概要情報
事件名 |
JUKI
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事件番号 |
都労委平成20年(不)第53号
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申立人 |
全労協全国一般東京労働組合
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被申立人 |
JUKI株式会社
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命令年月日 |
平成24年8月28日
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命令区分 |
全部救済
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重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社の子会社Zに勤務していた組合員X2は、平成20年4月30日、Zの解散を理由に解雇された。申立人組合は、同年5月1日、X2の雇用保障を求めて会社に団交を申し入れた。本件は、会社がこの団交申入れに応じていないことが正当な理由のない団交拒否に当たるか否かが争われた事案である。なお、Zは会社が会社分割により、その家庭製品販売事業を会社の連結子会社に承継させた株式会社で、19年4月1日に設立された。
東京都労委は会社に対し、団交応諾、文書交付及び履行報告を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人JUKI株式会社は、申立人全労協全国一般東京労働組合が平成20年5月1日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、申立人組合に対し、下記内容の文書を交付しなければならない。
記
年 月 日
全労協全国一般東京労働組合
執行委員長 Y1
JUKI株式会社
代表取締役 Y1
当社が、貴組合からの平成20年5月1日付け団体交渉申入れに応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
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判断の要旨 |
被申立人会社は、同社が子会社Zの従業員の労働条件について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定する地位になかったと主張する。
しかし、Zは会社とは別個の経営体として自主的な管理運営をしていたというよりも、会社と人的、物的及び資本的に一体となり、会社が株主としての地位を越えてあたかもZをその設立前後を通じて会社の一事業部門であるかのように全面的に経営上支配していたこと、会社分割自体が使用者としての責任を負うことなく家庭製品事業部の従業員の雇用関係を解消する目的で行われたものとの疑いを払拭できないこと、会社分割後もZの従業員の基本的な労働条件について会社が強い関与ないし統制を行っていたことなどからすると、会社は単なる株主としての地位を越えて、Zの従業員の基本的な労働条件について現実的かつ具体的に支配力を及ぼしていたことが認められる。
そして、申立人組合が平成20年5月1日付けで申し入れた団交の議題はX2の雇用保障問題であるところ、会社は別の子会社に転籍するZの従業員の人選を行い、希望退職者に対する退職金等の支払いについて資金支援を行うなど、Zの解散後の従業員の処遇にかかわる事項について具体的な関与を行っていたことが認められる。
したがって、会社は労組法7条にいう「使用者」に当たり、組合の求めるX2の雇用保障を議題とする団交に応ずべき立場にあるというべきである。
よって、会社が組合からの上記団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団交の拒否に当たる。
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掲載文献 |
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