労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本ジャーレル・アッシュ 
事件番号  京都地労委平成9年(不)第11号 
申立人  全国金属機械労働組合京都地方本部全金NJA支部、個人X 
被申立人  日本ジャーレル・アッシュ株式会社
サーモ・ジャーレル・アッシュ・コーポレーション  
命令年月日  平成11年1月20日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   会社が、 ①指名退職勧奨に応じなかっ た組合書記長に対し、 平成9年度年末一時金及び同10年度夏期一時金を支払わず、 同年2月以降の基本給を半額にじたこと、 ②当該組合委員長を別室に呼び出して退職を勧奨したこと、 ③全従業員を集めた会議において、組合と事前協議を行わないまま退職勧奨の計画を説明し、また、その際に当該組合委員長が退職勧奨の対象者であることを公表したこと、 ④組合費のチェックオフを一方的に中止したこと、 ⑤不当労働行為救済申立てを取り下げるよう強要したことなどが争われた事件で、①組合委員長に対する基本給の減額措置を撤回し、同人に対し、基本給を回復するまでの間の差額並びに同9年度年末一時金及び同10.年度夏期一時金の支払、 ②文書掲示を命じその余の申立てを棄却した。  
命令主文  主 文
1 被申立人日本ジャーレル・アッシュ株式会社は、平成10年2月支給分から申立人Xに対して行った月額基本給の減額措置を撤回し、 同人の月額基本給を358,110円に回復するとともに、同人に対し、回復するまでの間の給料月額について基本給を358,110円として計算した額と実際に支給した額との差額の合計並びに平成9年度年末一時金及び平成10年度夏期一時金として、 それぞれ月額基本給358,110円及び住宅手当の2か月分相当額を支払わなければならない。
2 被申立人らは、下記内容の文書を縦1メートル、横1.5メートルの模造紙に楷書で明瞭に墨書し、被申立人日本ジャーレル・アッシュ株式会社内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。

日本ジャーレル・アッシュ株式会社及びサーモ・ジャーレル・アッシュコーーポレーションは、 平成9年9月20日、全国金属機械労働組合京都地方本部全金N J A支部のX委員長だけに対し別室で個別に退職の同意を求めたこと、 全従業員を集めた全体会議において会社を疲弊させたのはXの責任であるなどと同人の言動を非難したこと、 同支部との労働協約に定められた事前協議を行わず同支部の組合員に対して退職勧奨を行ったこと及び同支部に対する組合費のチェック・オフを同支部と協議することなく一方的に中止したこと、平成9年11月1日に全従業員を集めた会議で同支部が京都府地方労働委員会に対して行った不当労働行為救済申立てを取り下げるよう強要したこと、X委員長に対して平成9年度年末一時金及び平成10年度夏期一時金を支給しなかったこと、 平成10年2月支給分から同人の月額基本給を半分に減額したことが、 いずれも、不当労働行為であったことを認め、ここに、陳謝の意を表するとともに、これを機に、健全な労使関係の形成に努めることを誓約します。

年 月 日
全国金属機械労働組合京都地方本部全金N J A支部
委員長 X 様
日本ジャーレル・アッシュ株式会社
代表取締役 Y1
サーモ・ジャーレル・アッシュ・コーポレーション
代表取締役 Y2

3 申立人らのその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 平成10年度夏期一時金の団体交渉の中での発言に、 不穏当な点が認められるとはいえ、このことが直ちに一時金を不支給にするに足る正当な理由とは言えず、 また、 その他の勤務状況について、 公正に評価したことの具体的な立証がないことから、 同一時金の不支結決定が、 合理的な理由に基づいて決定されたものとは認められないとされた例。
2 平成9年度年末一時金の不支給及び同10年2月以降の賃金減額が、仕事の内容、仕事量、協調性等を公正に評価したことの具体的な立証はないことから、合理的な理由に基づいて決定されたものとは認められないとされた例。
3 余剰人員を削減する必要性があったこと、 対象者1 4名には非,組合員も5名含まれていたことから、 当該退職勧奨自体は、 必ずしも組合員を狙い撃ちしたものであるとは言えず、不利益扱いに当たらないとされた例。
4 不当労働行為救済申立ての取下げを求めた会社の言動は、 全従業員を集めた場で公然と行われまた、 その言動自体、 申立てを嫌悪し、 その取下げを強要する内容であると認められることから、会社通念上許容される範囲内の行動であるとは言えず、 組合及び組合活動を嫌悪する意図から行われたものと認められるとされた例。
5 協定書のないまま2 6年間にわたって実施してきたチェックオフを使用者の専権事項であるという理由で中止したことは、 組合との対立が明確な時期に突然なされたものであリ、 会社は何ら合理的な理由を示しておらず、 組合運営の混乱と組織の弱体化を意図した支配介入であるとされ た例。
6 コンサルタントの組合活動に対する見解等についての発言は、会社が行ったことと同一視すべきであリ、 会社は不当労働行為責任を負うべきであるとされた例。
7 会社が今後協約を連守するよう命じることの申立てについては、 会社は労働組合法第1 5条第3項及び第4項に基づき、平成10年3月5日に90日前に解約予告を行っておリ、協約は90 日を経過 した時点で失効 したものと認められ、 また、 組合はその後協約の効力について、 特に争つていないのであるから、 棄却することが相当であるとされた例。
8 結審時において労働基準法第24条第1項ただし書きの規定する当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者による協定が存在 しないから、 チェックオフの中止を撤回するよう命じるのは、 労働委員会の裁量を逸脱するものと考えられ、 救済方法としては、ポスト・ノーディスにとどめるのが相当とされた例。
9 親会社が、 株式を10 0%保有し、経営方針、従業員の労働条件及び人事を決定していること、親会社の社員が、代表取締役として派追されていること、 業務のほとんどが親会社から輸入した機器の販売であること、親会社から約1億90 0 0万円の債務免除を受けていること等から、親会社は子会社の労使関係に対する実質上の影響力ないし 支配力があると認められ、 当事者適格があるとされた例。  
掲載文献   

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