京西部ユニオン
執行委員長 X1 殿
株式会社ベストライフ
代表取締役 Y1
当社が、貴組合の組合員X2氏に対して行った自宅待機命令、諭旨退職処分及び懲戒解雇処分に関して貴組合から申し入れられた団体交渉を拒否したことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。
|
判断の要旨 |
1 本件処分の不当労働行為性について
平成22年4月26日の経緯における組合員X2の言動については、明らかに同人に非があり、被申立人会社が同人に対し、何らかの懲戒処分を行おうとしたとしてもやむを得ないものといえる。
また、会社はX2の組合加入(18年12月)の前から、同人の言動について、業務上の支障が生じていると認識し、その対応に苦慮していたものであり、組合加入から本件処分までの間に会社と組合とが特に対立的な労使関係にあったとはいえず、この間、会社が同人に処分や指導、始末書の提出を求めたことについてもそれなりの理由があることが認められる。そうした事情と合わせて、22年4月26日のトラブルを巡る一連の経緯によって同人を処分したことも不合理であるとはいえない。
したがって、本件処分がX2の組合加入ないし組合活動を理由とするものであるということは困難である。
2 本件処分に関する団交における会社の対応について
第2回団交において組合が会社の回答に関して質問をしようとしたところ、会社は、組合が当委員会に対し本件救済申立てを行ったことを理由に、審査手続の中でお互いに主張・立証を行うことで足りるとして、本件処分に関する団交を続けるつもりはない旨述べており、相互の主張・質疑応答が尽くされ、団交は平行線であったとは認められず、また、団交を継続することは無益であったとも認められない。
会社は、解雇理由に関する事実関係については、本件救済申立てにおける審査手続の中で事実に関する主張及び立証を行うことにより、説明責任を果たす旨を述べており、争いのある事実関係について司法機関又は準司法機関において主張及び立証を尽くすための防御の利益が会社に与えられるべきことから、上記会社の対応には「正当な理由」が存在するものであり、団交拒否には当たらない旨主張する。
しかし、労働組合が団交において懲戒解雇の処分事由について説明を求めてきた場合、使用者は当該処分の根拠規定・対象となった事実、判断の要素及び決定に至る過程について、十分に納得を得られるよう努力すべきものといえる。そして、このことは、当該処分について並行的に民事訴訟や不当労働行為救済申立てにより争われていたとしても、基本的に変わりはないものであり、誠実に団交を行う義務を免れるわけではないから、会社の主張は採用することができない。
したがって、会社の本件処分に関する団交における対応は、正当な理由のない団交拒否に該当するといわざるを得ない。
|
掲載文献 |
|