労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  川崎陸送 
事件番号  京労委平成23年(不)第2号 
申立人  全日本建設交運一般労働組合関西支部 
被申立人  川崎陸送株式会社 
命令年月日  平成24年6月27日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①その所有する事業用貨物自動車の運転者として勤務してきた組合員X2に対し、事故多発を理由とする平成22年10月13日付けの降車、職種変更処分を行ったこと、②京都営業所の社有車部門の廃止に伴い、ⅰ)組合員X3ら3名に対し、23年4月1日に社有車の運転者からフォークリフト運転者への配転を行ったこと、ⅱ)X2ら3名に対し、同年6月20日をもって雇用契約を更新しないこととする雇止めを行ったこと、ⅲ)X3に対しても、同日をもって雇止めを行ったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 京都府労委は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員X2に対する処分について
 申立人組合は、①本件処分は、被申立人会社が平成22年7月の労務担当者の交替を機に、分会で中心的に活動してきたX2に対して厳しく対応するようになる中で賞罰規程の恣意的差別的運用により行ったものであり、これまでに同様の職種変更処分が行われたことはないこと、②会社は、19年に京都営業所の社有車部門をいったん廃止した際に、同部門に存在した組合員を全員解雇する一方で、非組合員は出向させた後、同部門の再開後に復帰させており、労働組合嫌悪の姿勢を有していることなどから、本件処分は不当労働行為意思をもって行われたと主張する。
 しかし、平成19年の部門廃止に際しては、非組合員は廃止前に出向し、再開より前に出向解除されているなど必ずしもこれに伴って意図的に非組合員のみの雇用を継続したとは言い切れない。また、会社が、X2が職場代表世話人(分会役員)であったことを知ったのは本件救済申立てがあった日の翌日になってからにすぎない。いずれにせよ、X2は、社員代表も含む事故処理委員会によって、賞罰規程第14条(事故多発者の処分)の要件に該当すると認定されたこと、その判断に同規程に違反する点があるとは認められないこと、過去に同条が適用された例もあり、同条が全く形骸化していたような事情も認められないことからすれば、本件処分は同規程が正当に適用された結果であるといわざるを得ず、不当労働行為に該当するとは考えられない。
2 組合員X3ら3名の配転について
 組合は、本件配転の原因となった京都営業所社有車部門の廃止は赤字を理由としているが、この赤字は配車センターの操作によって作り出されたものにすぎないから、合理的理由がなく、配転後のX3らの作業場所が業務量及び労働者数の少ない八幡倉庫に指定され、しかも業務指示も行わず、必要なフォークリフトの研修の機会も与えなかったことから、本件配転は組合を会社から排除するために行ったものであると主張する。
 しかし、上記部門の廃止は赤字を理由とするものであるとの会社の主張には合理性が認められないとはいえず、配車センターが利益操作をしていたと認められるだけの証拠もない。加えて、X3らの作業場所についても、会社が一方的に決定したのではなく、団交で決定されたものであるから、これをもって、会社が組合の排除を意図して本件配転を行ったと認めることも困難といわざるを得ない。
3 X2ら3名に対する雇止めについて
 組合は、会社はX2ら3名に対して配転の打診もしないまま雇止めを行う一方で、非組合員は配車係に配転して雇用を確保するなど組合員を排除する意図が明白であるなどと主張する。
 しかし、団交の経過からみれば、組合は配転について、社宅が確保され社有車運転者の賃金が保証されるとの条件を示していたと解され、会社がそのような条件に合った配転先を提示することは困難であったから配転の提示を行っても受け入れられないであろうと考えたとしても無理はなく、会社が他の営業所で行っていた求人にもそのような条件に合うような転勤先はなかったと認められる。これに加え、非組合員についても大幅に賃金が減少する職種変更が行われており、過去の不採算事業所等の廃止において退職者が生じた場合もあったことも考慮すれば、会社が配転の打診を行わなかったこと等をもって、組合を排除しようとの意思を有していたとまで認めることは困難といわざるを得ない。
4 X3の雇止めについて
 組合は、会社がX3に提示した契約社員雇用契約書に記載された労働条件はもともと同人が受け入れられるようなものではなく、会社は同契約書により提示されたフォークリフト運転者の職に必要な講習の受講をさせず、さらに同人の提訴を封じることを意図して合意管轄条項(東京地裁を第一審の専属的合意管轄とする旨の条項)の挿入までしていたのであるから、もともと契約締結の意図はなく排除の意思が明白であると主張する。
 しかし、上記契約書の内容や、X3に講習の受講をさせなかった経過をもって、もともと会社に雇用契約を締結する意図がなかったとまでは認められず、また、合意管轄条項は22年10月頃から雇用契約書に一律に挿入されたことが認められ、これも同人を排除しようとして挿入したものではないことは明らかである。そうすると、X3の雇用契約が更新されなかったことに関しても、会社が組合を排除しようとして行ったものとまでは認められない。  
掲載文献   

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