労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成23年(不)第7号 
事件番号  大阪府労委平成23年(不)第7号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成24年4月10日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人法人で雇用期間1年の常勤講師として勤務していたCは、2回の契約更新の後、専任教諭として採用されることなく、雇止めとする旨法人から告げられた。申立人組合は法人に対し、Cの組合加入を通知するとともに、同人の雇止めを撤回し採用時の約束に従って専任教諭に昇格させること等を求めて団交を申し入れた。
 本件は、法人が①組合との間で締結した、Cの専任教諭への昇格について継続して協議するとの労働協約を反故にし、採用時の約束に反して当該昇格を拒否していること、②当該昇格を議題とする団交において、理事長の出席や資料の開示を拒否するなど誠実に対応しなかったことは不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人法人が平成23年度に組合員Cを専任教諭としなかったことについて
(1)採用時の約束の有無
 法人がCの当初の採用時に、同人に対し、同人を専任教諭とすることを約束したとまで認めるに足る事実の疎明はないから、これについての組合の主張は採用できない。
(2)法人がCを専任教諭に昇格させない理由
 申立人組合は、法人はCの専任教諭への昇格を総合的判断という恣意的な理由により拒否しており、このことは同人が組合員であるが故の不利益取扱いとしか考えられない旨主張する。しかし、法人は教員組織の基幹を構成するにふさわしいと認められる者を、法人の採用枠や財務状況等を勘案の上、総合的判断により採用していることが認められ、採用基準等が明文化されているわけではないものの、総合的判断によって採否を決定すること自体には問題がないといえる。
 次に、Cの組合加入前後における法人の同人に対する評価の差異についてみると、法人は、同人が初めて採用された平成18年度から20年度にかけて、専任教諭の資質としての情熱や積極性が同人に感じられないと評価しており、かかる評価は20年11月5日に同人の雇止めが告げられた時点で既に受けていたのであって、同人の組合加入の前後を通じて大きく変わってはいない。したがって、この点について、法人の不当労働行為意思を認めることはできない。
(3)非組合員の専任教諭への採用
 組合は、法人はCを専任教諭としない一方で、多数の非組合員を専任教諭としており、組合員差別である旨主張する。しかし、常勤講師の専任教諭への採用状況等について、組合員と非組合員との間に、法人が組合員に対する差別を行ったと認められるほどの不自然な格差は認められない。
(4)クラス担任、校務分掌等の割当て
 組合はCのみがクラス担任業務及び校務分掌を外されたことから、不当労働行為意思が推認される旨主張する。しかし、21年度及び22年度において常勤講師の半数以上がクラス担任を受け持っておらず、また、クラブの顧問や校務分掌についてもひとりCのみが外されていたとみることはできない。
(5)結論
 以上のことからすると、法人がCを平成23年度に専任教諭として採用しなかったことが、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるとはいえない。また、不利益取扱いに当たるといえないことから、かかる対応が組合員を軽視し、その弱体化を意図したものであると認めることはできない。
2 団交における法人の対応について
(1)Cを専任教諭とすることという組合の要求事項に対する法人の回答
 組合は、法人が総合的判断であると繰り返すのみであり、その判断の元となる諸要素を提示するよう組合が求めても応じることなく、組合を説得するような説明や資料の提示もなかったことが不誠実団交に当たる旨主張する。しかし、法人は2回の団交において一定の回答をしているとみることができ、また、専任教諭を採用するに当たっての具体的な基準を設定したり提示したりすることができない旨回答したことをもって法人の対応が不誠実であるということはできないのであるから、組合の主張は採用できない。
(2)理事長の出席に係る要求への対応
 組合は、団交において法人側から、Cを専任教諭にすることができない理由は理事長にしか分からない旨の発言があったことに対し、理事長しか持っていない情報の開示又は理事長の出席を要求したにもかかわらず、それらが行われなかったことが不誠実団交に当たる旨主張する。しかし、法人が理事長にしか分からない旨の発言をしたと認めるに足る疎明はない。また、団交にはCを専任教諭とするか否かについて権限を持っている法人の高等科校長Dが出席しており、前記(1)のとおり、その回答が不誠実とまでいえないことから、団交に理事長が出席しないことをもって法人の態度が不誠実であるということはできない。さらに、法人は、23年度において専任教諭を採用しない旨の理事長からの通達が来ている旨回答しているのであるから、理事長の意向についても既に一定の回答をしているとみることができる。
(3)結論
 以上のとおりであるから、上記の組合の申入れに対する法人の対応が不誠実であるとはいえず、したがって、労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとはいえない。なお、組合は、法人の対応はCの昇格について引き続き協議する旨定めた労働協約に反する行為であると主張するが、当該法人の対応は前記のとおり不誠実であるとは認められない上、組合を軽視したり、組合員の組合への信頼を減じさせるものであるともいえず、その他、組合に対する支配介入に当たると認めるに足る疎明もないから、同条3号に該当する不当労働行為であると認めることはできない。  
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