概要情報
事件名 |
千尋庵 |
事件番号 |
都労委平成22年不第2号 |
申立人 |
全統一労働組合 |
被申立人 |
株式会社千尋庵 |
命令年月日 |
平成24年5月15日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社の事務所で勤務していたX2は、就業規則違反を理由に解雇され、申立人組合に加入した。本件は、会社がX2の解雇撤回や今後の雇用問題等に係る団交に応じなかったことは正当な理由のない団交拒否に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は会社に対し、文書交付及び履行報告を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人株式会社千尋庵は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人全統一労働組合に交付しなければならない。
記
平成 年 月 日
全統一労働組合
中央執行委員長 X1 殿
株式会社千尋庵
代表取締役 Y1
当社が、平成21年8月18日付けで貴組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注: 年月日は文書を交付した日を記載すること。)
2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
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判断の要旨 |
1 本件団交申入れに係る会社の対応について
被申立人会社は、組合員X2を既に解雇しており、解決済みの事案であるから、団交に応じる義務はない旨主張する。
しかし、解雇された労働者に関して、社会通念上合理的とされる期間内に、当該労働者の解雇の効力やその条件、清算されていない労働条件等について労働組合が団交を申し入れた場合には、当該労働組合は労組法7条2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に当たると解されるところ、申立人組合の団交申入れは社会通念上合理的とされる期間を逸脱したものとはいえず、解雇等の効力や清算されていない労働条件について団交を申し入れているのであるから、会社が団交に応じなかったことに正当な理由があるとはいえない。
会社はまた、団交を拒否するとは明言していない旨主張する。しかし、申立人組合が会社に送付した要求書には団交開催を求める旨の記載があり、会社はこれを受領後、回答書により、本件は解決済みの事案であるとして要求事項に答えることはできない旨回答しているのであるから、団交開催要求を拒否すると明言したに等しいものと評価せざるを得ない。
2 X2との関係は請負であるとの会社の主張について
会社は、本件申立て後に行われた団交において、X2との関係は請負関係であったと主張したので、念のため検討すると、以下のとおりである。
会社が本件申立て以前において、X2及び組合に対し、請負関係を主張したことを示す事実は認められない。会社はX2を解雇する際、まず退職を勧奨し、最終的には就業規則に基づき解雇していることから、会社が同人を従業員として扱ってきたことは明らかである。会社は、X2の報酬について毎月固定額を給与として振り込み、源泉徴収票を発行していたことから、当該報酬は労務提供に対する対価であったとみるのが自然である。会社はX2からの求めにより在籍証明書を発行したことがある。会社は、全国で毎月のように開催される展示会に関し、X2に対し、出張の場所、時間及び業務内容などを具体的に指示しており、展示会の準備段階から同人の就業全体に対して会社の指揮監督が及んでいたといってよい。以上のことからすれば、X2は会社に雇用されていた労組法上の労働者に当たる。
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掲載文献 |
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