労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第63号 
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第63号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y市 
命令年月日  平成24年5月22日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人市が①市営バス事業においてバス乗務員として勤務していた申立人組合の分会書記長Dが人身事故を起こした後、同人を乗車勤務から外し、下車勤務を命じたこと及びその間の雇用契約を1か月ごととしたこと、②Dに対し、失職のおそれがある旨記載した通知書を手交したこと、③団交時間を制限したり、市議会開会中を理由に団交開催を引き延ばしたり、団交における録音等及び資料の提供を拒否したりしたこと、④組合事務所の貸与や組合活動に対する職務専念義務の免除を認めなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 申立人組合の分会書記長Dを乗車勤務から外したこと等について
 Dは、平成22年3月、市バス運行乗務中に2回の人身事故を起こし、その際、警察官から免停を受ける可能性があるといわれた旨を被申立人市のA営業所長に報告した。Dに対する行政処分がどうなるかが不明確であり、免停になる可能性が高いと市が判断しても不自然でない中で、過去に例のない1週間に2回の人身事故を起こしたDに対して市が下車勤務を命じたり、雇用契約を1か月ごとのものにしたことは不合理な判断とみることはできない。また、市がこの時期に組合及びDの組合活動を嫌悪していたことを示すような事実の疎明はない。
 以上のことからすると、市がDに下車勤務を命じたこと等を同人が組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入行為とみることはできない。
 さらに、市がDに対し、職を失うおそれがある旨通知したことについては、市の非常勤職員就業要綱25条2号に、免停等を受ければ職を失う旨が記載してあることからすれば、その可能性について市が事前通知することは不合理とはいえず、したがって組合に対する支配介入に当たるとはいえない。
2 団交における市の対応について
(1)団交時間の1時間制限
 そもそも交渉時間は事前折衝において組合と市が同意した上で決定されていたといえるところ、組合は、時間を制限されても受けざるを得ない状態であった旨主張するが、市が交渉時間について自らの主張に固執し、組合に対し譲歩の余地がない態度をとったような事実は認められない。また、交渉の実態についてみると、市が組合の反対を押し切って議論を打ち切ったような事実は認められない。
 以上のとおりであるから、時間制限に関して不誠実団交に当たる行為があったとまでみることはできない。
(2)市議会開会中の団交日程の設定
 市が市議会開会中であることのみをもって直ちに団交に応じない理由としたことに配慮を欠く面はあるものの、その団交申入書に記載された要求事項についての協議が市の業務に対する支障を甘受してまでなお団交を開催する緊急性を有するものであったとはいえず、かえって市議会開会中以外の時期に団交期日を設定することは交渉担当者の出席を確保し、交渉をスムーズに進めるために有益であるともいえ、市の対応は不誠実団交には当たらない。
(3)団交における録音及び議事録作成拒否
 団交内容を録音したり、議事録を作成したりするかといった団交ルールについて、労使間に慣行や取決めが存在せず、労使双方が提示した条件が一致しない場合には、双方が誠意をもって協議を行い、合意点を見出すべく努力をすべきであるが、本件においては、団交ルールとしても労使慣行としても存在していたと認めることはできず、第9回団交で市が録音及び議事録作成を拒否したことをもって、不誠実団交に当たるということはできない。
(4)資料の提供
 市は組合に対し、要求された資料に関し、提供するか、あるいはそれができない理由を説明しており、それぞれの説明や資料提供の時期もことさらに遅延したものとは認められず、その後、本件申立てに至るまでの間、組合がそれぞれの説明や提供された資料に異議を唱えたことも認められないことから、市は組合の要求に応えていたと判断でき、その対応が不誠実ということはできない。
3 組合事務所の貸与等を認めなかったことについて
 組合と別組合との間には、その規模と歴史において明確な差があり、さらに、組合事務所として貸与可能なスペースの存在が明らかでない以上、市が別組合には組合事務所を貸与しながら、組合に対しては拒否したことには合理的な理由があるといえ、組合間の差別に当たるとの組合の主張は採用できない。
 市と別組合等との間では協定書が締結され、職務専念義務の免除を受けて勤務時間中に行うことのできる組合活動の内容等が定められているが、これは市の職務専念義務免除に関する条例及び要綱が適用される一般職の職員を対象としたものである。したがって、市が特別職の職員である組合の組合員に別組合と同様の職務専念義務免除を認めなかったことは、適用される条例及び要綱の差によるものと考えられ、また、市は団交でこのことを説明しているのであるから、別組合との間の差別的取扱いであるとは認められない。  
掲載文献   

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