労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  櫻間工業 
事件番号  平成23年道委(不)第6号 
申立人  桜間工業労働組合 
被申立人  株式会社櫻間工業 
命令年月日  平成24年6月22日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社でクレーンオペレーターとして勤務していた組合員X2は、クレーン作業中の事故に関して会社から何度もてん末書の提出を求められたため、会社に対し、申立人組合を通して対応したいと申し出た。本件は、会社が①その申出の当日からX2をクレーン作業から外し、除雪、資材積込み及び清掃等の業務に従事させ、その後、当該事故の発生原因等について組合と会社との間で団交が継続していたにもかかわらず、同人を解雇したこと、②その後に開催された団交において、上記の解雇については団交で協議すべき事項ではないとしたことなどは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 北海道労委は、会社に対し、1 X2を除雪等の業務に従事させるなどして不利益に取り扱わないこと、2 X2の解雇がなかったものとして取り扱うこと及びバックペイ、3 X2の解雇問題に関する団交を拒否しないこと、4 組合の団交要求を無視してX2を解雇するなどして組合の運営に支配介入しないこと、5 文書の掲示を命じた。  
命令主文  1 被申立人は、申立人組合の組合員X2を相当な理由なく、除雪、資材積込み及び清掃等の業務に従事させるなどして、同人を不利益に取り扱ってはならない。
2 被申立人は、申立人組合の組合員X2の解雇がなかったものとして取り扱い、同人を原職に復帰させるとともに、平成23年2月28日付けの解雇の翌日から原職に復帰する日まで同人が受けるはずであった賃金相当額から既に解雇予告手当として支払った額を差し引いた金員を、同人に支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合の組合員X2の解雇問題について、団体交渉の必要はないなどとして、団体交渉を拒否してはならない。
4 被申立人は、申立人組合の組合員X2の解雇問題につき、組合の団体交渉の要求を無視して同人を解雇するなどして、団体交渉を形骸化し、申立人組合の運営に支配介入してはならない。
5 被申立人は、次の内容の文書を縦1.5メートル、横1メートルの大きさの白紙にかい書で明瞭に記載し、会社事務所の正面玄関の見やすい場所に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
  当社が、貴組合に対して行った次の行為は、北海道労働委員会において、労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為委であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにします。
 1 当社が、貴組合の組合員X2を相当な理由なく、除雪、資材積込み及び清掃等の業務に従事させるなどして、同人を不利益に取り扱ったこと。
 2 当社が、貴組合の組合員X2を、平成23年2月28日付けで解雇したこと。
 3 当社が、貴組合の組合員X2の解雇問題について、団体交渉の必要はないなどとして、団体交渉を拒否したこと。
 4 当社が、貴組合の組合員X2の解雇問題につき、貴組合の団体交渉の要求を無視して同人を解雇するなどして、団体交渉を形骸化し、貴組合の運営に支配介入したこと。
 平成 年 月 日 (掲示する初日を記載すること)

  櫻間工業労働組合
   執行委員長 X2 様
株式会社 櫻間工業
代表取締役 Y1 印
 
判断の要旨  1 組合員X2の業務の変更及び解雇について
 被申立人会社は、本件事故発生についての責任はX2とともに作業をしていた申立外A社の社員にあるとのX2の認識が改善されるのを待っていたが、同人が認識を改めることがなかったため、クレーン作業から外し、除雪等の業務をさせたものであると主張する。
 しかし、X2が組合員であることを会社が知ったのは、同人がてん末書の件についての今後の対応は申立人組合に一任したいと申し出た時点であり、同人はこの日を境にクレーン作業から外されている。この申出は本件事故に対する認識についての回答をしたものではないから、X2の認識に変わりがないとして作業内容を変更する等の処分を行う理由となり得るものではなく、会社が同人の作業内容を変更したのはまさに同人が今後の対応は組合に一任したいと申し出たこと自体が契機になっていると考えざるを得ない。
 また、会社は、本件事故から2か月以上経過したにもかかわらず、X2の意識改善が見られないこと及び組合の要請に応じて事実関係の調査のための時間的猶予を与えていたものの一向に回答がなされなかったことから、本件解雇に至ったと主張する。
 しかし、X2が組合に対応を一任していた以上、同人が直接会社に謝罪等の意思を表明することは考えられず、また、組合が本件事故について調査中であることを認識していながら、その調査結果を検討することなく、同人の意識改善が見られないとして解雇を決定したことに相当な理由があったとはいえない。
 さらに、会社は組合の調査の遅延も問題視するが、組合は期限を1週間ほど過ぎた日に調査報告書を提出しており、調査の遅延は解雇を正当化するほどの重大な非違行為とはいえない。
 以上の事実を総合的に判断すると、X2をクレーン作業から外してから解雇するまでの一連の会社の行為は、同人が組合員であることの故をもってなされた不当労働行為に該当する。
2 団交拒否について
 会社は、会社とX2との間で本件事故の原因に係る事実認識に違いがあり、そのような事実認識に違いがある事柄は協議交渉して解決を図るという性質の問題ではないから、団交にはなじまないと主張する。
 しかし、会社が書面の形で申立外A社から事故報告書を入手したのは本件救済申立後のことであり、しかも同報告書に対するX2の反論は詳細であり、十分に団交での検討に値する内容であることに鑑みると、会社が団交を拒絶した当時、十分な事実確認が既に行われていたとの会社の主張は採用できない。しかも、事故原因について組合が調査中であった経緯を踏まえれば、会社には本件事故原因と解雇との関連性に係る事項についても事実認識に違いがあるとして団交を拒否することは許されず、したがって、本件団交拒否は不当労働行為に該当する。
3 支配介入について
 本件解雇は、組合を軽視ないし無視することにより、継続中の団交を形骸化させるとともに、組合員の組合に対する信頼を失わせる組合運営に対する支配介入であり、不当労働行為に該当する。  
掲載文献   

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